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落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『集まる場所が必要だ』エリック・クリネンバーグ著 藤原朝子訳~

「居場所づくり」のノウハウ本かと思ったが、まったく違っていた。社会学的な見地から、「集まる場所」=「社会的インフラ」の重要性を語っている。
「社会的インフラ」とは「人々の交流を生む物理的な場や組織」のことである。
「社会関係資本(人間関係や人的ネットワークを測定するときに使われる概念)とは異なるが、社会関係資本が育つかどうかを決定づける物理的条件」であるとともに、「強力な社会的インフラが存在すると、友達や近隣住民の接触や助け合いや協力が増える」ということであり、「健全な社会的インフラがある場所では、人間どうしの絆が生まれる」としている。
そして、「それは当事者たちがコミュニティをつくろうと思うからではなく、継続的かつ反復的に交流すると(特に自分が楽しいと思う活動のために)、自然に人間関係が育つ」からだという。
 
「社会的インフラ」とは、ひと言で言えば、人々が交流する場であり、そこに導くための環境を意味する。中でも、図書館や学校、遊び場、公園、運動場、スイミングプールといった公共施設は重要な社会的インフラである。そしてまた「サードプレイス」として、何も買わなくても、人が集まって長居することが歓迎される場所も社会的インフラにあたる。例えば、カフェや理髪店、書店などがそうである。
 
堤防や空港や橋を修理するのと同様に、新しい社会的インフラは不可欠である。
著者が重視したのは、学びを促すデザインとしての図書館、犯罪を減らすインフラとしての空き家整備と緑地の確保、公園や市民農園などの健康的なコミュニティ、(黒人)理髪店や町内会、運動場などである。
中でも、特に注意深く感じたのは、自宅を含む周辺環境の整備である。さらには、歩道、中庭、市民農園などの緑地も重要な社会的インフラになるということである。
「割れ窓理論」という有名な考え方がある。「犯罪者は割れ窓などの無秩序な外観は社会の管理が弱いというサインであり、犯罪を抑止される可能性は低いというもの」であり。著書で指摘しているのは、割れ窓になる前に、空き家(廃屋)や空き地があるということである。いわゆる荒廃の前提というべきであろうか。実際に空き地を整備したり、廃屋が少なくなると犯罪が減少するというデータもあるそうだ。さらに緑化は犯罪以前に心の安定をもたらし、「刑務所より緑が必要だ」ともいわれているそうだ。
知のインフラとしての「図書館」。安心・安全のインフラとしての「緑化をはじめとした環境整備」。まさに社会的インフラはSDGSにつながるものであると考える。

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