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連載小説:How to 正しいsex.(重複生活)3

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その、
「ゆみこ、俺、俺のチンチン、ゆみこのまんこに入れたいな」
という言葉は、言えた、という感じが俺の中にはあった。けれど、それがゆみこに伝わっているのか、正確に伝わっているのか、それは別の問題だ。

その言葉を伝えたのはカカオだった。カカオでのやり取りの中で、俺は何の脈略もなく、話の流れも無視して、その言葉を言ってしまったんだ。まるで、何かの発作のように。

けれど、俺はゆみこのカカオのテキストに好感を持っていた。大体の人間性のようなものが、テキストに現れるって俺は思っているし、ゆみこに至っては、その人っていうのは言葉とテキストがすべてだわ、と言い切っている。

ゆみこの反応っていうのは、

「なにそれw」
まずはそういったもので、次に、
「入れてください」
というものだった。

俺は、言えた、言いえた、以上の感触をその時に感じたような気もした。そうだ、どうやら、ゆみこに伝わったっていう。

けれど、俺はどこかで考えていた。脳のどこかが活性化し、どこかが不活性化している、そんな気分があったんだ。俺のその時の気分っていうのは、会社で責任の重い仕事を完遂させようと一時一時に冷静な判断を迫られているような状況に置かれている気分とは全く違ったわけだし、俺はみんなが帰ってしまった会社に一人残り、パソコンでカカオをやっていた。その日の仕事はすべて終えていたし、夕飯はUberでいきなりステーキを食べた後だったし、あとは帰って風呂に入り、音楽を聴いたりして眠るだけだったから、「冷静に瞬時に判断する」という部分は不活性な状態で、「ストレスを感じ緊張している」という気分とは正反対の「くつろいだ、安心した」を感じる部分が活性化している状態だ。俺が、昼間仕事上で、ビッシバッシと冷静に正確な状況の判断ができている状態ではないし、その正反対って言えると思うのだ。

つまり…長く言葉を連ねてしまったがw、俺は、言えた、言いえた、が俺の本当の気持ちであるのは確かだけれど、それがゆみこに「正確に伝わっている」という判断になんの…、自信も抱けなかった。つまり、俺は俺に自信が全くなかった。

「ゆみこ、今度の日曜、ゆみこの部屋に行ってもええ?」

「うん、来てください」

帰ってすぐに俺はオナニーをした。いつもいつも疲れてる。仕事の責任なら重すぎる。いつもいつもそこから逃れたいっていうのは本音だ。責任を負うなんて、俺に向いているんだろうか?寝る前に頭を掻きむしりたくなる時がある。食っていく。それならば、責任を伴う。指図されたくないし命令なんてまっぴらごめんだ。それなら、責任は過大なものとなる。とてもとても過大な。

俺は人からの信頼関係を結ぶと、それが延々と続くほうだ。いっときは友だちも多かった。いっときは俺だって大酒のみだった。しかし、よくわかったんだ。俺も含めてではないんだ。俺はそういう人間じゃない。けど、たいていの大酒のみは大言壮語で、それを信用し、安心したとき、あっさりと裏切られる。そんなことが相次いだ。俺は酒を一切飲まなくなったっていうわけではないけれど、人の裏切りには敏感なのか、そういったクラブやバーに行って、大酒を飲むという遊びを一切やめた。
会社では俺の付き合いの悪さは有名なんだろう。会社の表面的な付き合いしかない人間との「飲み会」というもの、つまりそれは「忘年会」とか「新年会」を含めてだが、それらは時間の無駄、つまり何ら合理的ではないと思っていたし、そんなものに出席したことは1度たりともない。もちろん接待ではもともとある末っ子らしいコミュニケーション能力を発揮もするし、本当は飲める方なのだから、飲めと言われた分は余さず飲むが。

つまり表面的とか薄っぺらい人間関係に何の興味も俺は抱かない。しかし、人が嫌いっていう部分もあるんだけれど、信頼している人間を嫌いなわけではもちろんないし、その人のために労力を払うことを全く厭わない。そのせいなのか、知り合いから、ある会社の株を譲渡され、俺の今までの資産も注ぎ込んで会社も経営するようになった。それは成功し、いくつかのその系列の会社を経営もしている。

どんな大手に勤めようといつ倒産するのかなんてわからない時代だって俺は思っている。成功しているとか、していないなどに全くかかわらず。食い扶持は一つであるべきではない。それはリスクを伴うんだ。リスクとは金を得ることができなくなりうるというリスクだ。
それらが、俺の会社をいくつか経営し始めたときの口癖のようなもので、知人には、ある種説教じみていたかもしれないが、その説を展開していた。ゆみこにも、だ。

こんなことを思い出す。俺は知人に株式を譲渡され、資産も注ぎ込み、会社を始めるとき、ある種の気概も持ちつつ、しかしなんらかの照れのようなものも感じながら、カカオでその事実をゆみこに伝えた。すると、ゆみこの反応っていうのは、

「U、あんたまだ働きたいの?あんたも好きねえ―」
というもので、俺は、照れが加速するとでもいうのか、及び腰になり
「いや、知人に誘われてそれでさ…、まあ、流れっていうかさ…」
と続けたら、
「やるからには、がんばんなさい!!」
とゆみこは言い、俺は晴天の空に叫ぶような気持ちで思わず、
「ありがとう!!!」
と返してしまったんだ。

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小説を書きながら一人暮らしをしています。お金を嫌えばお金に嫌われる。貯金額という相対的幸福には興味はありませんが、不便は大変困るのです。 ぜひ応援よろしくお願いします!