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BATHROOM17 心があってよかった

こんにちは、タメカワハウス家主の爲川裕也です。

どうでもいいお話です。

先日、散歩をしていたら店構えがなんともすてきな喫茶店に吸い込まれた。
木と煉瓦がうまく調和したお店に入ると、そこには白髪の店主、店主のお友達と思われる外国人のお年を召した紳士お客さま。
店内は、本、小説、レコード、オーディオ機器、珈琲豆、新聞の切れ端、観葉植物が雑多に置かれ、狭い店内をより狭くしているが、統一されたセンスでまとまった物たちはお店全体をうまく彩っている。
お店に音楽は流れておらず、無音。

こんにちはと挨拶をして中に入っていくと、
店主が席を案内してくれた、「ここかそこかそこ、どこでもどうぞ」
店主と先客の外国人の紳士がお話していたので、邪魔にならない席に腰をかけると店主が話しかけてくれた。

「ここにはこれを見て来てくれたんですか」
店主は両手で小さい四角を表している。
スマホを現したいのだろうと察したワタシは、
「いえ、散歩してたらとてもいい雰囲気だったので入っちゃいました」と答えた。

店主は
「それは嬉しいことです、それがやっぱり嬉しいです。最近はよくこれ(スマホ)で見て、訪ねてくれるんですが、そういう人とぼくは大体波長が合わないんです」
そう言ってメニューを置くと、外国人のお客さまの方に戻っていった。

メニューを見ると、軽食の類はなく、珈琲のみ。
珈琲に集中してもらうため、軽食はお出ししていませんと注意書きがあった。
店主を呼び、一番苦みがあるブレンド珈琲を注文した。
程なくして提供された珈琲を飲むと、苦みはありながら角はなくまろやかな優しい味わいで店主のようだな、なんて思った。

珈琲をいただいている間、
狭い店内に音楽は流れていないため、店主と外国人紳士との会話が聞こうとしなくても耳に入る。
「ドイツにも一流、二流、三流っていうのはありますか?」
「ありますよ」
「そうですか、見た目は一見一緒のように見えても、どうしても一流、二流は全然違いますね。このコップを見てください、これを作ってる人は実際にコップを使う時のことを考えて作ってます。大量生産のこちらとはまるで違います。同じ感じでも全然違う。心がある。そういえば感という漢字には心が入ってますよね。本当によくできていますねえ」云々
全て書ききれないが、自分はどうだろうと考えたり、ためになる話が聞こえてきた。

お年を召したお二方の話に耳を傾けながら、ゆったりとした時間を味わった。
珈琲と時間を堪能したあと、
お会計をしてもらっているときに、店主は言った。
「どうでしたか」
「とてもいい時間を過ごせました」
「それはよかった、音楽がなかったでしょう。これだけオーディオのスピーカーとか、レコードを集めたんですけど、お客さんに言われたんですよね。珈琲飲んでる時にチャイコフスキーが流れていたら、珈琲から流れる音楽に集中できないって、それ聞いて感動して、全部いらなくなりました」
確かに無音だったからこそ、
店主とドイツ人紳士のためになる話が耳に入ってきたり、
珈琲の味と店主の人柄を重ね合わせられたりした、のかもしれない。
これが今回僕が聞けた珈琲の音楽だった、ことにしよう。

好きで集めたコレクションを全く使わなくなった店主の素直さにも惹かれた。
余談だが、音に集中できない話をしていた時に
「それワタシじゃないですよ」
と小さく呟いていたドイツ人紳士もかわいかった。

店を出る時に
「心があってよかったですねぇ」
「はい、よかったです」
「この珈琲を選択したからこの時間があったんですよ」
「また寄らせてもらいます、ありがとうございました」
470円以上に価値のある時間を提供してもらって店を出ました。
一流の空間に足を踏み入れたのでした。

普段、目の前にやるべきことがあって、
それをどんどんクリアしていくことが大好きな性分なワタシです。
(※四柱推命でも「死」の運気の人はそうらしい)
でも珈琲を飲むという、1つの事から多くのことを学べた時間を過ごせたのは、心があったからでした。

現代は情報も何もかもスピードは早いです。
心亡くす。「忙」しいもほどほどに。

という自戒を込めた
どうでもいいけど、
ワタシにとってはどうでもよくない話でした。




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