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いちき たまこ
2021年4月5日 18:45
真っ白に花が浮かぶ、真っ暗な山道を。ひとり、歩く。空の向こうに、ぽこっと見えるまん丸な月。その光を吸いこんだように、白く光る花。風がふっと通り過ぎたら、小さな光たちがふわふわと目の前をこぼれて、落ちる。夜の山を歩くのは怖い。けれど、この桜の花が咲いている時だけは好き。怖いけれど、好き。そんな春の夜。耳の奥で、じいじいと音が鳴る。静かすぎる山の中で、山神さんが人の世界をみつめて