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9歩目 『旨味の正体とは』

さて、前回の投稿では砂糖の甘みがいかに人間に及ぼす影響が大きいかというお話をしましたが、砂糖の甘みの他にも味覚として、酸味・塩味・苦味の3つがあげられますよね。
そして、五つ目の味覚として近年注目が集まっているのが「旨味」です。

酸味は人間が腐っているものを察知するための味覚だと言われており、塩味は生命の保持のために必要不可欠であるなど、それぞれの味覚には役割があります。
では、「旨味」の役割とはなんでしょう。

味覚としては曖昧な表現の「旨味」ですが、これは食べる人に情緒を与え、安心させる役割があると言われています。(松嶋啓介 著『最強「塩なし」料理論』より)
実際に、赤ちゃんが母乳を飲むのもこれと関連しています。目も見えず、耳も聞こえない赤ちゃんが母乳を飲むのは、それが本能であるからです。母乳から感じられる旨味で、赤ちゃんは安心感を得ているのですね。
「人を安心させる」このような旨味の情緒的価値は、より良い食生活を送るためになくてはならないものだと、私たちは考えています。

そもそも旨味とは、旨味成分から感じられる味覚のことを指し、主に発酵食品・昆布・かつお・青魚・乾燥キノコ類などをはじめとした様々なものに含まれています。
「だし」は皆さんが最も想像しやすい旨味の代表例だと思いますが、旨味成分は、主に植物性の食物に含まれるグルタミン酸、動物性の食物に含まれるイノシン酸、青魚などに含まれるグアニル酸、乾燥キノコ類に含まれるコハク酸からくるものです。

中でもグルタミン酸は、唾液にも含まれており、食べ物を摂取した際に感じる旨味成分(グルタミン酸)と、もともと唾液に存在していた旨味成分(グルタミン酸)がかけ合わさって、旨味の相乗効果が生まれます。
ですから、幼い頃のおばあちゃんやお母さんの言い伝えである「よく噛んで食べなさい」という言葉は本当で、噛めば噛むほど旨味成分が生み出されているのです。
科学的に証明されていない時代からこのようなことが言い伝えられているということは、本能的に旨味を感じる人が多かったことを暗示しているとも言えます。

前回の投稿でお話した通り、砂糖など脳に直接味の情報が伝わるような味覚は、人間の気分を不安定にさせます。
一方で旨味という味覚は素材そのものの味をゆっくり味わうことが大前提です。

コロナ禍によって、食生活がかなり変わった人も多いのではないでしょうか。
普段より少し時間をかけて食事をするようになった方、たくさんいらっしゃると思います。だからこそ、素材の味そのものをゆっくりと、時間をかけて味わっていただきたいです。
その時に感じる「おいしい」という感覚、きっとそれが「旨味」です。