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第四章 道央&道東大行脚旅(幕間)

55 台風21号と北海道全停電―関空使えねえ編

 2018年は各地で自然災害がとりわけ多く発生し、しかも6月の北摂地域を揺さぶった直下型の地震は、1995年の阪神淡路大震災以来といってもいいレベルで周辺の日常生活に影響を与えた。そこに追い打ちをかけるように近畿地方を直撃したのが台風21号で、1961年の第2室戸台風を凌駕する勢力をもって広範囲の停電や家屋の損壊、記録的な高潮などをもたらした。その中でもとりわけ大きなダメージを受けたのが関西国際空港で、高潮による空港内設備の水没や損壊のみならず、停泊中に潮で流されたタンカーが連絡橋と衝突したために当面の間、連絡橋も使用できなくなった。これらの一連の被害によって、当日空港内にいた関係者は、唯一の経路となった神戸方面とつながる航路によって空港島を離れることができたという。
 自宅周辺も相当の影響が出たとはいえども日常生活に変化はあまりなかった。むしろ課題となったのは、こちらで予定している旅程への影響が、関空の被害によってどのような対応を迫られるのかが未知数であったことにある。台風が通過したのが9月4日で、ちょうど関空の開港24周年の日であった。関空の25年目は、非常事態への対応から始まったということになる。実際に空港島の被害状況の全容が明らかになったのは6日に入ってからであったが、同じくこの日の未明に発生した北海道厚真町の地震を引き金とする道内全域の停電も加わり、大幅な旅程の変更を同時進行で繰り広げる事態となった。
 初期の旅程は、9日の朝に羽田を発って旭川に入り、レンタカーを借りて石狩川流域を行脚。旭川駅前で乗り捨てて(エリア内なので手数料不要)、青春18きっぷ利用で当時設定があった北見ゆきの臨時快速で終点北見にて宿泊。そして翌朝は残り1回分の青春18きっぷを利用して網走まで行き、そこから改めてレンタカーを借りて釧網本線沿線を清里町まで攻めて女満別空港に入り、関空直行便にて帰阪というスケジュールであった。空路はちょうど9月末まで有効のマイルがあったためそれを活用し、レンタカー2回と青春18きっぷ2回で持ち出しとなる交通費は2万円いかない、何ともリーズナブルな設定だったのだ。それが事実上の白紙となったのである。
 さらに別日程のものとして、9月末の関空→新千歳便と翌日同時間帯の新千歳→関空便をレンタカーで24時間借りした旅程も組んでおり、こちらは夕張山地周辺と日高本線沿線を網羅して千歳で1泊をはさみ、翌朝に占冠を目指してエリアの残りを片づけるものもあった。しかも台風21号がまだ領海南端にいた頃には、何の懸念もなく10月下旬の釧路往復も予約決済を終えていたという状況にあった。まさに急転直下、抱えている案件の大調整大会が挙行される展開となってしまった。

56 台風21号と北海道全停電―北海道機能停止編

 9月6日の深夜に北海道を襲った地震と、それを追って飛びこんできた道内全域の停電の報せは、一部区域で停電状態が続く近畿エリアのことは事実上そっちのけの状態で報道機関を奔走させた。首都圏の半分にも満たない大阪周辺の、しかも限られたエリアのライフライン異常などもはやマスコミにとってはどうでもよかったかのように、北海道の動向にベクトルが向けられていた。言うなれば、それほどまでに道内の状況は壮絶だったということになるし、その点に関しての異見を差し込むつもりは毛頭ない。当時の現地の状況は、SNSを通じて現地と縁がある知己の報告で知るところとなり、道内では総力を挙げて現状の把握と早期復旧を目指していたこともこれらのつながりで把握することになった。
 さて、問題は出発が直前にまで迫っている9日発の旅程である。そもそも渡道できるのか。道内に入れたとして所定の旅程を消化することは可能なのか。しかも当時の旅程では前日の8日に別の旅程も組んでおり、調整を進める時間などその日にはない。こうなれば混雑は承知の上で問合せセンターを介して旅程を組み直すしかない。なぜならば、通常のカード決済であれば全取消の上で再設定も可能であるが、今回のフライトは期限切れ直前のマイル利用によるものであるため、オンラインでの変更は制約が多すぎるのである。
 結論は、関空発着便を回避しつつ旅程を2週間ほど先延ばしとして搭乗便の組み合わせを見直すことになった。羽田→旭川便は同じ便であるものの、東京前泊ではなく夜行バスでの当日乗り込みとなり、青春18きっぷ期間は終了しているため旭川→北見間を普通乗車券で移動するぐらいなら、乗り捨て料金を払ってでもレンタカーで移動しきってしまう方が機動力も上がる。帰路の女満別→関空便は関空復旧の目途が立たない以上、他経路での利用が前提となり、今回は羽田乗継便を活用することで決着が付いた。関空便よりも羽田便の方が90分ほど後に出発するため、道東エリアでの行動時間も長めに確保することができるようになった。
 空路の再設定ができれば、あとはレンタカーの手配である。こちらはオンラインでの予約だったため、9日と10日の2件の予約から1件をキャンセル、残り1件を変更するつもりで予約ページにアクセスすると、どうも通常の動きがとれない。そこで予約センターに電話を入れると、道内の予約はキャンセルのみ対応しており、変更や新規の契約は停止しているとの説明を受けた。なんでも、停電の影響で立体駐車場やコインパーキングの設備も止まってしまったために、ゲートが開かなかったり、フラップが動かなかったりしてクルマが出せないという報告が多数あるとのこと。したがって、現車が営業所に還ってきていないため、やりくりが効かない状況だったようだ。ただ、道内の予約受付が再開されたのは12日からと、想定よりも早く再設定が可能となったのはありがたかった。

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