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ワクワクリベンジ読書のすすめ~『壁-S・カルマ氏の犯罪』安部公房著~

時々、自分が自分でないように感じることがある。不思議な気分とでもいうべきか。
ちょっとしたこころの病なのかもしれない。
『壁』しかり『砂の女』しかり。安部公房の作品は日常と非日常が入り混じった、何とも言いあらわしがたいものがある。二度読みしないと意味が解らない、というかこころが落ち着かない。
ネットでの書評をみても、
『安部作品の最大の特徴は、なんといっても「不条理な設定」と「前衛的(アヴァンギャルド)」であることでしょう。 あまりにも設定が現実離れしているので「シュルレアリスム(超現実的)」とも呼ばれていますね。 現実の外にある「人間の深層意識」を巧みに描いているのがポイントです』とある。
『壁-S・カルマ氏の犯罪』はその典型なのだろう。
 
名前が盗まれる?
上衣・ズボン・靴・眼鏡・帽子・ネクタイ・万年筆・手帳・時計が革命を起こす?
名刺が彼女とデートする?しかもその彼女はマネキン?
曠野やらくだを自分の中に吸収する?その曠野には壁がそびえ立ち壁はどんどん成長する?
 
いったい、それらは何を意味しているのだろうか。
そんなことを考えていると、浮かび上がってきたのが「まさか」というキーワードである。
作品の中にある状況は現実にはあり得ない。
しかし、安部公房の頭の中(創作の世界)では日常的なのかもしれない。そのギャップが数々の作品の魅力を高めているのかもしれない。
 
安穏と生活している中における「まさか」。それもとびきり超越した「まさか」。普通に考えられない「まさか」。それが日常性という背景の中で描かれている。一見、自分の身にも起こりそうな、関係しそうな気配を感じる。
この作品は平和ボケ・日常に埋没している自分に喝!を入れてくれる。一方で、あえて混とんとした、わけのわからないような演出をおこないながら、自分をこころの闇から解き放ってくれる、軽いアルコール飲料のようにも思われる。
そんな特色を抱いたのは私だけだろうか。


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