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バックアップ

家にかえってまずするのは、頭をとりかえること。

ネジが、頭の後ろ側できゅっきゅと音を立て、こぽんと頭蓋骨のふたが開く。天井からつるされたフックに、頭の中身をひっかけてそっと取り出す。そして、薄く青い液体に浸してあった中身を指でつまみ上げ、頭の中に収める。

あとは、手順どおり。中身をはめこんで、ふたを閉じて。ネジをぎゅっとしめたら完成。

フックにかけておいた、昼間の中身を液体に浸すこと、忘れぬように。こちらは、ピンク色した液体。純水に数滴の赤い栄養剤をたらし、保存液とする。

たまに、頭の中がふくれあがって、ネジがはじけ飛びそうになる。ぎゅっぎゅとイヤなきしみ音が聞こえる。もっと、頭がふくれてくると、耳が圧迫されて音が聞こえづらくなる。

今日はいつもどおり。なにごともなく、家の「頭」にとりかえ完了。

ぼつりぼつりと、文字を書く。記憶のバックアップの時間だ。

頭のとりかえが手間取った時にも、記憶を入れ直すことができるよう。記録を残す、作業が始まる。

今日の手帳は、まだ真っ白。これから、今日に埋められていく。

#記憶 #記録 #SF

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本文上のイラストはia19200102さんが、みんなのフォトギャラリーに置いてくれてあったもの。

この絵のふたり。何を見てるんだろう、何が見えているんだろう。気になる。

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