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ガールズバンドクライ すばるの嘘と本音


嘘つき

1.すばるの葛藤

今回はすばるについての考察記事になります。
第11話の感想記事を書き終えてから読み返してみて、すばるのところで何かが足りないというか、引っかかるところがあって、すばるの言動を2話からすべて見直して考察し直しました。
引っかかっていたのは、11話で嘘つきTシャツを見ながら、「私は嘘つきじゃない」としゃがみ込んだところ。
もう一つは、「空白とカタルシス」のライブシーン。
2A~2Bメロでメンバーの過去のトラウマが描かれていますが、すばるのところでは、祖母天童の出世作となった映画「すばる」をじっと見つめています。そして「ウソの哀しさも」の文字が書かれています。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ第11話

「嘘つきじゃない」としゃがみ込んだ時、すばるの様子はなんだか苦しそうで、思い悩んでいる感じでした。
「嘘つきじゃない」とはどういうことなのか?

すばるは役者を目指すつもりはない。またバンド活動がバレると、自分を役者にしたい祖母に潰されるから秘密にしている・・・この2点が、すばるがついている嘘だという認識でした。
しかし、祖母に本当のことが言えなかったのは、潰されると思っているのもありますが、祖母の笑顔を奪いたくないという、すばるの優しさでもありました。
ただ、この嘘が11話のしゃがみ込んだシーンのように、あそこまですばるを苦しめ、思い悩んでいるのかと言うと、何だか違和感を覚えます。

そこで、3話と4話を見返して、すばるについてまとめると…

・祖母に女優の安和天童がいる
・祖母は大変厳しい人
・祖母はすばるを役者にしたい
・役者の学校を勧めたのも祖母
・すばるは役者を目指すつもりはない
・バンド活動がバレると祖母に潰される
・祖母の七光りで特別扱いは嫌
・芝居は好きじゃない、恥ずかしい
・すばるが役者を目指すと言うと、祖母は作り笑いではなく本心からの笑顔を見せる
・4話の時が初めての共演で、祖母の夢だった
・すばるが祖母の仕事を好きと言った時は、祖母は嬉しかった
・祖母の仕事が好きだ、やってみたいと言った時、すばるは笑っていた

こうして箇条書きにしてまとめると、今まで気付けなかったすばるの嘘と本音が、なんとなく見えた気がしました。
ただこれは、ハッキリとした根拠がある訳でもなく、すばると祖母天童の言動から、おそらくこうではないかという私の妄想です。


2.作り笑顔と本当の笑顔

箇条書きは主に3話と4話の、すばると祖母の言動からまとめたものです。
この中で重要なのは、作った笑顔と本当の笑顔じゃないかと思うのです。
これを聞くと、4話で仁菜を自宅に招き、祖母の映画を見せ事情を説明したシーンを思い浮かべるのではないでしょうか。

すばる
「ただね、私が目指してるって言うと笑うんだよね。その時だけ本当に笑うんだよね。作った笑顔じゃなくて…

ここで注目して欲しいのは、祖母天童のセリフです。
4話、石神井公園でドラマ撮影の休憩時に、天童が仁菜たちに話した内容です。

安和天童
「だから嬉しかったなぁ、すばるが私の仕事を好きって言ってくれた時は…。あの子だけは笑ってくれたの。私の仕事、あの子だけが好きだって。やってみたいって。感謝してる

天童がすばるだけが笑ってくれた、役者の仕事が好きだって、やってみたいと言ってましたが、それは何時のことなんでしょうか?
この時の天童の表情は、なんだか昔を思い出してるかのようです。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ第4話

ここから一つの仮説を立ててみました。
すばるが祖母の仕事を好きだ、やってみたいと笑って言ったのは、おそらく小さい子供の頃。そして本気で役者を目指していたという仮説です。

すばるが、祖母の作り笑顔と本当の笑顔を気にしていることからも、実は祖母のことが大好きなのは想像が付きます。
一方、祖母が「あの子だけは笑ってくれたの。私の仕事、あの子だけが好きだって。やってみたいって。感謝してる」と言っていましたが、「感謝してる」とは、すばるの何に対して言っているのか?

1つは、すばるがある程度大きくなってから、祖母のために嘘でも役者の仕事が好きだ、やってみたいと言ってくれたことでしょうか。
もう1つは、すばるが小さい頃に、祖母の仕事が好きだ、私も女優になりたいと言ってくれた。しかし中々芽が出ず、それでも今まで自分の夢に付き合ってくれたことでしょうか。

これについては、どちらでも意味は通じるでしょうが、個人的には2つの理由から後者ではないかと思います。
1つは先にも述べた、11話でのすばるの苦悩する場面。祖母のために付いた嘘ならば、あのような苦悩の仕方はしないだろうと思ったからです。
もう1つは、第9話の仁菜、すばる、ルパの3人での会話。
第9話の感想記事にも書きましたが、ルパが昔のメンバーも「プロを目指すとは言ってた」と言ったことに対し、

すばる
「言うだけはみんな言うからね。努力なんてしてませんとか、上手くいった人がみんな言うでしょ。でも…本当にそうなら、誰でもなれる」

この時のすばるは、複雑で意味深な表情をしていました。
そこから安和天童の孫というだけでチヤホヤされる、自分への皮肉と捉えたのですが、すばるが実は小さい頃から本気で女優を目指していたとなると、見方が全然変わってきます。
努力してもなれるのはほんの一握りなのがプロ。すばる自身が嫌と言うほど経験してきたのなら、11話の苦悩する場面も納得が行くし、このセリフを言った時のすばるの意味深な表情も説得力があります。


ここからは筆者の仮説を前提に話を進めます。
小さい頃テレビで「探偵おばば」など祖母の活躍を見て、すばるは自分も将来、女優になりたいと思った。自分の娘には俳優業を嫌われていた祖母天童にとって、孫が自分と同じ道を目指してくれたことは、とても嬉しかったでしょう。
そして天童に、祖母の仕事が好きだ、役者をやってみたいと言った時のすばるは、本心から笑っていたのでしょう。

ところが子役時代のすばるに仕事はほとんど来なかった。
4話の時が初共演だと、すばると同じ作品に出るのがずっと夢だったと言っていたので、やはり小さい頃に女優を目指したが、中々芽が出なかったんだと思います。

ではすばるがなぜ、自分には役者の才能がない、向いてないと思うようになったのか?
もちろんオーディションに合格できない、周りとの比較もあるでしょうが、一番の理由は、スタッフの本音を偶然聞いてしまったからじゃないかと想像します。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ第11話

11話の祖母からのメールには、見切れて全てを読むことはできませんが、「夏のお芝居もとても評判がよろしくて、スタッフ・・・とのことでした」という文面があります。
夏のお芝居とは、4話の撮影のことを言っているんでしょう。
ですが、4話の撮影は安和天童が主役のドラマです。しかも「探偵おばば Part6」と言っていたので、長期シリーズ化している人気作品であると推測できます。
祖母天童も、あの年齢まで役者として生き残っているだけでなく、主役を演じているのだから、世間一般的には大女優と言ってもいいくらいだと思います。
そんな主演女優の孫の演技について、スタッフが悪く言えるはずもありません。

おそらく子役時代に、似たようなことがあったのではないでしょうか。祖母天童の前では褒めちぎってたスタッフが、陰では自分の演技について、悪口を言っていたのを偶然目撃したとか。
自分に役者の才能がないことを思い知って、表面上はともかく内面は荒れたんじゃないでしょうか。それがささやかな抵抗と言っていた、中学時代のバンド活動ではないかと思うのです。
また二枚舌と言うべき、大人の表の顔と裏の顔を見てしまったことが、すばるのあの観察眼と分析力を磨き上げたのかもしれません。


すばるは、自分が役者を目指してると言うと、祖母は作り笑顔でなく心から笑うと言っていました。
祖母は、すばるが祖母の仕事が好きだ、私も女優になりたいと、あの子だけが笑ってくれたと言っていました。
どちらも相手に心から笑っていて欲しいと、お互いを思いやっていることが伺えます。
だからすばるが、演技のことで伸び悩んでいることは察していただろうし、おそらく演技の学校も、すばるのためを思って勧めたんだと思います。

今まで述べたような想像をしたのも、トゲトゲの5人の中で、すばるだけが重い過去を背負っておらず、金銭的にも裕福で恵まれており、仁菜がプロを目指すと言い出した時も、「私はみんなに合わせるよ」と言って、他のメンバーと比べても覚悟が足りない印象でした。
ですが「空白とカタルシス」の2A~2Bメロの映像を見る限り、すばるも心に傷を抱えていたことが分かり、すばるについて勘違いしていたと思ったんですね。
だから初登場の2話から、すばるの言動をすべて見直し、特に3話と4話は何度も見返しました。


3.焦燥と嫉妬

フェス当日、トゲナシトゲアリの出番は夕方からと言っていましたが、映像を見る限り、夕方からのトップバッターがダイダス、トゲトゲはその後、サウンドチェック、出番だったので、19:00くらいの開演でしょうか。
会場入りした時には、入場列ができていたのと、「これからが本番って時間だからね」と言っていたので、開場してからオープニングアクトの開演までの時間帯と思われます。
現実のBAYCAMPと照らし合わせると、11:00~12:00に会場入りし、16:00~17:00くらいには戻ってきたと考えると、およそ4~5時間くらい、すばるは単独行動をしていたことになります。

その間、何をしていたかは、大方の予想通り、祖母に会っていたのが濃厚だと私も思います。
一旦フェス会場を抜け出し、品川に戻り祖母と合流。そこでバンド活動のことを話したんだと思います。
楽屋のテント内での仁菜との会話のシーンで、

すばる「昨日、お祖母ちゃんにメールした」
仁菜 「なにを?」
すばる「役者じゃなくて、他にやりたいものがあるって伝えたの」
仁菜 「本当?」
すばる「だからさ、ずっと続けようよ、このバンド。もし今日がダメでも…」

©東映アニメーション ガールズバンドクライ第11話

すばるがメールでどこまで伝えたのか、バンドのことまで伝えたのかは分かりませんが、祖母と合流した際にすべてを話し、ステージを見てほしいとチケットを渡したんでしょう。
祖母の人柄的に、すばるから話を聞いて即了承するとは思えないし、すばるも祖母には舞台に立つ姿を見せないと納得してもらえないと思ってそうですし、フェスライブの時点では解消してなかったはずなんです。
それは自宅や楽屋のテントで小声でつぶやいた、次の一言からも伺い知れます。

すばる
「一人だけスッキリした顔しやがって…」
「一人スッキリしやがって…」

問題を解消して、どんどん前に進む仁菜に焦りと、もしかしたら嫉妬心を抱いたのかもしれません。
それは「一人スッキリしやがって」とつぶやいた後の、すばるのセリフから伺えます。

すばる
「昔さ、初めてフェスに行った時、出てたバンドのドラムの人が言ってたんだよね。メンバー全員の背中見て頑張ってますって…。
それ聞いて、ああ、私だって思ったんだよ。私ってそういうポジションだって」

このセリフの「昔さ、初めてフェスに行った時、出てたバンドのドラムの人が言ってたんだよね」の部分は、すばるが付いた嘘で、「メンバー全員の背中見て頑張ってますって…。それ聞いて、ああ、私だって思ったんだよ。私ってそういうポジションだって」の部分は、現在のすばるの立ち位置や状況を言っていると思われます。

トゲトゲ5人の中で、仁菜とすばるは素人同然です。
桃花は元ダイダスのギターボーカルにして元プロ。
智は子供の頃からピアノコンクールで受賞を連発。空白とカタルシスでは、全日本学生部門で金賞を獲った賞状を燃やしていたので、演奏技術や知識なら5人の中で最も高いガチレベルの人。
ルパは公式プロフィールにも天才肌とあり、智の高い要求に応えられるくらいには高い演奏力を持っている。

ただ仁菜は未経験のド素人であったが、ボーカルとしての才能を、輝きを発揮し始めた。
音楽的な才能という点では、すばるは5人の中で、凡人という立ち位置なんだと思います。
演技の才能も認められず、音楽でも凡才では、「なんで?」と嫉妬にも似た感情を抱いても不思議ではありません。
その上メンバー全員が、それぞれ過去を乗り越えて前を向いて進み始めたのに、すばるだけが立ち止まったままでした。

焦りと嫉妬で感情はぐちゃぐちゃだったはずです。そもそも演技の才能さえあれば、真っ直ぐに役者への道を進むことができたはずなのに…と、自身を呪いながら吐いたセリフこそ、「私は嘘つきじゃない」としゃがみ込んだシーンだと思うのです。
それを誰にも見せず、一人で乗り越え、自分の立ち位置について、あのように言えるすばるは強い子だと思いました。


4.嘘と本音

すばる「だからさ、ずっと続けようよ、このバンド。もし今日がダメでも…」

今回の考察を元にこのセリフを聞くと、いろんな意味が込められてそうで切ないです。
音楽の才能面では、一人凡才と自覚しているすばる。だから自分を置いて行かないで欲しいとも聞こえます。
また同じメンバーでずっと続けると言えば、旧ダイダスを思い出します。外で話を聞いていた桃香との対比もあって、一度は挫折を味わった桃香と、メンバーとの才能の差に苦しんだすばるが重なって見えました。
あと「もし今日がダメでも…」って、12話を見た後では複雑ですよね。

智  「なんで歌うのかって?」
ルパ 「誰かと繋がっていられるからでしょうか」
すばる「自分が正直でいられる場所だからかな」
桃花 「何もかも忘れて自由になれるから」
仁菜 「私は…間違ってないって思いたいから」

11話のAパートの最後に、各メンバーが質問に答える形で、音楽をやる理由を述べていました。
すばるの「自分が正直でいられる場所」というのは、アクターズスクールのすばるのキャラが強すぎたため、仁菜たちの前だと素の自分でいられるからだと思ったんですが、今回、すばるの考察をしていった結果、周りが自分に対して嘘を付かないからなんじゃないかと思うようになりました。

すばる
「ニーナはさ、視野は狭いし、正論ばかりで融通は利かないし、そのくせ人見知りで愛想も良くないし…そりゃいじめにも遭うわ。でも嘘は付かないんだよね。それにすべてに全力で、それはなんか安心できるし、付き合ってみるかって気持ちになる」

この作品において、嘘と言えば井芹仁菜と言っていいほど、仁菜は嘘を付かれることが嫌いな人ですが、実はすばるも嘘を付かれるのに敏感なんだと思います。
それは役者を目指していた頃、周りの人間が祖母に気を使って演技を褒めてくれる、嘘を付かれ続けてきたからです。
周りの嘘に傷ついてきたすばるにとって、嘘を付かない仁菜の存在は、一緒にいて安心できるし心地良かったんでしょう。
3話のモスで言い争いをした後、急激に仲が良くなったのも、自分と似た部分や共通項がある仁菜に、親近感を抱いたからなのかもしれません。

2人とも嘘が嫌いのはずなのに、
すばる「嘘だけど」
仁菜 「嘘つき」
と言って指切りをするのが、めちゃくちゃエモかった。

©東映アニメーション ガールズバンドクライ第11話


筆者よりお知らせ

12話は、プロとしての活動をスタートさせたトゲトゲでしたが、曲作りで難航する様子も、そこまでやっても再生されないのもあるあるだなぁと思いつつ、最後に現実を突き付けてそこまで落とすんだと胃が痛かったです。
対バンに関しては負け確は動かないとして、最終話のあと1話で、対バン、仁菜ヒナ問題、智の母親が11話に出てたけど、それら全部回収して終わらせられるのか?
花田先生が物語をどう着陸させるのか、楽しみにしてますということで、12話の感想とします。

すみません。m(_ _)m
12話の感想記事を書く時間がありません。

実は最終話の放送が終わったら、翌朝始発の新幹線で東京に行きます。
6/29~7/2までの予定で、東京の友人に会ったり、ガルクラの聖地巡礼、あとぼざろの聖地で、時間的に諦めた場所と撮り忘れた場所がいくつかあるので、それらを回収するのが目的です。
そのため現在は、ガルクラの聖地をまとめたり、当日の巡礼ルート作成に勤しんでおります。

もう1つ考察記事を準備してはいるんですが、来週末までに間に合うかは微妙なところです。
帰ったら最終話の感想と、聖地巡礼を記事にできればと思ってますのでご了承ください。

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