見出し画像

連載小説:How to 正しいsex.(重複生活)5

1話目へのリンクです!

4話のリンクです!

その、小さなワンルームにしては、さすがに二人でこしらえた。もちろん金はすべて俺が出している。テーマはまあ、性に集中しやすくw、眠りやすく、長時間そこで過ごしても退屈しにくく、まあ、くつろげる部屋っていうものだった。

当然メインはベッドとなり、ソファと、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、ちょっとした棚、ちゃちでもなく、それほど高級でもないっていうステレオ…それしか置いていない。あ、あと、センターテーブルだ。大きめの。

それらを買う時、家電はヨドバシカメラの新生活セットみたいなやつを買った。ベッドは大塚家具でこそないけれど、老舗の家具屋で買ったダブルベッドだ。棚もそこで買った。ベッドは少し高いものを買ったが、棚はシンプルな安いものを買った。二人でこしらえたと言ったのは、それらを一応っていう雰囲気で、二人で選びに店に行って買ったのだけど、彼女が口を出したのは、家電は白がよいということと、ソファに対してだった。俺は、2人が並んだりしても窮屈にならない、最低でも3人掛けだったり、コーナーソファを買おうとしていたのだが、ゆみこが言ったのは、

「ラブホの代わりなのよ。ラブホっぽくていいじゃない」っていうもので、そこで2人掛けの小さくコンパクトなソファを買おうとしたところ、突然さっき言った意を翻し、けれどそれも俺の意に沿ったものでもない、一人がけのソファを2つ買おうと言うのだった。あとそういえばもう一つあった。ベッドカバーだ。ゆみこは灰色がいいとか、灰色に近いブルーがいいとか、白っぽい色がいいとかそんな注文を付けた。理想は白に近い灰色のようにもブルーのようにも見えるシンプルなベッドカバーが欲しいらしかった。まあ、理想通りのものは短い時間では見つからないし、しかもゆみこはかなりそれに拘っているようなのに、綿密に時間をかけて探そうという気持ちにはなれないらしく、サーっとベッドのカバーが置いてある一列を目視しながら、たまにサンプルに触れながら往復し、その往復の往路に、グレーの寒そうな何の柄もない綿のベッドカバーを手に取ると、これにしない?と言った。

買い物をしながら、俺は俺好みのワンルームにしたいなんてことさら考えちゃいなかったし、なるべくゆみこの意を汲んでやろうと思っていたのに、全体的にそういった買いものをするとき、ゆみこは変に焦っているというか急いでいる風に見えた。まあ、俺の気のせいかもしれない。

もしくは…ゆみこの買い物っていうのはそういうものなのかもしれない。長くそのワンルームを借りているが、二人でスーパーに食材を買いに行ったのは数回しかない気がする。その時もまるで、機嫌が悪いかのようにゆみこはむすっと黙っていて例えばセロリを買うにしても、セロリの大群の中から、どのセロリが鮮度がいいとか、そんな吟味もすることもなく、パッと手に取ったかと思うと、ショッピングカートに入れてしまうのだ。

それなのに、本当に数えるほどのことだけど、ゆみこが寝てしまったけれど、俺がステレオで音楽を聴きながら、本なんて読んでいると、ゆみこがのっそり起きて、

「U、アイス食べたい。セブン行こう」

などと言ったことがあった。二人でセブンまで4,5分の道を夜中に歩く。夏であっても冬であってもそれなりの適した格好で。ゆみこは鼻歌を道中絶やさなかったり、明るすぎるセブンの店内をしばらくの間、歩き回って、「ねえねえ、こんなお菓子あるんだねえ」とか、「凍った葡萄って溶けかけがいいよね」とか、「ミカンの入ったミルク寒天ってイミフにおいしいわよね」とか、いつもより多弁で明かるく、いつもは薄い雰囲気をまとうゆみこが華やかに見えた。一言でいうなら、とても楽しそうに見えた。そして、ラムレーズンだとか、チョコミントだとか、ガリガリ君だとか、バニラのアイスクリームだとか…そんな割とスタンダードなアイスを選んで会計し、部屋へと帰るとき、一瞬、俺の手を握り、笑ったかと思うと、すぐに手を離し、自分のポケットに手を突っ込んだことがあったのを何となく覚えている。

部屋に帰っても、小さなころ花火大会から家に帰っても、その花火大会の疲れとともに、その花火の匂いがまるで鼻に残っているみたいに余韻を体にまとっていたように、ゆみこからもセブンまでの鼻歌や、セブンの店内の華やぎの余韻が体から匂っていて、げらげらと大笑いするっていうわけでもないのだが、愉快な雰囲気が寒く暗い色調のワンルームにも漂っていて、ゆみこはおいしそうにアイスを食べて、リステリンでうがいをすると、また眠ってしまうのだが、その時に、

「ねえ、Uももう寝ない?別に無理にとは言わないけど。それかさ、もう一回しよ」

と真剣に訴えるような目をしつつ口許だけ笑わせて、俺を見て言い、俺はゆみこの着ていたパジャマのズボンとパンツを引きずり下ろし、少し触ってみると、たっぷりと濡れていて、挿入して発射し、ゆみこの隣で裸で寝てしまうのだった。ゆみこは少しだけ笑いながら眠っている。

6話へのリンクです!

小説を書きながら一人暮らしをしています。お金を嫌えばお金に嫌われる。貯金額という相対的幸福には興味はありませんが、不便は大変困るのです。 ぜひ応援よろしくお願いします!