2015年9月の記事一覧
さすらいのノマドウォーカー⑰
天使の輪が初々しい腰まで伸ばした黒髪にストンとしたデザインのワンピース。
直立不動でマイクを握りしめる少女は、重いそれをただただ落とさないように踏ん張っているだけのようにも見えた。
シャンプーのコマーシャルのように首をゆすって髪をなびかせると、思い出したように背筋を伸ばす。
シェアハウスに帰宅するとリビングでは、姉と店子の仙道さんが顔を寄せ合って何かを覗き込んでいた。
「来てたんだ」
そ
さすらいのノマドウォーカー⑯
GW中の休日出勤は普段は関わらない部署のフォローもせざる負えない。2課のデスクが並ぶエリアへ資料を拝借しに入った。
デスクは使う人の個性が如実に現れる。滅多に踏み入らない隣の部署も、デスクに人柄が投影されていて興味深かった。
OJT教育をした後輩の机には、「成功者になるための○○」だの「仕事が出来る人は○○をやっている」だのの自己啓発本が何冊も積み上げてあった。
ところどころ付箋が張ってある
さすらいのノマドウォーカー⑮
時折、思い出したように鳴る電話に応対し、たまった書類を片付けているとあっという間に退社時間がきた。書類はメールに添付できるし、指示も相談も出社せずに済ませられるが、印鑑だけは手で押さなければならない。この昔ながらのシステムは、どうにかならんものか。電子印だって普及してきている。タブレットの液晶に指書きで署名するのは、どうしても抵抗感が残るが…。
キリがいいところまで片付けてしまうか、持ち帰るか悩
さすらいのノマドウォーカー⑭
「マコちゃんは何のむ?もってきてあげる」
トテトテという擬態語がしっくりくる頼りない足取りでドリンクバーへ向かう姪っ子を、ハラハラしながらソファで見守った。危なげな手つきながらも、エスプレッソマシンにマグカップを置くと、背伸びをしてカフェラテのボタンを押す。プシューっとフォームミルクをはき出すノズルを興味深々でみつめている。ミルクが止まると手を出そうとする。うわ!まだだよ。次にエスプレッソが出て