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落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『異邦人』カミュ著 窪田啓作訳~

「太陽」は何を意味するか。
 
この書のテーマにつながるキーワードであると思う。
一方で、自分の死刑判決以外にも、ママン(母)の死、自分の死刑判決、ママンから聞いた遠く父親の処刑見学の話など、「死」が「太陽」に対比される存在としてあるように思う。
 
その意味で「太陽」は「生の象徴」か。
さらに「太陽」についての表記はとにかく熱い。(暑い、が正しいか)。
そう考えると、この書ではなかなかあらわれてこない主人公の、実は「生への希望・渇望・期待・思い」などが「太陽」というキーワードの中に込められているように思う。
 
ただ、不幸にも、人生を斜に構えた考え方。
人生に強く希望を持てないという思いが、人間性の欠如と感じられてしまう。
検察官をもってして「あの男の魂をのぞき込んでみたが何も見つからなかった」「人間らしいものは何一つない。人間の心を守る道徳原理は一つとしてあの男には受け入れられなかった」といわしめることになる。
 
書の最後のメッセージ。
「この私に残された望みといっては、私の処刑の日に大勢の見物人が集まり、憎悪の叫びをあげて、私を迎えることだけだった」
 
「生きる」とは何か。
「希望」とは何か。
「太陽」というキーワードを通じて、改めて深く考えさせられた書である。
 

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