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【読書感想文】『格闘する者に〇』三浦しをん著

 【あらすじ】
 漫画に情熱を注ぐ可南子は、出版社を目標に就職活動をするが、なかなか思うようにいかない。呑気な友人たちや、義母と弟との不安定な3人暮らし、老齢な書家との恋。どれも山あり谷ありだが「格闘」しながら少しずつ自分の在り方を見出してゆく。三浦しをんのデビュー作。


 重松清氏が「本書には、のちに三浦さんが作品の重要なモチーフとして繰り返し描くことになる、とてもたいせつなものが示されている。けれど、描かれていない。」と解説を寄せているが、確かにその後の三浦しおんの作品―小説とエッセイ―の両方のエッセンスがぎゅっと詰まっており、ここからその後の作品が枝分かれしているように思える。


 作品としては、就活をテーマにしているものの、よくあるなかなか内定がもらえない就活生の苦しみや、友人たちが次々と決まっていく焦り、はたまたビックリするような採用試験の数々を描いた一般的な小説とは異なり、確かに就職活動も大変だけれど、生きていたら悩みはそれだけでないというある意味当たり前の日常が描かれている点がこのテーマにおいて新鮮だった。
 色々な作品を読んでから戻るデビュー作もとても感慨深い。ヒット作に出てくる登場人物の元となるキャラクターもいて、この順で本で良かったと思う。

#格闘する者に〇 #三浦しをん #読書感想文

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