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2019.05.17 浦和レッズ vs 湘南ベルマーレ@埼玉スタジアム2002 ~紛れ込んだセレブの世界で目撃した、あってはならない光景~

先週の湘南ー大分戦をアウエー観戦、そして来たる21日にはACLの予選突破を懸けた大一番。試合観戦が立て続けとなり、その間に挟まれる格好になったこの一戦。見に行くかどうか迷っていたのですが、観戦を決定づけたのは、職場帰りのツイッターで見た、この日の先発メンバーの顔ぶれ。

先発に阿部勇樹の復帰、そして柴戸と萩原の若手起用、そして控えにはルーキー岩武に山田直輝、茂木が含まれるという、ACLを踏まえた大胆なターンオーバー。普段出場機会に恵まれぬこのメンバーが、一体どのような試合を見せてくれるのか? その期待を高ぶらせ、埼玉スタジアムへと向かいます。

南広場ではワンピースとのコラボイベントが行われていました。

綺麗に見える月の下、埼玉高速鉄道延伸署名活動も、この日から始まりました。埼スタへの利便性向上のため、今後、ホームにお越しの方は、ぜひご協力を。

当日券を購入しようとチケット売り場に向かうと、その手前で、御年配の方に声をかけられます。「あの、お一人ですか?」「は、はい」「実は、チケットが一枚余ってまして…」そうやら、お連れの方が急に来られなくなった様子。どう見てもダフ屋には見えないそのお方のお誘いに乗って、普段は行けぬSA席にて、大幅ディスカウントで観戦することとなりました。ありがたい限り。

北側応援席からすぐ近くの光景に、おお、これはいい場所だと喜んでいたのですが、この位置であるが故に、あの事件を間近で見るはめに…。

先週の大分戦でまざまざと見せつけられた、湘南の強烈な前プレス。果たして浦和の守備陣が耐えきれることができるのか、それこそがこの試合の注文点だと思っていましたが、試合開始から見られた光景は、それとはやや様相が異なっておりました。

大分戦での湘南のプレスは、連携の整っている大分の最終ラインを散々苦しめたように、最前線の位置でフルに圧力がかかる設定になっていました。それに対して、浦和は中盤に配置された荻原と柴戸の若手勢の勢いをうまく利用して、試合の重要区を自軍ゴール近くから引き剥がし、中盤でのボールの奪い合いに持ち込むことに成功します。

もとより湘南相手では連携では後れを取る浦和。普段とは違うメンバーではそれも尚更でありましたが、個人技に長けたメンバー揃いの優位性をフルに生かし、五分の状態に持ち込みます。奪ったボールを如何に手際よくゴール前まで持っていくかの攻防を、先に制したのは浦和でした。

前半22分、宇賀沢が前に走るマルティノスへパス。右サイドを縦に駆け抜けたマルティノスが、中央の柴戸へ折り返すと、柴戸が前方の長澤に巧みなワンタッチスルーパス。長澤がそれを見事なターンからキーパーの腕を弾きながらゴールに突き刺さる、豪快なシュートを決めます。

相変わらず、敵を正面に迎えた状態でのプレーがぱっと見で不器用過ぎるマルティネスですが、この日は中盤の選手の運動量の多さに大いに助けられ、生じたフリースペースで躍動します。先制点から間もない25分。相手のミスからボールを奪ったマルティノスが中央を疾走。自らシュートを打つ素振りを見せながら、自分の前方をオフサイドラインを見抜きながら走るアンドリュー・ナバウトに、絶妙なタイミングでラストパス。ナバウトはこれを冷静なタッチでゴールに流し込みます。

冷静に試合を語れるとするなら、この波に乗っている時間帯、他にもあったチャンスを生かしきれなかったことが、試合結果に大きく影響しました。

そしてあの31分を迎えます。

浦和の攻勢を受け、湘南が自らも中盤に選手を集め、敵の背後を狙ったパスでゴールを奪おうと適応していきます。その形、FW登録でありながら中央の位置でボールを奪った梅崎のスルーパスに反応した高畑選手が浦和DFの圧力にも負けずにパワフルなミドルシュート。これが左ポスト内側に当たり、跳ね返りが右サイドネットに飛び込むゴールとなります…いや、なるはずでした。

浦和レッズサポーターの陣取る、北側ゴールの目前で起きた光景です。誰もがその状況を理解していました。「やられたッ!」という一拍の間と、「これからだこれから!」と選手を鼓舞する応援の中、ピッチ上で奇妙な光景が展開されます。

おそらく、北側サポで、状況を把握できた人は皆無だったでしょう。明らかにゴールインされた後に、プレーが続行されている。

露骨に躊躇を漂わせ、不自然な挙動のまま相手ゴールにカウンターの形で走る浦和の前線、そしてナバウトが相手GKと接触してプレーが止まるまで、スタジアムを包んでいたのは、経験のない混乱の空気でした。

自分はミスジャッジとすら思いませんでした。自分の見た席からは明らかすぎるほどゴールインでしたから。

自分の気づかなかった理由…シュート前にオフサイドなりファウルなりがあって、それが理由だと思いました。どうやらそうではないと気付いた時、湘南の選手や監督らが猛抗議している時には、周囲のお客さん同士で会話が盛んに繰り広げられます。「今のは入っていたよねえ」「これはないよ、湘南が気の毒だ」「あれが見えてなかったってことがあるの?」

自分にチケットを譲ってくれた人もそうであったように、周囲の席の座る人は皆、年間シーズンパスを購入している人たちでした。SAの年間指定席を購入できる財力をお持ちの、見知った者同士の顔ぶれです。なんとなく、高級住宅地の井戸端会議に紛れ込んだような、場違いな気配を感じなくもありません。いや実際はそんな僻み根性を出す必要なかったですけどね。いい人たちばかりでしたし。

湘南の猛抗議の影響で前半アディショナルタイム、6分。

悲願であったに違いないリーグ戦初得点を挙げたナバウトが、この際のキーパーとの接触で負傷、怪我での長期離脱をしていたファブリシオが交代で投入した後も、スタジアムの雰囲気は異様なまま、前半は終了します。

後半、湘南はDFの大野に変えてMF菊池を投入。試合の重要拠点となった中盤の攻撃力を強化しようという意図があったのでしょう。

いや、そういう理屈以前に、湘南はこの試合、絶対に落とさないという殺気を放って後半に入りました。

それはサポーターも変わりません。金曜夜にも関わらず多く駆けつけた湘南サポーターは、後半も全身全霊を込めた声援を送ります。先週の大分戦では、割と隙間の多い、試合内容に即した冷静なコールという印象だった湘南のサポーターですが、今は煮え滾る怒気を込め、明らかに先週よりもテンポの速いその荒ぶる歌声は、圧倒的に数に勝る浦和サポーターの声に、真っ向から立ち向かいます。

その声に乗せられるかのように、湘南の選手が次々と浦和に襲い掛かります。後半開始早々の47分には、投入された菊池選手がいきなり得点。それ以降も、湘南はペース配分を度外視したような運動量で走り回り、ゲームのペースを力任せにもぎ取ります。

それに対し、浦和も必死で立ち向かっていました。連携に劣る分、どうしても無駄な走力が多く、運動量勝負に持ち込まれると分が悪い中、湘南の攻勢を耐え抜き、まだ万全ではない体調で、ポストプレーを中心に踏ん張るファブリシオを軸に、幾度もカウンターを仕掛けます。90分の試合経験が乏しい選手が多い中、この異常と言っていい試合展開の中、よく耐えていました。

76分、マルティノスに変わって山田直輝が今季初登場。左サイドのリンクマンとして奮闘しますが、その3分後、またも菊池選手に決められ、ついに終盤、同点に追いつかれてしまいます。

なおも攻め続ける湘南と、勝ち越すために攻めに出ざるを得ない浦和。この時点で、試合はほぼコントロールできない状況になりました。この状況になる以前に、ゲームを落ち着かせる存在がいなかったというのが、今の浦和なのでしょう。86分には長澤に変えてドリブラー汰木を投入。ここに来てもなお、お互いがカウンターを撃ち合う壮絶な試合。熱戦であるのは間違いないですが、誰一人として心から楽しむことができない、虚しさを湛えた激闘。

その結末は、劇的でありながら、どこか必然的でもありました。浦和の攻撃を凌いでからの、湘南の乾坤一擲、残り時間0秒のカウンター。

2点差からの大逆転での敗戦。狂喜乱舞する湘南の選手スタッフとサポーターを見つめながら、ただ呆然となるしかない浦和のサポーター。

顔見知り同士の周囲のお客さんが挨拶を交わしながら、少しずつ席を離れます。自分にチケットを分けてくれた紳士も、試合途中からは顔をしかめっきり、試合終了早々に帰っていきました。

この試合に収穫が無かったとは思いません。あの時間までの浦和は、普段とは違う選手でありながら意図されたプレーを表現できていましたし、鬼気迫る湘南相手によく踏ん張ってもいました。

しかし、この結末はあまりにも痛い。

浦和はこれでリーグ戦3連敗。勝敗が5勝5敗で並び(2分け)、首位を走るFC東京との差は13(5/18終了時)にも開きました。そして何より、終盤でのミスが決定的となった磐田戦、完全に力負けした名古屋戦と、ダメージの大きな敗戦が続いています。ターンオーバーで外から見ていたレギュラー陣は、この試合に何を思うのか。この雰囲気を一蹴するような勝利を、わずか3日後に迫った北京国安戦に果たすことができるのか。

今期最悪の雰囲気の中、浦和レッズはACLグループリーグ突破を賭けた大一番に臨む事となりました。


ではここで、🎵今節のスタグルコーナー!(←カラ元気)

なぜか出店していた、V・ファーレン長崎のスポンサー…というかサポーターとしておなじみ岩崎本舗様の角煮バーガー。間違いなしの美味しさ。

北側ゲート常連さんにはお馴染みなのでしょうか。埼玉県産自粉を使った牛肉うどん。讃岐系とは異なる歯ごたえで、腹持ちの良さが応援する人にとってはありがたい一品。

ハーフタイムに、自分の座る観客席周辺の人たちからおすそ分けでいただいたお菓子いろいろ。見慣れぬおっさんがいきなり現れても親切にしていただき、浦和の得点シーンでは大喜びでハイタッチを交わしてくださった皆様、本当にありがとうございました。

更新は不定期ですので、気長に待っていただけると幸いです。Jリーグのサポーターの方はどこのチームでも大歓迎。煽り合いではなくゆるいノリで楽しめたらいいなと思っています。