ちょっと涼しい祖父の話を
少し涼しくなった。気温は29℃...。ちょっと前までは外に出れなかった気温だ。
今日はちょっと心温まる、涼しい話を。
祖父の習慣
私の祖父は庭仕事が好きであったと思う。夏は暑いので、朝早くに外に出て、連続テレビ小説が流れる頃には家に帰って来た。
足が悪い祖父はよく外に出ては、「やれイタヨーそれイタヨー」と言いながら帰って来た。
そこから夕方の4時くらいまでは昼寝をしたり新聞を読んだり、黙想したりして過ごしていた。趣味のようなモノはなかった。
日が暮れると、祖父は痛む足を引きずって家の全ての窓を鍵閉めして廻った。大正時代に建てられてから建て増しに建て増しを重ねて、ずいぶん広い平屋である。「やーれやれ、やれやれヨー」と言いながら廻った。
ちょっと昔の窓で、二重ロックをかける時はカチーンという大きな音がする。鍵をかける時は、音ですぐに分かった。
私が先回りして「もうこっちは鍵閉めたよー」と言うと、「そうかー」と言った。「年頃の娘(玉虫妹)がおるんじゃけー、ちゃんと閉めんにゃならん」というのは晩年の口癖であった。
回想
ある日の事であった。日が暮れて私が風呂の支度をしていると、家の一番広い、庭に面している窓の前に、祖父が懐中電灯を持ってボーッと立っている。
私が「どねーかしたか」と言って近づくと、祖父が窓の正面を指指して、「あれァなにか?」という。
「なんか光っちょるで、誰かおるんじゃろう」
私が見ても、暗くて何も見えない。
「じーちゃん、懐中電灯の灯りが反射しちょるんじゃないか」と聞くと
「いんや」と答えた。
「じゃあ信号じゃないか?」と尋ねると
「信号じゃァなかろうで」と。
祖父は「やっぱりありゃァヒトじゃ、動いちょる。」
私がそうだろうかと暫く祖父と様子をうかがった。
暫くすると祖父は「はー行った(もう行った)。ありゃなんじゃったんじゃろうか」と言って、 おかしいでーとボヤキながら別の窓を閉めに行った。
祖父には私には見えていないナニかが見えていたのだろう。それが幻覚なのか、あやかしの類いなのかは分からない。ただ本当に人間ではなかったのだと思う。
先日
先日に帰省したのは祖父の5回忌に合わせてであった。祖母と話をして盛り上がり、少し病気に影響が出そうだったので早めに布団に入った。
私の部屋は南側の庭に最も近く、ほとんど独立している。しかしトイレが隣にあるため、人通りは激しい。
布団に入ってからウトウトし始めた。
暫くすると足音が聞こえてくる。最初は母親であろうと思ったが、どうも変だ。
両足を引きずるように、そして力強く、どしんどしんと響き渡る音であった。
そして「やーれやれイタヨーやれイタヨー」と聞き覚えのある声が聞こえてきた。
寝ぼけて(なんだじーちゃんじゃないか...)と思ったが、よくよくおかしい。
だんだん意識がはっきりして、少し怖くなった。
亡くなった祖父が、霊になっても家を案じて鍵を確認して廻っているのであろう。
私は布団の中から小さな声で「あー...じーちゃん、もうええよー」と声をあげると「よっこらよっこら...」と返ってきた。どうも力がない。
そこで私はいつものように「じーちゃん、こっちはもう閉めたケーもうええよー」と今度は大きな声で言ってみた。
すると足音はピタッと止まり「そうか、そうか...」という声が聞こえて、以降静かになった。
本当に霊だったか、それとも夢の中での出来事か、私には分からない。
けれども祖父が霊感強かった事を考えると、本当に霊になってしまったのではと考えてしまう。
インターネットを渡り歩いてまだ6年、色々なカテゴリを楽しみ、「消費者」として生きています。 そんな文化の消費者の毎日思ったことアレコレを書いていきます。雑記。