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落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー著~

《感想》
脳に障害を負ってしまった脳科学者の回復の記録である。現在、noteに連載している「サポートノート 『支援のシナリオ』づくり」の参考書である。巻末にある「最も必要だった40のこと」をもとに、家族や支援者に対しての「支援のヒント」を記載している。

『奇跡の脳』は、高次脳機能障害についてあまた刊行されている中でも秀逸の書であると思う。この中から、脳卒中(高次脳機能障害)当事者の思いや苦しみ、そして家族や支援者として配慮すべきことについて数多くのことを学ぶことができた。家族会でも過去話題になったらしいが、なぜもっとこの著に学び、何らかのアクションをしてこなかったのか。不思議でならない。

著書の前半は回復までの道のりの中で著者が感じたことを中心に記載されている。

ここでは何より、看護する側(医師、看護師、家族)の当事者によりそうアプローチがポイントになっている。多くの言葉を語らずとも、なにより当事者の気持ちを配慮した対応は、家族介護者としてとても参考になった。ある意味、さきに読んだ『犠牲』(柳田邦男著)によく似ていた。

後半は、特に右脳と左脳の話(右脳マインド・左脳マインド)は読みがいがあった。これは障害の有無に関係なく、脳のあり方について一方で脳科学者でもある著者が経験とあわせて書いている。

「右脳マインドの性格は冒険好きで、豊かさを喜び、とても社交的。言葉のないコミュニケーションに敏感で、感情移入し、感情を正確に読み取ります」。

一方で左脳マインドは、「外の世界と意思を通じ合うための道具」であり、右脳マインドがイメージのコラージュで考えるように、「左脳マインドは言語で考えてわたしに語りかけます」。

これらの関係性の中にわれわれの生活がコーディネートされていると改めて実感した。

そしてなにより興味深く感じたのは「安らぎの回路につなぐための秘訣」について。

ポイントは「『いま、ここに』いるという運動と感覚の体験から気をそらそうとする、思考や不安やその他の認知グループを止めてしまおう、と固く決意すること」であり、「からだの中で幸せが感じ取られるような状態」をつなげていくこと。

こうしたアプローチこそ、よりよい生活、充実した生活につながるのであろう。「支援のヒント」の基本になると思う。


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