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純米酒のその先へ。完全オーガニック酒米の日本酒の実現を目指して。

創業350年 京都伏見 玉乃光酒造の副社長🤗他では聞けない日本酒と酒かすの話。オーガニックと発酵研究中🌱今まさに全力疾走中のプロジェクトの実況生中継を熱くお届けします! 


さて、「オーガニック」という言葉に皆さんはどのくらい馴染みがあるでしょうか?

化学肥料や農薬を使わず、自然の力を使った農法などで作られた食品。

数年前に欧米で流行してから、近年日本でも、健康志向の広まりや環境問題への意識向上により、聞く機会が増えたように思います。

実はわれわれ玉乃光酒造も、20年ほど前から有機農法の酒米を使用した日本酒の製造に取り組んでいます。


身体にも環境にも良い有機農法の酒米を醸した日本酒「GREEN」。

現在は、あくまでも酒米を有機農法で作っているだけですが、今後は工場なども正式にオーガニック認証を取得し、完全オーガニック酒米の日本酒の製造を目指しています。

もちろん、より身体に良いお酒を飲んでほしいという想いもありますが、われわれが完全オーガニック酒米の日本酒を製造しようと思った背景には、玉乃光酒造がこれまで大切にしてきた想いがあります。

そんな背景と、完全オーガニック酒米の日本酒の今後の展望を今回はお話します。


玉乃光酒造の純米酒の歴史

玉乃光酒造は、米と水と麹だけで造る「純米酒」の製造にこだわっています。

なぜ、われわれがそこまで「純米酒」にこだわり続けるか。

実は玉乃光酒造には、1964年にいちはやく「純米酒」を復活させた、という歴史があるのです。

今でこそ、純米酒は世の中で一般的になりつつあるものの、戦争による米不足のため、戦後もお米は政府が管理する貴重な食物でした。

そのため、ほとんどの酒蔵がお米だけでお酒を作ることをやめ、アルコールを添加した日本酒、いわゆるアル添酒が主流になりました。

しかしそんな中、当時の玉乃光酒造11代蔵元である宇治田福時は、

「米だけで造る酒こそが本来の日本酒である。なんとしてでも純米酒を復活させたい。」

という想いのもと立ち上がったのです。

純米酒の復活に向けて動き出したものの、やはりそれは簡単なものではありませんでした。

当時は日本酒は等級制が取られていた時代。

税金を高く払っているお酒から順に特級、1級、2級と等級を与える、という制度があったのです。

当時、「純米酒」は税金を払わないため、2級で販売していました。

それでも、当時価値が高かったお米を多く使用するので、どうしても値段は高くなる。

どれだけ質のいいものを作っても、等級が低いのに値段が高いお酒はなかなか売れません。

そんな中でも諦めず、純米酒だけをひたすら追い求めた当時の蔵元。

やがて酒ブームの到来なども相まって、ついに純米酒の価値が認められるようになったのです。

今では、「純米酒」は珍しいものではありませんが、玉乃光酒造は様々な困難を乗り越えて、長い間「純米酒」を守り続けてきた酒蔵なのです。


純米酒のその先へ

そんな歴史から、現在の13代蔵元に変わってからも、「純米酒」に対するこだわりは引き継がれています。

ただ、純米酒が復興してから50年以上たってしまった今、純米酒を作る酒蔵も増えてきました。

「純米酒を造る酒蔵」と声高にしたとて、限界があります。

われわれが次に目指すべきは、純米酒のその先

そこで、たどり着いたのが、完全オーガニック酒米の日本酒でした。


そして、身体にも環境にも良い有機農法の酒米を醸した日本酒の製造を始め、「GREEN」の製造に成功したのです。


しかし現状、われわれが実現できているのは、あくまでも原料として有機農法の酒米を使っているというだけ。

完全オーガニック酒米のお酒を作るためには、工場等も正式にオーガニック認証を受ける必要があります。

酒米から、工場等まで、全てオーガニックで作られた日本酒の製造。

その実現を目指して、現在、整備や環境を整えることに力を入れています。


生産者さんとも力を合わせること

オーガニック日本酒を製造する上で誰が一番大変か。

それは、やはりオーガニック酒米を作って下さる生産者さんです。

化学肥料を使わないので、毎日の草抜きや、目をかけないといけないことも必然に増えてきます。

さらに、一般家庭に広まる食用米と比べて、ニーズが少ない酒米の生産となると簡単に取り組めるようなものではありません。

しかしそんな中でも、20年間地道にあらゆる農家さんとお話していくうちに、オーガニック酒米の生産に協力してくれる人が少しずつ、少しずつ増えてきています。

われわれの今回の取り組みが成功したら、オーガニックの酒米を作りたいと思ってくれる生産者の仲間も増えていくはず。

もちろん大変な部分も多いですが、少ない量でも、質が高く付加価値も高い酒米を生み出すことができれば、生産者さんにとっても未来の広がりにつながる、と私は信じています。


以前の記事で感動のバリューチェーンの話をしました。

酒蔵、卸売、小売、全員で力を合わせて感動のバリューチェーンを生み出したいという話。

同じように、農家さんとも互いに協力しあって、日本酒業界を盛り上げていけたら嬉しいと思っています。


まとめ

完全オーガニック酒米の日本酒という市場はまだありません。

完全オーガニック酒米の日本酒の製造で、先陣を切って盛り上げていきたいと思っています。


以前の記事でも書いた通り、私が目指すのは、全員で協力しあって日本酒業界を盛り上げ、守り続けていくこと。

やはり日本酒業界を盛り上げていくためには、卸売、小売、酒造、そして生産者さんなど、関わる全ての業種のみなさんと協力しあっていかないといけない。

そのために、メーカーとして良いお酒を生み出せるように頑張っていきたいと思っています。

そのうちの一歩として、完全オーガニック酒米の日本酒の製造を目指して頑張ってやっていきたいと思います!

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