人生で一番やりこんだゲームのサ終をきっかけに、自分自身に絶望した日
中一の夏、不登校になった私は、WiiUとスプラトゥーンを母にねだった。
家に居たくて不登校やってるわけじゃない。学校が嫌で行きたくないから不登校をやっているのだ。家は嫌いじゃなかったが、家にばかり居ても気が滅入ってしまう。
毎日鬱々として暗い顔をしていた娘が突然目を輝かせながらゲームが欲しいなんて言い出したものだから、母は驚いて、すぐにゲーム屋へ連れて行ってくれた。
買ってもらってからというものの、私は毎日数時間スプラトゥーンに没頭した。
スプラトゥーンしかやることがなかったわけじゃない。学校の勉強もやっていたし、他の趣味もあった。
でも、スプラトゥーンの勝ち負けに一喜一憂しているあいだだけは、現実逃避ができる。イカちゃんの絵を見たり描いたりしているあいだは熱中できる。
イカの姿では学生も社会人も関係ない。スプラトゥーンに登場する街・ハイカラシティが、私の居場所となっていた。
得意ブキはL3リールガン。最初はDのほうを使っていたが、ポイズンの魅力にハマっていき無印を使うようになっていった。
ゲームのやりすぎで肩が凝りに凝ってしまい、整体で「中学生の肩とは思えません、固すぎる」と言われたりもした。
その後、無事高校に進学したあともちょくちょくプレイしていたし、高校卒業後に進学してひとり暮らしを始めたときも実家からWiiUを持って行って、ステイホームが叫ばれるなか何もやることがないのでただひたすらL3リールガンを撃ち続けていた。実家のリビングと違って夜遅くまででも誰にも止められずゲームをプレイできる環境はこの世の天国かとまで思った。
そんなスプラトゥーンをはじめて9年が経ち、ある日ツイッターのタイムラインに飛び込んできたのは、スプラトゥーンのオンラインプレイサービスが終了する旨のお知らせだった。いわゆるサ終である。
あまり現実感がなかった。ああ、終わってしまうのか。
私はもう親にゲームをねだる歳でもなく、さらには万年金欠なので、次のゲーム機であるswitchを購入する余裕もなかった。スプラトゥーン2や3を買う気はないので、自分にとってのスプラトゥーン人生がこれにて終了する、ということになる。
サ終が発表されてからも、私は定期的にハイカラシティに帰ってきた。Miiverseが2017年に終了して以来、正直死んだような街になったなぁと感じていたけれども、私はハイカラシティが、スプラトゥーンが大好きだった。
そうして、今日。4月9日。これを書いている8時間後にはサービス終了し、もうスプラトゥーンのオンラインプレイをすることができなくなる。
大切な人ともう二度と会えなくなるような、そんな気持ちだ。
私は先ほど、徹夜プレイをするつもりでゲームを開いたが、2時間後にはWiiUの電源を切った。
なぜやめたのか? それは、シンプルに飽きてしまったから。
勝ちが続いても、心が躍らない。
負けが数回続いてイライラしてくる。こんなストレスになってしまうならもう、やめよう、と思った。
こんなに熱を入れたゲームになぜ飽きたのか、自分でも分からない。
これがおとなになるってことなのかもしれない。たしかに私はここ十年くらい、スプラトゥーン以外のゲームというものをほとんどやっていなかったし(スイカゲームとポケモンスリープくらい)、ゲームに時間を費やすなんて信じられないと思っていた。
本当につまらない人間になった。ゲームなんて無駄だというおとなを心底軽蔑し、つまらない人間だ、こうはなりたくないな、と思っていたはずなのに。
ゲームをやれば、つまらない大人になっていくことを防げるだろうか。でももう私は、ゲームを楽しむ心を失ってしまったらしい。じゃあ、どうすればいいんだ。
サ終直前ということでお祭り状態になっていた心も、スンと冷めてしまった。スプラトゥーンがサ終なんて嫌だ! 終わらないで! という気持ちから、ゲームを楽しむ心を失った自分の自己嫌悪の気持ちへとすり替わっていった。
私が失ってしまったゲームを楽しむ心というのは、もう手に入らないものなんだろうか。それともなにかきっかけがあれば取り戻せるものなのか?
それはこれから生きてみないと分からない。
少なくともいまは、「ゲームなんてやっていないで目の前の課題に集中して自己研鑽に励まなきゃ」と本気で思っている。変えてかなきゃ。楽しむ心を取り戻さなきゃ。
でもそれはそれで、「自己研鑽に励まなきゃ」と同じような強迫観念で「ゲームを楽しまなきゃ」と思っているだけで、それは心から楽しめているとは思えない。食べ放題で食べる楽しみを忘れて元を取ることに必死になったり、テーマパークで乗り放題チケットを買ったから極限まで乗り尽くさなきゃとタイパを気にして乗り回るような、そういうのに近い。
私はいつか心からゲームを楽しむことができるのだろうか。できたらいいな。
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