マンダラ×ビジネス①~⑤まとめ版
*この記事は、レポートを元に制作しています。
*この記事では、①~⑤を通してお読みいただけます。
曼荼羅の智慧をビジネスに活かす
―曼荼羅的思考から探る人的資本経営の新たなアプローチ―
1.導入:このテーマを選んだ理由
はじめに、私が高野山大学の社会人コースに入学した動機として、異なる領域の知恵を結びつけ、その架け橋となりたいという想いがあった。
仏教を学び始めて数か月が経つが、特に密教や空海の教えには、私たちが現代を生きるヒントが驚くほど多く詰まっていると感じている。中でも「包摂的」、「多様性」という価値観はまさに今求められているキーワードだ。
曼荼羅には、密教の教えが詰まっていると言われる。
今回曼荼羅をテーマに選んだのは、普段あまり仏教と接点のない現代人でも宗教的な抵抗を感じにくい絵図であるという点と、一方で名前は聞いたことがあっても中身は知らないという人がほとんどではないかという点から、仏教とビジネスを結ぶきっかけとして相応しいと考えたためである。
加えて、曼荼羅には、宗教的・哲学的な意味だけでなく、同時に合理的なシステムや秩序、法則が表現されている点にも関心を持った。
ビジネスの世界に視点を移すと、昨今「人的資本経営」という考え方が注目され、企業は一人ひとりの社員の価値を最大限に引き出し、中長期的な視点で企業価値の向上を図ることが求められている。日本では内閣府によって人的資本の開示が義務化されるなど、人的資本経営への関心は今後も高まることが予想される。
以上の背景から、曼荼羅的な思考で人的資本経営を考えるというアプローチを試みる導入編としてこのレポートをまとめたい。
2.曼荼羅について:曼荼羅とは何か、何を教えているのか
2-1.曼荼羅とは、仏の覚りの境地を絵画で表現したもの
曼荼羅という言葉はサンスクリット語の音写語で、maṇḍa(円、輪、中心、神髄、本質などの意味)とla(所有の意味)から、「本質を所有するもの」の意味をもつ。[i]
日本に初めて曼荼羅を伝えた空海が残しているように、曼荼羅とは言葉で表現しきれないことを伝えるための一つの表現方法であることが分かる。
松長氏によれば、空海は
と記している。
要するに曼荼羅とは
であり、また森氏によれば
であるという。
[i] 高野山大学難波サテライト模擬講義『密教の世界と曼荼羅 マンダラを読み解く』(松長潤慶先生)2021年1月17日https://m.youtube.com/watch?v=DMA4J_CIdrg
参考
2-2.曼荼羅の6つの特徴
本稿では概略にとどまるが、曼荼羅には以下のような特徴がある。
2-3.曼荼羅の教え:個と全体の関係性―重重帝網の思想―
曼荼羅を代表する思想として、個と全体の関係性が表現される点に注目して取り上げたい。
近代科学では解決できない問題が立ちはだかる現代だが、松長氏は科学と東洋を比較し、「近代科学技術文明は、個の集合体が全体を構成すると考える。一方、東洋の文明には、個の中に全体が凝縮されると考える思想がある」と整理する。
そして「全体が個を包み、また逆に個が全体を包み込む譬え」として、重重帝網の思想[i]を取り上げている。
地球や宇宙に当てはめて考えると、
ことも曼荼羅は伝えている。
[i] 重重帝網(じゅうじゅうたいもう)とは
3.まとめ:人的資本経営につながる曼荼羅からの示唆
曼荼羅からの示唆のうち、人的資本というテーマと関連性の高いと感じた点は以下である。
●多様な仏が同じ組織に共存し、それぞれの役割と個性をはたらいていること
●それぞれが同時多発的に活動していると同時に、関連性や階層性も表されていること
●曼荼羅は一定の法則性を持って構成されていて、仏の配置によって性質が変化すること
さらに、着目したいのは密教のもつ多元的な価値観である。松長氏は
という。
というこの観点を、現代の価値基準に照らし合わせるとどうだろう。
例えば、利益や生産性、GDPなど特定の価値基準への偏重による弊害を乗り越える上で、多くの価値基準を用意するという曼荼羅の思想が参考になるのではないだろうか。
今後も密教とビジネスが重なる点に着目し、先人から受け継いだ智慧が新たな着想につながるような視点を提供する研究に取り組みたい。
おわり
おまけ📕参考文献
引用したこの本。
薄くて読みやすい文体なのに、心に響く言葉がたくさん書かれています。
空海や密教についてまず1冊選ぶなら、
松長有慶先生のこれがおすすめ。
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最後までお読みいただきありがとうございました✨
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