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アメリカ大統領選に出馬した伝説的な泡沫候補

アメリカ大統領選挙は、アメリカのリーダーを決める大事な戦いであると同時に一種のお祭りのようなもので、毎回とんでもない泡沫候補が現れては、アメリカ人にネタを提供しているようです。 
自由と民主主義の牙城、アメリカのとんでもない泡沫候補を見てきましょう。


1. すべてのアメリカ国民にポニーを!

Image from Political clowns: Candidates whose campaigns made politics laughable, DAILY NEWS

2016年度の大統領戦に無所属で立候補予定のバーミン・シュープリームは、自分のことを「フレンドリーなファシスト主義者」と呼んでいます。確かに彼が抱げる政策は違う意味でやばいものです。

例えば「すべてのアメリカ人がポニー(小型の馬)を持てばアメリカ経済は好転する」というポニー経済論や、「エネルギー資源としてゾンビを活用する」というゾンビエネルギー論など、謎すぎる政策を次々と打ち出して市民を困惑させています。

ネタではなくて本気で大統領の椅子を狙っており、大統領選挙に毎回出馬し続けています。

オフィシャルFacebookページはこちらから

2. 緑の党にロック魂を注入する!

Image from 35 Years Ago Today, Jello Biafra Came In Fourth In the S.F. Mayoral Race, SF WEEKLY

パンク・ロック/ハード・コアバンド、デッド・ケネディーズは1978年に結成された老舗のバンドで、反体制の過激な歌で人気を博してきました。
ボーカルのジェロ・ビアフラは1979年から政治活動には参加してきましたが、2000年に「緑の党」の候補選に出馬。対立候補ラルフ・ネーダーが295票を獲得したのに対し、ビアフラはわずか10票。

それでもビアフラはネーダーの大統領戦に貢献し、2008年の選挙戦までネーダーのサポーターとして活動。ある時、同性愛擁護活動家から「なぜナダルは2000年の大統領選挙でアル・ゴアを支援しなかったのだ」と非難されると、ビアフラは「ゴアの妻、ティッパーがPMRC(Parents Music Resource Center:性的・暴力的な歌詞を取り締まる民間団体)で、ホモセクシャルの歌詞に反対しているのを知らないのか」と言って論破してしまったそうです。
現在はビアフラはネーダーのサポートをやめ、賃金問題に取り組んでいます。「緑の党にパンク・スピリットを注入して、ロックな党にするのだ」とのこと。

3. すべての政策は宇宙人からのお告げで決める

Image from Gabriel Green for President

1960年と1972年に大統領選に立候補したUFO研究家ガブリエル・グリーンは、これまで100回以上のUFOを目撃しており、火星や木星、ケンタウルス座アルファ星、プレアデス星団からやってきた宇宙人と交流があるそうです。

1960年の大統領選では、ジョン・F・ケネディとリチャード・ニクソン相手に選挙を戦いました(公式には候補者リストに載らなかった) 。彼は政策の全てを「宇宙の人々からのお告げ」を元に立案すると発表しました。これはだいぶヤバいヤツですね。南カルフォルニアで予備選挙を戦い、一部の人には熱狂的な人気を博しましたが、結局キャンペーンは継続困難になり選挙戦から撤退。1972年の選挙後に引退し、宇宙からのお告げを人々に告げる活動に従事していましたが、2001年に他界しました。

4. 対立候補をペロペロしちゃうわ!

Image from Electoral guerrilla theater, BEAUTIFUL TROUBLE

ジョアン・ジェット・ブラック(Joan Jett Blakk)は、シカゴで活躍したドラッグパフォーマー。いわゆる「オネエ」です。ニューヨークのLGBT団体"QUEER NATION"から立候補しました。
 1992年の時のスローガンは、

「ブッシュをペロペロしちゃうわ '92!(Lick Bush in '92!)」

で、1996年の時のスローガンは、

「スリック・ウィリーをペロペロしちゃうわ '96!(Lick Slick Willie in '96!)」

でした。とはいえ、完全にネタでやっているわけではなく、こうも言っています。

「アメリカは保険制度が未整備の世界で唯一の先進国よ。ジョークだわ」

世間的にはネタ的な候補という印象が強く、QUEER NATIONではより「本気で勝ちにいく候補」を擁立するのが課題なようです。 

5. 被選挙権のない15歳の少年の挑戦

ディーズ・ナッツは2016年の大統領選に立候補した人物です。
本名をブレイディー・オルソンと言い、なんとまだ15歳!アメリカ大統領選挙の被選挙権は35歳からなので、20年も早い。

にもかかわらず、2015年8月に行われた世論調査では、アイオワ州とノースカロライナ州え、共和党トランプ氏(40%)、民主党ヒラリー氏(38%)に次いで、9%の支持率を獲得してしまいました!

法的に出馬条件を満たしていないので、正式な立候補はできないのですが、にもかかわらず政治活動をする理由として少年は、「2大政党制にウンザリしており、システムに風穴を開けたい」ため。
草の根でこのような動きを支援する動きがあるのはアメリカの強いところですね。

6. ニャーの時は来たれり

2016年大統領選挙で、ネコが立候補しました。
名はリンバーブット・マッカビンス。ネコ。5歳。オス。

 スローガンは、「ニャーの時は来たれり(Meow Is the Time.)」

大統領候補者は「人間でなくてはならない」という規定はないので、ネコだからと言って出馬拒否されることはないようなのですが、問題は年齢。
被選挙権は35歳からなので、あと30年近くリンバーブット君には生きてもらわねばならないようです。

7. Nobody for President!

Image from  Nobody For PRESIDENT2016

もはや人でも生き物でもありません。
「Nobody For President(大統領を不在に)」というジョークは1940年代からありましたが、1976年に実際にこれをやってしまったのが、ウェイビー・グレイビーとカーティス・スパングラー。

「Nobody」を大統領候補者として擁立して選挙カーに乗せ、キャンペーンを行ったのでした。

彼らは最初にサンフランシスコのシビック・センター・プラザで支持者を集めて集会を開きました。選挙用のスポーツカーが登場し、トランクには木製の椅子が載っていましたが、当然ながら誰も座っていません。

集まった支持者は「Nobody」の登場に歓声を上げ、次々と質問を投げかけます。するとグレイビーはプラスチックでできた歯を取り出し、カチカチと上下させて支持者たちの国内問題や外交問題などの質問に答えていったそうです。

この「Nobody for President」キャンペーンは、その後ニューヨークにまで達して大好評を博し、11月2日の選挙日には無効票の42%に「Nobody」と書かれていました。大成功と言っていいのではないでしょうか。

 この「Nobody for President」キャンペーンは現在も存在し、グレイビーとスパングラーは「どっちにも入れたくない場合は、Nobodyに票を入れて欲しい」と呼びかけています。

まとめ

真面目なんだか本気なんだかよく分からない候補もいますね。

ただ、広大で多様な価値観を持つアメリカの人々で、もはや明確な垣根がなくなってきた民主党と共和党という2大政党政治を疑問視する人が大勢いるのは確かなようです。

確かに、現実的に執権力があるかとか、多くの支持を得られるかというと絶望的かもしれません。

しかし、このように泡沫候補が容認される社会というのは、まことに素晴らしいことではないですか。

参考・引用

10 Weirdest U.S. Presidential Candidates, ODDEE

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