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【京伝びと ユースコミュニティ-vol.3】若い時に伝統産業に触れると日本が好きになる。

学生向けの日本酒製造体験

日本酒の製造過程で洗米という工程があります。お米を炊くときにお米を洗いますが、同じ要領です。ただ、日本酒の場合、精米歩合によって洗い方が少し違うんです。というのも精米歩合が低いほど、お米が小さく割れやすくなるので、丁寧に洗う必要があるんです。つまり、高級な日本酒ほど丁寧にお米を洗う必要があるということです。

最近は機械でも丁寧に洗うことができるんですが、玉乃光では高級な日本酒は手洗いすることにしています。ただそれが結構大変な作業なんですよね。

洗米ではもう一つ重要なポイントがあります。それはお米を水に浸けている時間です。お米を蒸す際の水分量は蒸しあがりに多大な影響を与えるため、麹を作る際に重要なポイントとなります。なので、お米を洗う時間も秒単位で管理します。

そんな大切な洗米なんですが、手洗いで行うとすると人手がいるんですよね。通常の工程よりも人手がいるんです。そこで、学生に洗米工程体験をしてもらうことにしました。そうすれば酒蔵としては助かるし、もしかしたら学生にとってもいい影響があるんじゃないかと思ったんです。


伝統産業に触れることの意味

実際に募集を開始してみたところ、延べ30名くらいの募集だったんですが、すぐに埋まりました。みんな何かしらの興味が湧いたんだと思います。実際に来てくれた学生に感想を聞いてみたんですが、大きく2種類の感想だったんです。

一つは、「想像していたより大変だった」「日本酒造りって大変なんですね」という感想。

そしてもう一つは、「貴重な体験ができた」「自分たちが携わったお酒が世に出るのが楽しみ」という感想。

だいたい半々くらいかな。同じ作業をしたのにずいぶんと印象が違う感想だと思うんです。どちらが良い、悪いという話ではないのですが、受け取り方次第で大きく変わってくると思いました。

学生たちには酒造りの全体像はもちろん分からないわけですが、その上で自分たちの携わった作業をどう捉えるのか。

後者の学生たちが目を輝かせていることが単純に嬉しかった。きっと彼ら彼女らはこの体験を単純な作業と捉えていないし、むしろ何等か日本酒造りの精神性を捉えてくれたんだと思うんです。

伝統産業には不思議な魅力があります。それは、機能的な価値ではなく、悠久の歴史の中で育まれてきた精神性です。自分たちが行っている作業は何百年も前の人が同じようにやってきたことであり、そこには普遍的な真理が込められている。

正しいか間違っているかという世界を超越した普遍的な精神性がそこにはあると思うんです。学生のときにそれに触れていられると今後の人生に大きな影響を与えると思うんですよね。

若者に日本を好きになって欲しい

伝統産業がもつ普遍的な精神性とは、日本人たるアイデンティティだと思うんです。SDG’sが叫ばれるずっと前から、日本にはサステナビリティの考え方はありました。もったいない、八百万の神、禅の考え方はまさにそこに通じるものだと思うんです。

日本人は世界から見れば稀有な存在だと思います。世界から見れば変わっている民族です。悪くとらえると、体は小さいし、主張をはっきりできないし、英語をしゃべれないし、信仰が薄い。

でもよく捉えれば、争いを好まず、独特の文化を育み、サステナビリティの考え方はもともと文化として存在する。確かに制度面ではヨーロッパに先行されているかもしれませんが、文化としては日本の方が根強いはず。だからこそ、日本が誇る伝統文化の精神性は、世界に誇るべきものだと思うんです。

若者に伝統文化を通じて、日本を好きになってほしい。それが伝統産業に関わるものの務めだと思うんですよね。

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