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たぶんショートショート「過去の君へ」

眠りから覚めると、ある部屋にいた。
部屋の中央に黒電話がぽつんとあるだけで、他には何もない。
大きく黒い扉が1つだけあるが鍵がかかっていて開かない。
その黒い扉は無理矢理こじ開けようと考えることすらさせない風体で、どうこうできるものではなさそうだった。

すると、突然黒電話が鳴り出した。
受話器を取るか迷った。
だが、現状を打開する糸口が今のところ、このかかってきた電話しかなかった。
しぶしぶ受話器を取った。
「もしもし・・・」
相手の出方をうかがいながら反応した。
すると相手は
「本当は電話に出たくなかったけど、現状を打開する何かが何もなくて仕方なく電話に出たね」
私は驚いた。図星も図星だったからだ。
「私は1年後の君だ」
1年後の私・・・。この人は何をいっているんだ。
私が沈黙していると相手は続けた。
「今私が君の心の内を言い当てることができたのは、1年前に同じ経験をしているからだ。これだけ言えば物分かりの良い私なら理解できるはず」
私は答えた。
「1年後の私がここから助けてくれるのか?」
1年後の私が答えた。
「物分かりの良い私なら、1年後の同じ電話から君に電話していることだけ伝えれば理解できるはずだ」
私は答えた。
「駄目じゃん!!!」
1年後の私が答えた。
「やっぱり物分かりが良い」

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