見出し画像

2021/8/30-31(火)わかったふり、内省したふり


山本七平『「空気」の研究』がkindle unlimitedのラインナップに追加されていました。

初出が1977年。私は今回が初見。コロナ禍や東京五輪をめぐる意思決定のゴタゴタにうんざりさせられてばかりの今、40年以上前に書かれたはずのこの本が何の古臭さも感じられることなく読み進められるというのは筆者の慧眼でもあるのでしょうが、日本、この本の前後でなーんも変わってないのかいということの証でもあり、虚無感に襲われます。当時のベストセラーだってのに。読書、意味ないね。どれほど下々の人間が読み、内容を高く評価しようとも、届くべきところに届くことのない執筆活動など、それ自体としてはなんと無力な自己満足なのだろう。

それとも反省や内省とは消費活動であり心を解放するためだけの免罪符なのでしょうか。涙を流してすっきりしました、涙を流すという行為そのものが重要なのです、というカタルシスと同じ類のものなのかな。

本を読んで、なるほど腑に落ちたよ私たちは変わらなければならないね、と思うことこそがゴールなんでしょうか。読書というのは。

何一つとして現実にはなしえてないくせに「私たちはやり終えました」という嘘のリストだけがうず高く積み重ねられていく行為の片棒を担ぐことが読書の一側面なのだとしたら、読む側以上に出版業界こそが自分たちの本質的な自己満足体質にメスを差し込まなくてはならないのではと偉そうに思ったりします。

読書そのものに話を戻すと、私の頭と集中力の限界、一読しただけでは理解できている自信がまったくありません。とくに「水をさす」ことが「空気」を崩壊させるどころか結局のところ「空気」に対応することへとつながってしまうあたりの論展開を理解できているとはいいがたく。いずれ再読することになると思います。

私たちの置かれている社会を俯瞰するにおいて、読んでおいたほうがいい本の一つだと思います。


武者修行中です。皆様に面白く読んでいただけるような読み物をめざしてがんばります。