見出し画像

【京伝びとストーリーvol.6】自分と向き合える場所をつくりたい

玉乃光には、長い間つかっていない古い蔵があるんです。今年そこの蔵の大改装に着手します。でも、それはお酒を造る場所としてではなく、みんなにとって心の拠り所になるような場所をつくりたい。

神道、歴史、文化を感じられる空間

日本酒は、日本の伝統文化であり、日本の歴史とともにあります。
350年前に創業した玉乃光も、伝統を引き継いできた酒蔵のひとつです。

日本の伝統文化に、神道が与える影響は本当に大きいと思うんです。それは宗教としてではなく、もっと自然に日本人の内側に入り込んだ思想として。

お米の一つぶを大切にしたり、お天道様が見てるとか、もったいないとか、自然を敬い、感謝する心。サステナブルな考え方は、SDG'sが唱えられるずっと前から日本にはあります。

そして、そんな神道と日本酒は密接な関わり合いがあります。神道は経典もなく、開祖もいない。世界的にも独特の宗教です。神道において、神様にお供えするものが、米、酒、塩、水です。

これはもう、日本酒そのものです。日本酒は神道であり、文化であり、日本人の心なんだと思うんです。

そんな日本酒の酒蔵が、神道、歴史、文化を感じられる空間をつくり、日本人の心を表現することも大切な役割。実際、敷地内に鳥居や祠がある酒蔵は多いのですが、私も玉乃光らしい空間を作っていきたいと思うようになりました。


禅の思想を学べる空間

もうひとつ、神道と並んで、仏教の教えも日本人の文化に深くかかわっています。日本の歴史の中で、政策的に仏教と神道は融合していった過去があります。また、神道では、八百万の神が信仰の対象であり、仏教の仏様でさえ信仰の対象となります。

その結果、私たち日本人は、お盆には墓参りをし、クリスマスにはプレゼント交換をし、お正月には神社に初詣をする。仏教、神道、キリスト教などさまざまな宗教を受け入れ、日常生活に取り入れています。

外国の人から見れば、ものすごく変な国だとは思うのですが、それが、日本人らしさであり、私は好きです。仏教はそもそも修行をして悟りを開くためにある教えで、何かを崇拝するものではないものです。

日本人の生き方とは、神道と仏教が融合した考え方「自然を崇拝し、修行をして悟りを開く」。そんなあり方が日本人らしいなって思うんです。

そんな仏教の修行として、すぐ思いつくのが「禅」です。私は「禅」の世界は難しくて全然理解できていません。本を読んでもなんか騙された気分になって、すっと入ってこないんですよね。

だから修行がいるんですよね。きっと。
というわけで、そんな禅の思想を学べる空間も作りたいなと思うようになりました。


自分と向き合える場所

いくら神道と仏教が融合しているとはいえ、神社の中でお経を読むわけにはいかないし、お寺の中に神棚を置くわけにはいきません。

あくまでも日本人の意識の中で融合しているのであって、神社、お寺それぞれはそれぞれの宗教の大切な場所です。

でも酒蔵って神社でもお寺でもないので、あんまり気にせず両方の思想を感じられる場所を作ってもいいですよね。
それが現代の日本人にとってはしっくりくる場所だと思うんです。

自然に敬意を払って、謙虚な姿勢で神棚にお参りをしつつ、座禅を通じて、心の修行をする。こんな時間が、今の時代ひとりひとりが自分らしく生きていくために、すごく大切なことだと思うんです。そんな自分と向き合える場所を作れたらいいなって思います。

変ですかね?

神道、仏教の信者の方々には怒られちゃいそうですが、素直に今の時代を生きる人にとって大切なことを考えた結果です。

今年は玉乃光創業350年。この記念の年に取り組めることも何かのご縁。いい場所をつくりますので。お楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?