はらはらどきどきを選んで今日を楽しむ
ずっと小説を読んでいた。夢の中でも、目が覚めても。寝ていたのか起きていたのか、わからないまま外が明るくなった。
小説を読みながら冒険をしていた。台風のあと、海辺の斜面を双眼鏡で眺め見て山崩れの様子を観察していた。途中、山の上から灰色の大きな妖怪、一反木綿があらわれ、私を暗い海の中に投げ込む。私は大きなクジラに助けられる。
クジラの中は帆船のようになっていた。廊下の両側にずらりと並ぶ部屋の入口がぽっかりと開いている。それぞれの部屋の中には、鉱物や化石、はく製、機械のパーツなどがガラスの箱に入れられてならんでいる。奥に近づくにつれ、標本庫のようにびっちりと天井まで木箱が積みあがる部屋が続く。まるで、大きな博物館か大学の研究棟にいるみたい。
廊下の奥にあるひとつだけは、立派な木製のドアがついていた。西洋のどこかにあるお城のよう。部屋の中は廊下から見ることができない。
「あの奥にネモ船長がいるのね」
そこから風景は活字に変わる。黒くて細い線を重ねて書かれた挿絵のような景色が、ときどき挟み込まれる。何度も繰り返し読んだ『海底二万里』の世界に入り込んだよう。ページをめくっているのか、紙のような感触を感じながら夢は進む。
巨大なタコに襲われたり、サンゴを盗もうとするダイバーと戦ったり、火山が噴火したり。本の中の世界のはずなのに、出てきた火山が学生時代に地質調査をしていた新しめな火山だったのはご愛敬。
この先、どうなるのかと、はらはらどきどき小説を読んでいたら、目が覚めた。
寝る前に読んだ本は冒険小説ではなかったのにな。
私はよほど冒険をしたいようだ。だから、きょうは冒険をする日。「はらはらどきどき」を基準に行動を選択する日にしよう。
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