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高次脳機能障害「私」のマイクロツーリズム~「くもん」と「まさか」 『女子会ケア』編~

このコーナーは重度高次脳機能障害当事者(重い知的障害、ADL全般の障害、特に失語症で思うように意思表示できない)の家内(=「私」)の気持ちを、夫である私(=たまさん)が推測し、家内の視点に立ち家内の言葉で書いたものです。
家内のまわりで起こっている「ささやかなチャレンジをあらわすもの」として、「マイクロツーリズム」というタイトルをつけさせていただきました。
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おまえのケアは、「くもん」と「まさか」を考えるようにしている。

たまさん(「私」のだんな)が最近よく言っている。
この人はホント言葉遊びが好きだ。常々そう思う。
「今度は何のことか」と思っていたら、今回はなかなかいいことを言っているように感じた。
つまり
「くもん」とは、発動性が著しく低下している「私」に対して「少しでも気持ちを前向きにさせよう」「やる気にさせよう」という仕掛けのこと。
「くもん=KUMON(公文式学習)」。
「できた!」の積み重ねで自己肯定感を育むというKUMONのコンセプトを「私」のケアに当てはめようとするものらしい。

具体的には「女子会ケア」。
といっても、女性同士でワイワイガヤガヤの女子会ではない。
「私」はむしろそういう場は苦手。
「私」の趣味・関心のあることについて、介護保険制度に固執することなく、気の合う女性の方と一対一のケアをおこなっていただくというもの。

たまさんが発案してくれた。
ちなみに先月ケアいただいたビューティータッチセラピストの藤本先生には、先日もお化粧ケア(正式には「メイクキュアセラピー」というらしい)をお願いした。今後、毎月1回お願いする予定。楽しみである。
さらに言えば、毎月「おおい元気ぼっくす」で開催しているめぐみ先生(「私」のお友達)の「和のアロマのワークショップ」にも毎回参加。
これも「リラックス」といういわゆる「心のお化粧」になる。
そして来月以降になるが、たまさんのお知り合いのプロ歌手の方(失語症から復活されてきた方)から歌・声楽についてオンラインで教えていただくことになっている。そういう流れがうまく回ってくると、歌唱訓練の成果を毎週の女性ST(実は「私」と同じ猫好き)と一緒に確認することができる。
その他にも、数か月前より、女性PTに「私」の趣味の「クロスステッチ」を通じて姿勢保持をチェックいただいている。作品の方も、もうすぐ第一作目ができそう・・・・・・。

このように、「ケア」というものをタテワリの「制度」ではなく、ヨコグシで考えることで、より「私」に寄り添った形になる。
「寄り添う」という言葉は結局、どこまで当事者を理解するかがポイントになる。制度を当事者に当てはめようとするのではなく、当事者の視点・気持ちを考えながら、当事者の希望するコンテンツを、無理なく、適切な形で提供することが重要になる。
たまさんの言葉を借りれば、それが「本来あるべきケアマネジメント」なのだろう。

「けしょう(化粧)」と「かしょう(歌唱)」と「ししゅう(刺繍)」。
これらのコンテンツによる「女子会ケア」が、いかに「私」の発動性を高めることになるか!?
たまさんを中心に、「私」の回りのみんなが期待してくれている。
「私」自身も楽しみながら、無理せず、頑張ってみる。
これが「くもん」になるのだろうな。
次回は「まさか」についてのお話になるそうだ。

PS
「私」は決して男性サポーターを毛嫌いしているわけではありません。
要は、コンテンツがかなり女性に片寄っているということ。
男性の方でも、しっかりと「私」を理解してくれる方、理解しようと努力してくれる方、大勢いらっしゃいます。とてもありがたく思っています。
これからもよろしくお願いします。


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