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落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『おしゃれ童子』太宰治著~

「瀟洒と典雅」。この言葉を「人生の目的」としているところが興味深い。
背景には少年(太宰のことと思うが)の自己顕示欲の強い、目立ちたがり屋的な性格があると思う。
一般にちょうど小学校高学年くらいから、男子は色気づきはじめるものだ。
「女の子にもてたい」「自分をアピールしたい」などの理由から、頭髪や衣服をはじめ、いろいろな形で自分の存在を誇示しようとする。「自己顕示欲の芽生え」とでもいうべきだろうか。
「少年」は衣服でもって自分を誇示していたが、「よだれ掛けのように見える襟」とか、友人からひんしゅくをかった「海軍士官もどきの外套」など、作中の表現を見る限り、「おしゃれ」のセンスはよくなかったようだ。

この作品を読んで、ちょうど自分の中学生時代を思い出した。
当時通っていた新潟の片田舎の中学校では、男子生徒は、なぜかラッパズボン(裾広がりのズボン)をはいていた。
学校での裾の広さは生徒間の「権力」をあらわすものだった。
最も裾の広かったのは30㎝。はいていたのは、気の弱いくせにいきがっていた先輩だった。
さすがに学校側も服装の乱れと認識したのだろう。「ラッパ狩り」と称してチェックに入った。「25㎝以上はアウト」。こんな規則までできたことを覚えている。
笑えるのはその後のこと。自分は埼玉県の東京寄りの小都市の中学校に転校した。なんとこちらではちょい悪以上の生徒は「ボンタン(太もも部分が膨らんだズボン)」をはいていた。田舎と都会の違いか。子供心にも、このギャップに笑わずにはいられなかった。

ラッパとボンタン。いずれも大人への階段を上り始めた少年達の自己顕示欲の現れだったのだろう。
心理学的に自己顕示欲が強い人は3つに分けられるという。
① 他人より優れていることをアピールしたいタイプ
② リーダーシップを発揮して他人をコントロールしたいタイプ
③ 他人とは違う存在であることをアピールしたいタイプ
『おしゃれ童子』の少年(太宰)は、「① 他人より優れていることをアピールしたいタイプ」だろう。

結局、太宰は「瀟洒と典雅」という外面を気にするあまり、内面(本質的な自己)とのギャップから不幸な結果になったような気がする。

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