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映画感想

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わたしのみた映画たち
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2019年8月の記事一覧

「天然コケコッコー」:ピュアとはこのことだ

田舎の中学生のほんわか恋ものがたり。 夏帆がデビューしたぐらいの頃からずっと好きだったわたしは、ずっと天然コケコッコーを見ようと思いつつ、見ていなかった。やっとのことで見た映画で、夏帆は本当に漫画のヒロインそのもののような可愛さだった。岡田将生くんもかっこいいし、キャストの顔ぶれだけでも甘酸っぱいのでは、と思う。 いちばんキュンとしたのは、修学旅行で夏帆が東京の音に耳を立て、「(東京のことを)少し好きになれそう」と、うれしそうに岡田将生くんの手を繋ぐところ。意気揚々とした

「VICE」:事実は小説より凶悪なり

ウィット溢れるコメディーでありながら、とてつもなく恐ろしい。そんな映画だった。 ジョージ・W・ブッシュ政権時代の副大統領ディック・チェイニーの人生を追いながら、9.11同時多発テロやイラク戦争の裏側を描く。 権力者の思うがままに、権力を乱用する仕組みをつくれてしまう実態を浮き彫りにしていた。 政府、シンクタンク、広告代理店、TV局……彼らが総力をあげて情報操作すればどんなことでもうまくごまかせてしまうし、国民を自由に操れることがよく分かる。 情報密度は濃く、その演出も

「聲の形」:生きることを手伝って欲しい

めまぐるしく感情を揺さぶられる映画だった。 学校生活における人間関係構築があまり得意ではなかったし、反省も多々ある私にとって、心が重くなり、イライラするところもあった。ただ、登場人物それぞれのいろんな意見があって、考えさせられる作品だった。 最後に、将也が硝子に言うセリフがすごい。「生きることを手伝って欲しい」って、うまく言葉にできないけど、すごい言葉だ。 この作品は、小学校の授業で使ってみてほしい。自分の考え方や対人関係について、客観的に考えさせられるとてもよい題材に

「新聞記者」:穿った見方が求められている

観るひとの心にモヤモヤを残す、絶妙なラストシーンだった。 映画「新聞記者」は、国家権力による情報コントロールをひとつのテーマとして描いた作品だ。 32歳の若き監督は、政治や社会情勢に関心が高いわけでもなく、プロデューサーからのオファーを一度は断ったという。そんな藤井監督が、東京新聞の望月衣塑子記者の著書『新聞記者』を原案に、官僚側の視点も盛り込んで脚本をつくりなおしたそうだ。 現実世界の政治ネタを盛り込みつつ、ノンフィクションではなくて、あくまでも、エンターテイメントと

「風をつかまえた少年」:学びが人びとの生活を変える

「ぜんぶが失敗じゃない。ぼくを学校に行かせてくれた」 俺は失敗してばかりだと嘆く父親に向かって、少年ウィリアムはまっすぐな目でこう言う。 学費が支払えず学校を辞めざるをえなかったウィリアムだが、学校の図書館で風力発電のしくみを学び、風車をつくることを思いつく。そうして井戸から水を汲み出すポンプを動かすことで干ばつから村を救う。そんな実話にもとづく映画だ。 冒頭のウィリアムのことばのとおり、本が、教育が、人びとの生活に大きな変化をもたらしていくことを実感できるはなしだった

「天気の子」:一人ひとり、それぞれの見ている世界がある(ネタバレあり)

病院の窓から外をみると、夕立のなか、一棟のビルの屋上だけ光が差していた――。 そんな神秘的なシーンからはじまる「天気の子」。雨がふり続ける“異常気象”の東京を舞台に、祈ることで晴れた空を呼び寄せる女の子(陽菜)と、地方から東京に出てきた少年(帆高)が、自分たちの幸せとはなにかを考える、愛のものがたりだ。 (新海誠監督はラブロマンスじゃなくて、擬似家族をイメージしていたと言っているけれど、私からすると愛のものがたりだった。) 印象に残ったのは、みんなが晴れた東京の空を見上