その業務、本当に歯科医師じゃないとダメ?-矯正歯科選びの観点から-
歯科では、独占業務といって、歯科医師や歯科衛生士などの有資格者じゃないとできない業務が存在する。その一方で、有資格者じゃなくてもできる仕事がある。私自身、現在の仕事は歯科以外であるが、アシスタントに補助してもらって仕事をしているので、人的リソースを考えて業務の割振りをどうしているのか観察してしまう癖がある。
矯正歯科医が症例をたくさんこなすためには、歯科医師でなくてもできる業務をスタッフに上手に割り振る必要が出てくる。業務の外部化が出来ているかどうかが、重要なのである。症例が多いのに業務の外部化が出来ていないのはどこかで破綻しているし、業務の外部化がきちんとできているのに症例がこなせていないのは(そんなところは実在しないと思うけど)どこか問題を抱えている、ということになる。
まるで経営コンサルの覆面調査の様相であるが、リアルな覆面調査もできそうな予感・・・(笑)。今回は一般患者としてカウンセリングを積み重ねただけなので、調査結果のフィードバックはしていない。
※外部化-専門用語ではなく、たまちゃん用語である。あしからず。
【業務の外部化―DrからStaffへ―】
最大のパフォーマンスを実現するには業務の外部が徹底されている。実例を挙げて検証しよう。カウンセリング巡りをしてみて、これは歯科医師じゃなくても歯科衛生士や歯科助手(カウンセラー)でもできる業務が見えてきた。
歯科医師以外でも可能な業務
・診断に必要な情報収取:問診、レントゲンセッティング(撮影ボタンは医師)、口腔内スキャナーで印象取得、口腔内写真撮影
・個別対応が不要な説明:矯正方法の説明(インビザラインについて、ワイヤー矯正の種類について)、通院頻度や矯正後のメンテナンスの説明、費用の説明、一般的なリスクの説明
治療開始後も同様に写真撮影などの資料採得は衛生士、アタッチメント装着やIPRは設計に基づき勤務医が行うなど、業務の外部化が可能。
インビザドクター限定業務
・初診:得られた情報をもとに診断し、治療の可否、治療方針、矯正方法の選択
・治療:インビザラインの設計、クリンチェック、途中経過の確認
【対象の外部化】
口腔内は見にくい。直接観察するより、写真や口腔内スキャナーで口腔外へ持ち出した方が観察しやすく、分析も容易となる。写真撮影により患者も自分の口腔内を見ることができ、情報を共有することができる。
一般歯科治療でもこんな経験ないだろうか?手鏡を渡されて、「奥歯、こんな風に治しておきましたからね~」と言われたものの、全く見えないシチュエーション。しかも上の歯だったり・・・。
この外部化を最大限に生かしたのがインビザラインである。患者本人が自宅で治療を進める点や、アライナーの設計も口腔外で行う点で治療が外部化されている。外部化することで診断や治療計画にかかる時間を短縮することができ、より多くの患者の受け入れが可能になるんだと思う。
【価値観はひとそれぞれ】
矯正治療に歯科医師がじっくりと向き合う姿勢を重視する人がいたとしよう。その方のお勧めの矯正歯科へ行ってみたが、歯科医師じゃなくてもできる業務を歯科医師が行っていた。写真撮影などの資料採得も歯科医師、料金や通院頻度の説明も歯科医師だった。
治療そのものや治療計画について歯科医師とじっくり話し合いたいが、私としては料金説明まで歯科医師である必要は無いと感じた。必要のないところで歯科医師のマンパワーを割かれても、得られる結果は変わらないと思うからだ。さらに、最初から最後まで院長カウンセリングだと貴重な時間を割いていただいたことに恐縮して、契約しないと申し訳ない気分になってくる。負けず嫌いな性格が悪さをして、「遠距離だけど通えるか?」と聞かれれば「必要なら通う」と答えるが、本音は必要なければ通いたくない・・・、である。ワイヤー矯正をやらない決定的な理由が見いだせないまま、ずるずるカウンセリングを続けてしまったが、途中で衛生士さんにバトンタッチしていたら断りやすかったので、院長の時間をそぐことはなかったであろう。申し訳ない。
補足しておくが、この医院はとてもいい矯正歯科で問題点は見当たらない。インビザラインがこの世に存在しなければここで矯正したいと思っている。医院のキャパシティの事情で、これ以上患者数を増やす意思がないと思われる。外部化が徹底されていなくても治療が問題あるわけではない。外部化されていないにもかかわらず、勤務医がいなくて院長ひとり、なおかつ患者数が多い場合は気を付けたほうがいいとは思う。
注:上記医院は勤務医がいて、患者数が少ない。
【患者数に見合った工夫があるか?】
患者数が多い歯科医院は、それなりの工夫が無ければならない。業務の外部化がなされていればちゃんと運営されていると判断できる。歯科医院を見極めるポイントのひとつとして、患者数に応じたバランスのいい業務配分ができているかをチェックしてみよう。
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