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ワクワクリベンジ読書のすすめ~『ヒューマンライブラリーへの招待』坪井健著~

「ヒューマンライブラリー(Human Library;以下HL)」とは・・・・・・。
「人」を「本」に見立てて、その内容に興味を持った「読者」がその「本」を借りることによるコミュニケーションのこと。つまり、話し手である「本」の方(1人)と参加者である「読者」(1~5人程度)で行う一種のお話し会のことである。
新しいコミュニケーション手法として注目されているだけではなく、HLを通じて新しい「気づき」を参加者に与えてくれることも大きな特徴である。
著書の中でも、「『本』の方が語る自身の体験や抱える問題、生き方は、いままで知り得なかったマイノリティへの理解を深め、私たちが持ちがちである偏見という名のココロのバリアを溶かすきっかけとなる」としている。
 
HLは、本の方自身のつらい体験や生きにくさの自己開示で話が進むことが多い。マイノリティである「本」の自己開示をマジョリティである「読者」が受けることになる。一般に他者からの自己開示には「返報性の規範」というお返しの原理が働くという。返報性とは例えば、相手の困難な話を聞くと自分も似たような経験をしたことがあると話すこと。少人数であるが故の共感性・場の共有。そこに共有リアリティの関係性(対話空間)が生れることになる。
一方で、HLでの自己開示は「本」当事者の語りが自己肯定感を強めるプロセスにもなり、一般の方への固く閉ざされた心を切り開くことにもなる。つまり、HLが「本」当事者のマジョリティへの偏見やトラウマを溶かすきっかけになるということである。さらは、それは当事者にとっての勇気や希望にもつながるともいえる。
 
その意味で、HLはマイノリティとマジョリティの関係性の再構築に大きく貢献する手法・手段であると考える。
 
ただ確認が必要なのは、HLにつながる前段階の考え方。
生きにくさを感じている方々を見かけても「見て見ぬふり」していないか。勝手な思い込みで壁を作っていないか。仲間として受け入れようとしていないのではないか。
私の場合、家内が重度の障害を負っているため、比較的彼らに対するココロのバリアは一般の方より低いと思う。それでも時として、本当に彼らを正しく理解しているのかと自問自答するようなこともある。
社会全体でココロのバリアを溶かす努力の必要性を改めて感じた次第である。

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