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2019.05.12 湘南ベルマーレ vs 大分トリニータ @BMWスタジアム平塚 ~サポーターの歓声と悲鳴を背に、まばゆい輝きを放つ、最後尾のテクニシャン~

限られた予算の中で、確固たる戦術と巧みな用兵、そして何より選手の育成に長けた監督に長期政権を託し、チーム力の底上げを地道に着実に進めてきた両チーム。共に魅力的な攻撃サッカーを掲げた、似た者同士の一戦です。

そしてこの両チームには、お互いに縁のある選手が在籍していました。大分には元湘南の高山薫と三竿雄斗、湘南には大分ユース出身の梅崎司。

さらに言うなら私にとって、大分のオナイウ阿道と伊藤涼太郎、湘南の梅崎と岡本拓也と武富孝介そして曹貴裁監督。浦和にゆかりの多い選手が多く在籍する、もはやどっちを応援していいものやら、という顔ぶれの試合です。

平塚に向かう前、ちょっと寄り道で鎌倉観光を。

鎌倉唯一の尼寺である英勝寺。鎌倉駅から歩いて10分ちょっと。決して広くはない境内に、数々の見所がキュッ!と押し込まれた、まさに時間がない時にはぴったりの観光地です。

白いフジ棚が設けられた書院。奥には竹林が見えます。

英勝寺の隣にある寿福寺から住宅地に通じる、素掘りの通路。

さて、いよいよBMWスタジアムへと移動します。スタジアムへは平塚駅から直通バスで10分程度、歩いても30分前後で到着します。

ちょうどバスの降車場の目の前に、まさに見頃のバラ園がありました。

BMWスタジアムのある平塚市総合公園は、開放感があって緑の多い、とても雰囲気の良い都市型公園です。その公園の一角に、列をなして並ぶ屋台の数々…。J1リーグでも屈指のスタジアムグルメと言われる、ベルマーレフードパークの壮観な光景です。

買ってみました。

生地にも餡にもみかんを練りこんだ「湘南みかんぱん」と、とろ〜りチーズと濃厚な潮の香りが最高すぎる「釜揚げしらすホットサンド」。いけてるぜ!

日曜日の16時試合開始という、大分アウエー組にはやや厳しい時間かと思われましたが、トリニータユニを着た人も多く買い求めている光景…いや、ちょっと多過ぎない?だってもう試合開始15分前切ってるよ?大丈夫なの?

なんとBMWスタはトイレ設備などの関係で再入場可能。しかもフードパークがアウエー席に近い箇所にあるので、ゲーム開始直前までグルメを楽しむことができます。アウエー客に対しスタグルの隔離措置を施すチームすら珍しくない中、素晴らしいホスピタリティです。いいぞベルマーレ!

スタジアムに入ると、デーンデンデンデデンデン、とエヴァンゲリオンの使徒みたいなBGMと共に、スタジアムDJさんがアウエーチームの選手紹介。高山、三竿の両選手を紹介する時にはたっぷりと間を置き、リスペクトの意を表してくれます。

そして、梅崎選手の紹介の時には、大分サポーターが一斉に拍手。

この試合、大分はDFの高畑とMFの島川という、最近の試合で徐々にチームに組み込まれつつある新戦力に加えて、さらにもう一人、MFでレギュラーの前田に変えて、長谷川を起用してきました。長いJ1の試合、チーム力の底上げとして新戦力の発掘を絶やすわけにはいきません。

試合開始とともに、湘南は前線から猛烈なプレスを仕掛けてきます。大分はいつものように、後方で左右にパスを回して凌ぎつつ、隙あらば前へボールを向けようとするのですが、湘南の連携が取れた守備に封じられます。湘南の前線には豊富な運動量と巧みなドリブルを要する選手が揃い、ボールを奪うなりドリブルで大分ゴールに向けて一気に運びます。大分はこの攻撃に対応仕切れず、前半一杯苦しめられることになります。

湘南の選手がドリブルに入ると、マークする一人がそれについていく。本来ならそれにもう一人なり二人なりでカバーに行きたいところですが、距離感よく湘南の選手が複数、近くを疾走しているのでそれができない。なんとかボールを奪ってもすぐさま取られた選手がプレスに来る、パスで交そうにも、周辺の味方の近くには湘南の選手が張り付いていて、個人で引き剥がすしかない…。結果、大分の選手は自慢の連携がままならず、湘南の運動量により強制的に、個人対個人の技量勝負の様な、過酷な状況に晒されます。本来の大分のプレーではない苦し紛れのクリアや、対応が遅れてのファウルが増加し、ゴール近辺での相手のセットプレーが続く展開になりました。

梅ちゃんのFK。ボールはポスト直撃。

その中で、華麗な足技で相手のマークを外す一人の選手の活躍が際立ってきます。

誰あろう、GKの高木選手、その人です。

ピッチ上のあらゆる箇所で一対一の激突が繰り広げられている中、基本としてマークについている選手がいない、その優位性をフルに活用して、ボールの処理に四苦八苦している味方のボールを受け取る。当然、猛烈な勢いで迫る湘南の選手を、巧みな足技を絡めつつ交わすことで、「そのことにより、必ずフリーになる一人の味方選手」を利用して局面を打開する。もしかしたら前半、大分の選手で最も足技のテクニックを披露したのは、他ならぬ高木選手だったのかもしれません。

スポンサー様から《ボランチキーパー》という呼び名さえいただく高木選手の、まさに面目躍如ですが、彼のすぐ後ろでその光景を眺めている大分サポにとっては本当に心臓に悪い。

なにせ彼がほんのわずかでもミスをすれば、その瞬間にゴールを割られることは確実。あれだけのプレッシャーを受けながら無闇にボールを蹴りだすことをせず、味方へ繋ぐことに拘り、度重なるセットプレーでも恐れることなくどんどん前へと飛び出していく…。まさに圧巻という他ない、前半のプレーぶりでした。

ハーフタイム。湘南の御老公御一行様がトラックを一周。モニターでは「湘南乃風」みたいなちょっと怖いヒップホップな人たちが自転車マナーの大切さを伝えるリリックをアピっていたのですが、最後に表れた素顔が曹貴裁監督以下、湘南選手だった時の衝撃たるや。

後半、戦術の微調整を果たした大分が、カウンターの頻度を増やします。受け身に回りすぎていた中盤が前に出ると、湘南の高い両サイド裏のスペースを狙える様になり、そこに藤本とオナイウが走り出します。そして先制点は、まさにそのスタイルから生まれました。

中盤で走り回っていた島川が前方のフリースペースへボールを蹴り出す。それを目掛けて藤本と相手選手が駆け寄る中で激しく体をぶつけ合います。お互い大きく体勢を崩しますが、藤本選手が粘り立て直し、相手を引き剥がします。ボールに追いついたそのタイミングを狙うかの様に、後方からスライディングでボールを狙うもう一人の選手を、落ち着いたフェイントで交わし、腰を強くひねってキーパーの逆を狙うシュート!

まさにストライカー!というべき見事なプレーで、得点ランキングトップに並ぶ今期7点目を挙げます。

点を取られた湘南は、なおも激しいプレス&チャージを繰り広げますが、最初の交代は梅崎に変えて、長身FWの指宿。前半に続発したセットプレーを活かせなかった事への対応策でもあったのでしょう。大分は高山に変えて三竿を投入、その一方で湘南はさらに武富から中川、鈴木に変えて古林と、運動量を絶やさない交代を立て続けに行いますが、試合は前半に比べるとやや落ち着いた印象となりました。ポゼッション率で大分が回復すると、守備での上下動による消耗が激しい湘南にはやはり苦しい展開。大分は丸谷、さらにリーグ初出場となる岡野を投入し、守備を固める一方で、カウンターで大きく前に飛び出したボールで藤本やオナイウが立て続けにゴールを狙いますが、そこは湘南の武蔵坊弁慶、GK秋元が立ちはだかります。結果といてこの試合はまさしく、両GKの活躍が試合を引き締めた、そういう内容でした。

終盤になるとカウンターのチャンスでも大分は無理をせず、相手陣地でもボール回しでの時間稼ぎ、いわゆる「鹿島り」を行いますが、この鹿嶋りという奴、やられているときは心底ムカついて罵詈雑言を投げつけずにはいられないのですが、やってみる側になると本当に難しい(笑)。わずかなミスで相手にボールを渡し、しかも結構な人数が敵陣地に残ってしまう状態なので、たちまちカウンターを浴びて冷や汗をかくことも珍しくありません。そう思うと鹿島は大したものです。

それでもやっぱり、大嫌いなわけですが(笑)。

結局試合はそのまま1-0で終了。大分、6戦負けなしの連勝で3位をキープです。

サポーター挨拶時、大活躍の高木選手の前でパフォーマンスをする、初先発の長谷川選手。この後…

ヒーローインタビューを終えて遅れてやってきた藤本選手、後方から不意打ちで水をバシャー!

最後は二人仲良くLTポーズ。長谷川選手は全くLにもTにもなってませんが。

相手のマークも厳しくなり、得点が途切れていた藤本選手に久しぶりのゴール。新戦力も機能し、大分は好調のまま、次節は監督交代に揺れる清水、その後はいよいよ、名古屋、F東京、川崎という、上位陣3連戦が待ち受けています。ここでどれだけ勝ち点を取れるか、それが大分の今後を決定づけることは間違い無いでしょう。今年のJ1を席巻する大分旋風。その勢いはどこまで本物なのか。不安よりも期待の大きい、充実したチーム状態のまま、その時を迎えることができそうです。

そして今週金曜日に湘南が戦う相手は浦和。勝てるかなあ…今の浦和にこのプレスを剥がす余裕があるかなあ…

こちらは正直、期待より不安の方が大きいですね(泣笑)。


最後に。

湘南サポーターによる、世代別代表に選ばれた齊藤未月、鈴木冬一選手に向けたメッセージ。

湘南サポーターに挨拶に向かう高山(黒ウェア姿)と三竿の両選手。

二人に向けられた垂れ幕。

二人が退いたタイミングで、私もスタジアムを離れたのですが、どうやらさらにこの後、梅崎選手も大分サポーターに挨拶に来てくれたそうです。

いやさすがに遅いよ梅ちゃん!

更新は不定期ですので、気長に待っていただけると幸いです。Jリーグのサポーターの方はどこのチームでも大歓迎。煽り合いではなくゆるいノリで楽しめたらいいなと思っています。