見出し画像

ガールズバンドクライ 2人の桃香について


考察について

前回の記事では感想しか述べていないので、今回は2人の桃香について考察してみようと思う。
感想記事は視聴してすぐ気持ちのまま、勢いで書いたものなので、改めて考察すると考えが変わった部分もあります。
また、何度も視返して考えをまとめるようにしてますが、それでも絶対的な周回数がまだ足りない(ぼざろは何十周と視て考察しています)ので、変なところや気付いたところがあれば教えてください。
他人ひとの意見や考えは、別の視点で考察する、良い取っ掛かりになります。そこからさらに視野が広がって、より深く考察できるのでコメントは歓迎します。


桃香について

自己矛盾の塊

基本的にはすばるが言った通りなんだろうとは思うのですが、それだけじゃない、まだ何か隠してそうな気もするんですよね。
また物語上、桃香が仁菜たちと本気でバンドをやっていくには、桃香が心の奥底に抱えているものを吐き出して、自分の意志で前に進む必要がある。

「音楽やってる時は真剣で、全力で、少しでも良いモノを作りたい。自分の曲が通用するか、挑戦してみたい。
でも音楽から離れると我に返る。自分は脱退して勝負から降りたんだって、本気でやる意味あるのかとか考えてるんじゃないかな」

ガールズバンドクライ 第6話 すばるの台詞

音楽をやっている時の桃香は、すばるの見立て通りだと思います。
しかし音楽から離れた時の桃香については、何か引っかかるというか、疑問が残るんです。

第1話の時点の桃香は、脱退して勝負の世界から降りた自分が、いつまでもこっちにいるのは未練だと、故郷の旭川に帰ろうと思った。
でも「一緒に中指立ててください」と、仁菜の真っ直ぐな思いに動かされて、もう一度やってみようと思ったのではないのか。

しかし、その後の桃香を見てみると、仁菜をボーカルに誘ったり、やっぱりバンドって楽しいんだよと言ってる割には、新川崎(仮)の3人からメンバーを増やそうとしなかった。
昔の伝手を使って、積極的にメンバーを探すこともしなかったし、5話ですばるから「やっぱりベース探した方がいいよ」と言われても、「見つかったらね」とはぐらかしています。
さらには「あたしは今の3人も悪くないと思っているよ」と、なんだか意図的にバンドメンバーが揃うのを避けてた気もします。

すばるの言う通り、2人の桃香がいるのだとしたら、1番の自己矛盾の塊なのは、実は桃香なのかもしれません。
桃香が迷っている理由が、すばるの予想通りなのか、それともまだ何か秘めているのか。


気になる桃香のシーン

桃香がすばるの言う通り、脱退して勝負から降りた自分が、本気でやる意味あるのかと、本当にそう思っているのなら、解せない言動があります。

ガールズバンドクライ 第3話 ダイダスの看板広告
ガールズバンドクライ 第3話 ダイダスの看板広告を見つめる桃香1
ガールズバンドクライ 第3話 ダイダスの看板広告を見つめる桃香2

その一つが、ダイダスの看板広告を見つめる桃香の表情が、なんとも意味深な表情をしています。
少し寂しげに見えるのは、5話で明らかになった、ダイダスのメンバーへの負い目を感じているからなのか?


ガールズバンドクライ 第4話 桃香のスマホ
ガールズバンドクライ 第4話 今のダイダスをどう思っているかと聞かれ黙る桃香

二つ目が桃香のスマホ。検索してダイダスの記事を読んでいたようですが、なぜなのか?
三つめは、仁菜に「今のダイダスをどう思っているか」と聞かれ、言葉に詰まっています。また敢えて表情を見せない演出がなされており、桃香の心の内が読み取れないようにしていました。

しばし間をおいて、桃香が答えたのが次の台詞です。

「別にどうとも…。別に向こうを恨んでる訳じゃないし、今のダイダスは売れてくれればいいって思ってるよ」

ガールズバンドクライ 第4話 今のダイダスをどう思ってるかと聞かれた桃香の答え

「別にどうとも…」と言っている割には、ダイダスのことを検索してたり、言行不一致も甚だしいです。
「別に向こうを恨んでる訳じゃないし」
約束を破り、説得を振り切って辞めたのは桃香の方なので、どちらかと言うと、桃香はダイダスのメンバーから恨まれているんじゃないか、もしくは恨まれても仕方ないと思っているかもしれません。

そもそも桃香がダイヤモンドダストを脱退した理由も経緯も明らかになっていません。
第5話、居酒屋の場面で語られたのは、ダイダスが何を目指していたのかと、メンバーが必死で説得してくれたのに、それでも辞めたという2点です。
脱退した理由も経緯についても、結局語られていません。
この事については、終盤で明らかになると予想してますが、今回は現在ある材料で、桃香の胸の内を少しでも考察してみたいと思う。


脱退した時期

まず桃香がダイヤモンドダストを脱退したのはいつなのか?

これについては、第1話にヒントがありました。
仁菜が大事に持っていた、地元熊本でやる予定だったチケットを見てみましょう。

ガールズバンドクライ 第1話 熊本でやる予定だったダイダスのライブチケット

会場の阿蘇ミュージックアリーナは、架空の会場で実在しません。また座席指定となっているので、会場はライブハウスではなくホールだと思われます。収容人数はライブハウスよりは多いでしょう。

どれくらいの期間で、何ヶ所巡る予定だったのか、ツアーの規模については不明ですが、九州でライブと言えば福岡開催が普通です。
福岡とさらに熊本でも開催だったなら、全国各地を周るツアーだったのかもしれませんが、新人のデビューライブで、そこまで数多く周るツアーは考え難いです。
多くて東名阪に、札幌、仙台、福岡を足した5~6ヶ所くらいだと思いますが、重要なのはここではないので、これ以上は深掘りしません。

大事なのはツアーの開催時期です。
日付が入っていないので、正確な時期は分かりませんが、ツアータイトルに「真夏のダイヤモンドダスト」とあるので、夏に行われる予定だったツアーだと予想できます。
7~8月か、7~9月に行われる予定のツアーだったんでしょう。

このチケット、仁菜は「ダイヤモンドダストが地元でやる予定だったチケット」と言っています。
実際には事情があって開催されなかった。中止になったライブのチケットです。
中止になった理由は、ギターボーカルの桃香が脱退したからでしょう。
仁菜は払い戻しもせずに、大事に取っていた訳で、本当にダイダスのことが好きなんだなと思います。


第1話冒頭で、「17歳、3月、私は東京に来た。負けたくないから、間違ってないから」と仁菜が言っていることから、ガルクラの物語開始時点が3月です。
ツアーの予定が7~9月だったと仮定して、仁菜はすでにチケットを発券済みなことから、急遽中止になったと推測できます。
以上のことから、桃香がダイダスを脱退したのは、物語開始時点の3月から、6~8ヶ月ほど前だと思われます。

さらに「空の箱」が作られたのは、桃香脱退より少し前だと思うので、物語開始時点から9ヶ月〜1年近く前というところでしょうか。
仁菜のイジメの回想シーンでも、全て長袖の制服を着用しているため、1年の時からイジメに遭っていたか、2年に進級してからイジメられたかでしょう。
ただ5話でヒナのことを、昔友達だった子と言っているので、1年の時は友達だったが、2年になってからイジメられたという方がしっくりきます。
またそれならイジメの回想シーンは、どれもおよそ1年ほど前のことで、「空の箱」が発表された時期と重なることになり、仁菜が一番行き詰った時に聴いて、共感したのも納得できます。


空の箱について

歌詞から読み解く

「空の箱」の歌詞の内容は、進むべき道に迷い、もがき苦しんでいる人間が、自分は結局自分でしかない。偽りの自分にはなれないといった、事務所から売れ線の曲とルックスへの路線変更に悩んでいた、桃香自身を唄った曲です。

地図にはないはずの三叉路に今
ぶつかっているのですが
何を頼りに進めばいいのでしょうか

ダイヤモンドダスト「空の箱」より

三叉路とは道が三つまたに別れているところを言います。
これは桃香が事務所の方針に対して、3つの選択肢で迷っていたことを指していると考えます。

  1. 事務所の方針通り、売れる曲やルックスへの路線変更を受け入れる

  2. 自分一人がダイヤモンドダストを脱退する

  3. ダイダス全員で事務所を辞める


今日あの頃から少しも変わらない

ダイヤモンドダスト「空の箱」より

元々は高校の軽音部。
プロ目指して上京してきても、目指してきたものは変わらなかった。ばあさんになってもオリジナルメンバーで続けようと、それくらい仲は良かったんでしょう。

下手な愛想笑いすら やっぱりできてない

ダイヤモンドダスト「空の箱」より

事務所の方針に納得できず葛藤し続け、精神的に限界だったのではないかと思われます。


あたしは生涯 あたしであってそれだけだろう
これ以上かき乱しても明日はない

あたしは生涯 あたし以外じゃ生きられないよ
これ以上かき乱しても明日はない
どう足掻いても明日はない

ダイヤモンドダスト「空の箱」より

ダイダスのメンバーは、必死で桃香を説得しました。
桃香とも何度も話し合ったはずです。
サビの最後、
『これ以上かき乱しても明日はない』
『どう足掻いても明日はない』
この部分に込めた桃香の思いを考えると、何かを諦めたようにも感じます。

かき乱すとはメンバー間の和を乱すということなのか?
想像ですが、桃香は三叉路の3つ目の選択肢、ダイダス全員で辞めるという選択肢を、メンバーに言えなかったのではないか?
やっと掴んだメジャーデビューのチャンス。自分のわがままにメンバーを巻き込むことはできないと、説得を振り切って自分一人が脱退することを選んだ。
約束を破った自分が悪いという負い目と、本当はずっとダイダスの皆と一緒にやりたかったという後悔が入り混じって、ずっと自分を責めてきたのかもしれない。


そんな桃香が前に進むには、どうしたらいいんだろう?
ダイダスのメンバーから、「桃香は自分の道を行け」と背中を押されれば進めるかもしれないが、桃香自身で気持ちに整理を付けて乗り越えなければ、本当の意味で前に進むことはできないでしょう。
また仁菜あたりが、「それじゃあ桃香さんが負けたことになる」とか言って突っかかってきそうです。


空の箱の権利

感想記事でもチラッと書いたが、第1話で桃香は「空の箱」の権利について、次のように言っています。

「よくあるケンカ別れ。解散するに当たって、あの曲は誰のものだって話になってさ…」

ガールズバンドクライ 第1話 南河原公園にて桃香の台詞

これは5話の桃香の話を聞けば、嘘だったと分かります。
空の箱の権利についても、メンバー間で誰のものだって話になったと言ってましたが、5話の桃香の話を聞く限り、それも嘘だと思います。
最後まで必死に桃香を説得するようなメンバーが、空の箱の権利を主張するとは思えず、そうなると当然、主張してきたのは事務所とかレーベルという話になる。

空の箱の作詞作曲が誰なのかは、はっきりと描かれてはいませんが、

仁菜 「でも、この曲作ったんですよね?こんなに再生されているのに」
桃香 「他人ひとにあげちゃった。その曲の権利はもうないんだよ」

ガールズバンドクライ 第1話 桃香の自宅での会話

と仁菜も言っているし、歌詞の内容からダイダスのみんなとの夢と、事務所からの路線変更に悩み苦しんでいた桃香自身を唄った曲であるため、おそらく桃香が作詞作曲したとみていいでしょう。
著作権は桃香にあり、『あげちゃった』と簡単に権利の委譲はできません。


そこで再浮上してくるのが、桃香脱退の時期です。
仁菜が持っていた、ダイヤモンドダストが地元熊本でやる予定だったライブのチケット。

ガールズバンドクライ 第1話 熊本でやる予定だったダイダスのライブチケット

画像を見る限り、このチケットはプレイガイド事業者から販売されたチケットです。
発券期間は転売防止のため、最近では直前にならないと発券できない場合が多いので、桃香はツアー直前で脱退したと想像できます。
主催・企画・制作に或エンタテイメントとあるので、これがダイヤモンドダストが契約した事務所なんだと思います。

ガールズバンドクライ 第5話 ダイヤモンドダスト_デビューライブチケット

現ダイヤモンドダストのデビューライブのチケットにも、主催者に或エンタテイメントとありますね。
ちなみにプレイガイド事業者を通していない、ライブハウスで販売されたチケットも比較してみましょう。

ガールズバンドクライ 第5話 ライブハウス セルビアンナイトのチケット

新川崎(仮)の5話ライブのチケットですが、ライブハウスが企画したブッキングライブのものです。
企画主催したのはライブハウスなので、そのような欄はありません。
劇中に出てきたライブハウス『セルビアンナイト』は、実在するライブハウスで、EDクレジットにも協力に名前が載っているとは言え、URL、住所、電話番号すべて、実在するセルビアンナイトのものが描かれているのには驚きました。


話がそれたので戻すと、桃香がツアー直前になってダイダスを脱退したため、ツアーは中止。
当然、会場や人員、機材運搬車の手配、チケット販売業者への委託料など、キャンセル料はかなりの金額に上ったことでしょう。
桃香がそれを支払えるはずもありませんし、また事務所と契約書を交わしてしまえば、そう簡単に辞めることもできないはずです。
そこで交換条件として、「空の箱」の権利を譲ることになったというのは、十分考えられます。

ただそれでは、気になる桃香のシーンで挙げた、桃香の不可解な言動の答えにはなっていません。
仁菜は学校や親といった大人が、イジメに対してまともに取り合ってくれず失望しました。桃香にとっては芸能事務所が大人であり、汚い世界を見せられて嫌になったとも考えられます。

そこで前回の感想記事で書いた内容を想像しました。
ダイダスのメンバーも知らない、桃香と事務所だけの取引があったんじゃないか?
例えば事務所が売り出したかったのは、桃香ありきのダイヤモンドダストで、桃香が事務所の方針に納得できず脱退するとなった時、ダイダスのデビューも白紙に戻すと言われ、それで『空の箱』の権利を譲ったとも考えられないか。


メンバーも知らないところで、事務所と裏取引をしたという想像は、もしメンバー間で納得の上で脱退したのなら、新生ダイダスのデビューライブのチケットを、桃香にも渡しに来てもおかしくないはず。
単に描かれていないだけで、桃香の自宅に郵送されている可能性もあります。
ただそういった描写が無かったのと、物語の展開を考えれば、ダイダスのメンバーが何も知らないところで、桃香がすべてを背負って去ったと考えるのが、一番納得が行きました。

最後の最後でダイダスのメンバーに、肝心なことは何も言わず去った桃香からすれば、『自分のことを恨んでいるかもしれない』とか『あいつらから恨まれても仕方ない』という思考に至っても仕方ないと思います。
ダイダスのことを気にしていたのも、事務所が約束を守って元メンバーをデビューさせてくれるか、心配していたのかもしれません。
そしてデビューすることが決まったのを知って、自分は音楽を辞めて北海道に帰ろうと思った。


対極な存在の仁菜と桃香

私は仁菜と桃香はガルクラにおいて、対極に位置するキャラだと思っています。
例えば、上京してきた仁菜と翌日、旭川に帰る桃香。
夢があって、なりたいものがあって上京した桃香と、なりたいものもない、夢があって上京した訳じゃない仁菜。
第1話から2人は、対極の存在として描かれていました。

仁菜が負けたくなくて上京したのに対し、桃香は負けて諦めて故郷に帰る。
桃香が何に負けて諦めたのかを考えると、上記で書いたような想像に至りました。

桃香が現バンドメンバーに向き合って前に進むには、元ダイダスのメンバーの言葉ではなく、真っ直ぐに想いを伝えてくる、対極の存在である仁菜の言葉であるはずです。
それがどんな言葉で、どんな想いを伝えてくるのかは、今の私では想像できません。
でもきっと、涙なしでは語れない神回になるんだろうと、思いを語るのはここまでにしたいと思います。


追記:YouTube動画

今回の記事の考察動画も完成してYouTubeに上げたのでリンク貼っておきます。


この記事が参加している募集

#アニメ感想文

12,441件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?