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息子からの手紙

今朝、わたしのこれまで生きてきた中で
一番嬉しいプレゼントをもらいました。

息子からの手紙です。



朝早く、外国へ旅行に行く用の、大きな白いスーツケースを車のトランクに乗せようとした。

息子はこの春、新しく入る会社の寮に向かう。

わたしはスーツケースが重くて持ち上げられなかった。息子はわたしを見て微笑んて、軽々と乗せた。


春の嵐の中、紺色の背広をきた息子はとても大きく見えた。
彼が車に乗り込んだとき、大きなバンは小さく感じた。
有島武郎『生れ出づる悩み』の、漁師の青年に見えた。
未知の世界に飛び込んてゆくのは、どんなだろう。


妹2人と弟にずっと見送られ、息子は雨をしのげて、ほっと安心していた。

わたしは信号が赤になって、息子に手紙を渡そうとした。すると
「母さんとは繋がってるな。俺も同じなんだよ。」
と、黒いリュックから手紙を出した。

息子は赤い封筒で、わたしは白い封筒だった。「紅白でめでたいね。」と笑い合った。

お互いに、両手で受け取った。ありがとう。


駅まではあっと言う間だった。

車を駅の前に停めたときに目が合った。
車のなかで両手を握り合った。

今朝は日曜日だから人がまばらだ。良かった。
まばらな中で、息子は一段と大きかった。

駅の改札まで一緒に歩いたけれど、わたしは何を話したか、覚えていない。
息子は「だいじょうぶ。」と少し笑った。


電車に乗る前に、わたしに向かって両手で大きく手を振ってくれた。高く伸びた両腕は何回か交わった。わたしも手をふると、息子は笑っているように見えた。

そして、あっと言う間に行ってしまった。

息子は福島で高校生活を送っていたが、その時はあまり悲しくは感じなかった。息子の部屋には息子の物があり、いつでも帰ってくると思っていた。

この旅もいつでも帰ってこられるはずだ。
それなのに、なぜこんなに悲しいのだろう。。

それは。。

息子は今朝、キッパリと自立したのだ。

赤い封筒に入った手紙は、息子の優しい気持ちが溢れていて、でもキッパリと自立していた。
嬉しくもあり哀しくもあった。

2枚の手紙を読んで、これまでの22年間のいろんなことがよぎる。なかなかおさまらない。

このnoteは泣きながら書いている。ありがとう。



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