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【京伝びとストーリーvol.8】「京都」とは町の名ではなく、思想。

禅を学びたくて、臨済宗大本山妙心寺を訪れました。

京伝びとのブランドコンセプトの要素として「禅」があります。一字もらって「禅利」という名前の日本酒も作ります。禅は日本が世界に誇る思想であり、これからの時代にこそ必要な考え方だからです。

禅の思想を学びたくて、いろいろと調べたり、書籍を読んだりしました。なので、頭では理解が進んできたのですが、正直どうもしっくりこないんです。何か体に馴染んでこないんです。

だから、座禅してみたり、初釜(年始はじめのお茶会)に参加したりしてきました。それでもやっぱり体に馴染まない。

そこで、実際に禅宗に携わっておられる方と直接お話したいと思うようになりました。そんな中、ご紹介で妙心寺の副住職とお話する機会を頂けました。大変ありがたく、貴重な時間でした。お話できたことで、私なりに感じたことがたくさんありますので、ここに書き留めておきたいと思います。


機能・品質の差ではなく、価値観・思想の差でサービス・商品を選ぶようになる

副住職とのお話の中でこんなお話がありました。会合で上座下座に座る席順を決めるとき、東京と京都では違いがあると。

「東京では経済規模の大きさで順番を決める」
「京都では京都に貢献している順番で決める」

京都の人は京都に貢献する人のことを尊敬するんですと。

この話を聞いたとき、私は、日本の未来においてすごく大切なことだと感じました。

私は三重県の生まれで、京都の人から見ればよそ者です。実は私はこの京都の習わしの洗礼を何度かすでに受けています。そのたびに、京都は生きにくいなーって思ってたんですが、今は考えが変わりました。

これから日本は人口がどんどん減少し、世界の中で相対的に経済規模が縮小していくことは確実です。そして、技術の進歩によって次々に課題が解決され成長のスピードが鈍化します。さらに、AIの発展により人間の個の能力の差が埋められるようになっていきます。
その結果、サービスや商品は、機能や品質による差異がなくなり、商品価値が汎用化していきます。

もはや機能や品質でサービスや商品を選ぶ理由はなくなっていく。では、何を理由に選ぶのか、それは価値観・思想だと思うんです。
もう人は価値観・思想の中でしか生きていけない。

「京都」とは、町の名ではなく、思想。

京都には1,200年以上の歴史があり、その中で育まれてきた価値観や思想があり、その一つが禅です。京都の人たちは京都の価値観や思想を大切にしており、それを守ることをみんなでやっている。だからこそ長い歴史の中で京都という町は守られてきた。そして、その価値観や思想を守れない人が入ってこないようにしてきたわけです。

別に京都に住む人一人一人がそんなことを考えているわけではないと思いますが、結果的にそれが京都に貢献しようという気持ちの人をたくさん育ててきたんじゃないかなと思います。

もはや京都とは、町の名ではなく、思想。京都という思想に共感する人たちの間でコミュニティが形成されている。

京都の思想は世界に通用する。それは世界中に、京都というコミュニティを作ることができるということです。それはきっと日本の未来において救世主になるに違いない。

京都という思想が世界に届いたとき、世界中の人が京都の思想に基づくサービス・商品を好んで消費するようになる。サービスや商品の機能や品質による差異がなくなり、京都のことが好きな人は、どうせ買うなら京都のものにしようとなる。

それは別に京都産の商品という意味ではありません。神社やお寺、着物や和菓子みたいな京都を連想させる商品という意味でもありません。京都という思想に基づいて生産されるサービス商品なんです。

そして、それが日本が世界に誇るべきサービスに繋がっていくと思うんですよね。


京都の価値観・思想をつないでいく。

それでは、京都の価値観・思想というものが何なのか。きっと、今後死ぬまでかかって学び続け、それでも分からず、次の世代に残していくんだと思います。

ただ、生きているうちに何となく輪郭が分かるようになりたいなと切に思います。きっとそれは人の幸せにつながっていくものだからです。間違いなく禅はその一つだと思いますので、学び続けていきたいと思います。

玉乃光は京都・伏見の酒蔵です。日本酒という伝統産業を営んでいます。酒蔵にも京都の価値観・思想をつないでいく役割がきっとある。

まずは、京都の価値観・思想を自分なりに言語化するところから始めていこうと思います。すでに多くの人がやられていることですが、今まで以上に京都の価値観・思想が重要になっていく未来、私も微力ながら協力していきたいなと思いました。


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