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【百線一抄】034■昔も今も北の大地の幹としてー函館本線

旅の主役が鉄道であった時代、北の大地へ針路をとる旅人の多くが
連絡船に乗って函館を目指し、さらに奥地へ進む長距離列車の良席
を確保するべく我先と競う光景はまさに旅の風物詩であった。早朝
から特急や急行が次々と発車したあと、控車を介して連絡船内の貨
物列車が引き出されて、組み直されたものがその後を追いかける。

主要幹線のひとつといえる函館本線は、函館と旭川を結ぶ路線であ
る。道南の主要都市を経由して長万部からは倶知安、小樽を通って
比類なき大都市に成長した札幌に達する。札幌からはさらに道北へ
と石狩平野を石狩川に沿って突き進み、神居古潭を横に抜けて旭川
にたどり着く。大動脈としての機能は輸送力の大きい室蘭本線に任
せて久しいが、その両端にあたる函館口や小樽・札幌以北は現在も
昔も変わらず、最重要路線としての役割を十二分に果たしている。

たどる道筋は想像以上に険しい。先に掲げた主要駅の間には標高を
稼ぐところがいくつもあり、その克服の歴史は数多くの経路変更や
砂原線に見られるような別線による線増、電化区間の延伸などと戦
後に入ってから改良されたところもかなりの件数にのぼる。北海道
の鉄道発展の歴史をまさしく見せつけようとしているかのようだ。

間違いなく次に訪れる大きな変化、それは北海道新幹線が札幌まで
つながる時であろう。目下建設工事が進捗している途上であるとと
もに、沿線各地では並行在来線の在り方について注目されている。
無下に廃線、バス転換というわけにはいかない地域事情や物流との
関係も踏まえた判断が求められており、都市間輸送と地域内移動、
四季を通じて変動が大きい物流と観光客誘致といった、複合的要素
の落とし所をどこに据えるのか、とても大きな課題を抱えている。

当時は直通列車も多く走っていた函館本線だが、現在は乗り通すと
もなれば少なくとも3回の乗換が必要だ。しかし、大沼と駒ヶ岳を
眺めて長万部、ニセコアンヌプリを遠望して小樽、天気がよかった
ら石狩湾の広がりはまさに絶景。札幌を出るとほどなく国道12号と
並んで文字通りまっすぐ北東へ進む。深川を過ぎると石狩川に近づ
く。速度が落ちて川を渡ると、間もなく旭川到着だ。たとえ新幹線
に主軸が移っても、本州と道央を結ぶ幹である地位は悠久なのだ。

それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。

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