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鉛筆「舐め舐め」算盤はじいてみてください

小学校6年生の時の担任が、プリントを配るときに指を舐めて湿らせるタイプの人でして、せめて湿らせた一枚目が自分には来てくれるなと念じたことを覚えている。

縦横5×6くらいに座った教室で、ペロっと親指を舐めてプリントを5枚取り、席の先頭の生徒に渡す。次の5席の先頭に立ち、指先の湿りを追加してまた5枚を取り先頭の生徒に渡す。舐めて5枚取って、渡して、次。舐めて5枚、次。5枚を取り分けている途中で親指の湿りが足りなくなり、プリントが捲れなくなれば途中に指舐めが入る。ペロっ。しゃっしゃっしゃっしゃっしゃっ、渡して、次。ペロっ。しゃっしゃっしゃっ、ペロっ、しゃっしゃっ、渡して、次。

前の方の席に座っていたときは、一番上の唾液がしっかりついているであろう一枚を避けて後ろに回していたし、後ろの方の席に座っていたときは、湿りの強い一枚が自分に回ってこないことをただ祈った。

チョークの粉がついたその指を良く舐められるな。

軽蔑や嫌悪とまでは行かない、ほのかな不快感というか違和感というか。先生のことを嫌いな訳ではなかったので、唾液のついたプリントそのものに嫌な気持ちを抱き、できれば距離をお取りしたいという。

時代だろうか。

中高くらいまでは定期テストの折、そういうペロペロ先生にちらほら遭遇したけれど、大人になってしばらく、他人に配るプリントを取り分ける際に指を舐り倒す人になんて出会っていない気がする。

ところかわって。

鉛筆舐め舐め、算盤はじいてみてください

かなり予算の厳しい案件で、大手企業のシステム部門の部長に見積もりを依頼された時の一言であった。50代男性。若干腰回りやら顎の下やらの肉を余分に蓄えて、メガネの向こうの眼光にはいくらかのずる賢さが見え隠れするタイプであったが、大きな組織で管理職を勤めているということもあって、表立っての人あたりは悪くない。

鉛筆舐め舐め算盤はじいてみてください
すなわち、高かったら今後あんたんとこには発注せんよ、長い目で損得考えて、企業努力で安い見積もりを持ってくるんだぜ。そういうことである。

プリント配りの指舐め先生が原体験だからか何だか知らないけれど、これを聞いた時に6年生の時の担任が浮かんで『親指舐め舐めプリントを配ってみてください』とライムはいまいちながらも独り言ちるには十分なシチュエーションをチェキラッチョしつつ、(いや、わたしは鉛筆も親指も舐めませんけどね)などと頭の中で言葉を返した。

別に嫌いじゃないけど、やっぱりちょっとあんまり舐めないでほしかった。

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