【百線一抄】023■難読駅がいっぱい、そこもすきー高山本線
「次の停車駅はどこそこです」と車内放送が流れるのは当たり前。
聞き耳を立てるのもよし、目的地がずっと先なら聞き流すもよし。
耳にする聞き慣れない地名に関心を寄せてみるのも、よいものだ。
列車の旅の楽しさはそういうところにもあるのだが、その点で言え
ば、ぜひとも鈍行列車でその味わいを楽しんでみたい路線がある。
中部地方で本線を名乗るJRの路線のうち、高山本線がたどる飛騨
路は下呂や高山といった観光地を擁していながらも、地形の厳しさ
に阻まれて、なかなか手が入らないエリアであった。国鉄の時代に
も改良計画こそ立てられていたものの、かねてから経営難の荒波に
飲み込まれてしまう。数本の旧型気動車特急と速度の上がらない急
行が、単線の急曲線だらけの坂道を喘ぐように往来するばかりの鈍
足路線に甘んじる体で、民営化でJR東海と西日本に移管された。
カミンズ社製の高性能エンジンを搭載した新型特急列車は、前例に
ない時間短縮を達成した。単に車両の出力が上がっただけでなく、
主要駅以外の小駅で列車が高速で通過できるように分岐器の交換や
建造物の調整も合わせて行われた。これらの成果も相まって、急行
列車は次々と特急に格上げされ、鈍行列車も新型車両に変わった。
ワイドビューのパイオニアも初登板から30余年が経過して、さす
がに世代交代を迎える時期に近づいた。次世代の車両は、まさに近
未来指向のハイブリッドカーへ進化し、ここまでの大変貌を遂げた
飛騨路のニューリーダーとして、バトンを受け継ぐ予定だ。一部は
富山まで足を延ばしているが、中京圏と北陸圏を結ぶ重要路線の一
つとして、さらなる熟成と発展が望まれている一面もある。山間部
の路線ならではの課題も多いが、地域路線としての奮闘も必見だ。
あいの風とやま鉄道の富山駅から南下する過程で、数多くの読み書
きが一致しない駅名に出くわすのがこの路線の面白さだ。越中八尾
に楡原、打保、角川、上枝。上呂に下呂はお手のものでも、下油井
は凡ミスもあるかも。古井に坂祝まででノーミスで読み書きともに
合わせられるのであれば、相当の手練れとみてよいだろう。特急な
ら越中八尾と下呂しか停車せず、他の駅名も見たいなら鈍行に乗ら
ねばならぬ。飛驒山脈が迫る高山以北はとりわけ本数も少ないけれ
ど、四季折々の風景も合わせて探訪する値打ちのある路線なのだ。
それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。
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