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お守り代わりのスリーブレス

簡単に言うと、クレームと言う負の感情の塊を真正面から受け、上司から大したフォローなくけちょんけちょんに言われ、結果自信がボロクソになってしまった私が、FRAMEのスリーブレスの歌詞を見てドチャクソに泣き、SideMにまた人生を救われてしまった、そんなお話。

1・ぶつかり

今の仕事に就いてから一年。コロナ禍を受けて春先はとにかく仕事がなかったが、ようやく最近じわじわと仕事が忙しくなってきた。
これまでは思うように数字を出せていなかったけど、それもちまちまと積めるようになってきた。ほんの少ししか関われないものの、いろんな方の人生の手助けが出来て、つまらない自分でも、少しは力になれているだろうかと思うと、ちょっとだけ自信が持てるようになってきた。

そんな中でクレームを受けてしまった。

色々と原因はあるものの、全面的には私のあらゆる言動が悪いと言わざるを得ないものだった。
勿論、私だけが原因ではないし、色々な事情が絡まって一番残念な形になってしまったのだ。私だって何とかお客様の要望に応えられるよう、かなり食い下がった。
でも結局はだめだった。取引先の決定が全てだった。

だからこそ、結果を出せず、お客様の気分を害してしまったことにひどく落ち込んだし、裏切る形になってしまったことも心苦しく、心から謝罪した。何よりその日一日のお客様の気持ちを著しく損なわせてしまっただろうこと――それを考えると、とにかく辛かった。
更に雇用の心配もあった。今までの人生で一番好きな仕事で、一生懸命やっているつもりだが、残念ながら私は非正規の身分だ。このクレームが大きな問題に発展する可能性もある。そうなると契約更新は無いだろう。
そう考えるととてもではないが明るい気分にはなれず、次の日を迎えるのを恐れた。無心にひたすらモバエムのイベントを走り、UPCのptを積んだ。
深夜三時を迎えそうになっても、眠る気になれなかった。

自信が一気に地に堕ちた。そんな日だった。

2・しつぼう

上司が対応してくれたおかげで、何とか大事にならずには済んだ。
朝のミーティングでは、まあこれを今後に活かせ的な、次からは気をつけよう的な、よくある教育的訓示で終わったけど、その時の私が欲しい言葉ではなかった。

大雑把に言うと、「パニックになっていた私への配慮」と言うものが何一つなかったのだ。

クレームとは人の負の感情の塊である。怒りとか憎しみとか戸惑いとか。まあ大体は怒りだが、私はそれを電話上で受けた。
電話とは不思議な空間を作るもので、聴覚だけの舞台で互いの姿が見えないままやりとりする。
情報が少ない分、個々の感情はいっそ対面以上に際だつ。相手の姿が見えていれば少しの情状酌量も作動するかも知れないが、それがない。そうなるともう、感情に任せるしかない。抜き身の剣を振り回すも同然だ。
私はそれを振り回され斬り刻まれたというよりは、巨大なボールを顔面で受け止めてしまった感じである。いや、爆走するトラックに激突した、の方が近いかも知れない。
とにかくまあ、本当にびっくりするくらい動けなかった。無言になってしまった。おどかされた猫が目をまんまるくして硬直した後、猛スピードで逃げ去る、と言う光景を目にしたことを、読者の皆さんにも少なからずあるだろうが、渦中の私もちょうどそんな感じだった。
パニックだった。本当に。

上司はよく「お客様の気持ちになって考えろ」と指導する。
そう言うのに、私が今、クレームと言う負の感情の塊に真正面から激突し、傷ついていて、疲弊していて、自信を失っていて、誰かに優しくしてもらいたい、話を聞いてもらいたい、少し励ましてもらいたい――

そういった私の気持ちは「全く」汲んでくれないのだ、と理解してしまって、ものすごく気持ちが、すうっと冷めていった。
かんたんに言えば「失望」だ。「幻滅」にも近い。

会社の、同じチームの同僚に、言ってみれば一番身近な人にそうすることの出来ない人が、どうしてお客様に同じように出来ると言うのだろう?
私の気持ちなどどうでもいいのだと、ひどく孤独になった。
一方で、こう冷めてしまうくらい私は、今の職場と今のチームを信用し、信頼し、心を許していたことに気付く。
でも、それが裏切られたように感じて、この日も私は心に大きな切り傷を負った。

……書いていても、めっちゃ冷めている。反面教師にしよう、とすごく感じる。
起こしてしまったことはどうあれ、まずは、辛かったね、しんどかったね、大変だったね……そう言える人になりたい。私のこれは単なる甘えと感じる人もいるだろうけど、まずは、その人を労れる人になりたい。心から、そう感じる。

3・すくい

朝ミーティングが終わる頃に、「スリーブレスの歌詞を読もう」と、そう思った。
今の私に一番必要なものだと直感で感じたのだ。自分の中に精神の救急袋があって、私は無意識のうちにその袋の口を開いたのだろう。その時の私に一番必要なものとして、真っ先にスリーブレスが出てきた。そんな感じだった。
ミーティング終わり、はかばかしい返事も出来ないまま、見るからに落ち込んだ状態のまま、生気の失われた私はスマホを持ってお手洗いに行って、スリーブレスの歌詞を見た。

びっくり、した。
最初のフレーズを見ただけで、涙が溢れた。

うまい具合に自分コントロールしようなんて 焦らなくてもいいんだ

大粒の涙が、ぼとりとこぼれていった。
私が欲しかった言葉。まさにそれだった。
そのまま歌詞を追った。

まずはワンブレス
現状維持でいい
必死に歩いて結果 プラマイゼロの成果 現実は塩辛くても
頑張らなきゃ失くした かも知れない何かを
持っているの気付いてくれよ
そうだ ツーブレス
教えとくぜ
一旦停止だって進行過程
迷子の自信探そうぜ
どんなシチュエーション立っていたって
生まれてきた瞬間から
君の価値は眩しいんだ

歌詞が、びっくりするくらいに私の涙を流させる。
試聴が出た時から何度も聴いていた。当時からすごく救われる歌詞だと励まされた。お守りや薬のようだ。そう思ってきた。
スリーブレスに救われる沢山のPさんを見てきた。
「救済」そう呼ぶ人もいた。

私もそうだと、そうだと思っていたのに、その時初めて、ようやく、あまりにも大きい実感を持って、本当の意味でのスリーブレスの優しさと暖かさ――「救済」と呼ばれるに相応しいそれらを、やっと、やっと感じられた。
こんなに、心に受けた傷に寄り添ってくれるなんて。
だめだめな私を受け止めてくれて、息吹を吹き込んでくれるなんて。
疲弊した自信が、その鼓動が、少しずつ戻ってくるのを感じた。

孤独に寄り添い、まっすぐな優しさで勇気づけてくれる英雄さん。
不運や逆境に負けず、どんな時も明るく前向きに進んでいく龍くん。
沢山の人の笑顔のために、深くて温かな安心を与えてくれる信玄さん。

私はFRAMEのPではないけれど、FRAMEに出逢えてよかったと、そう思う。
この時は歌詞を見ただけだったけど、異なる背景を持ち、種類は違えど人を助ける仕事に就いていた三人が歌ったものを聴くことで、より深く、人の心を救ってくれると感じた。

祝福して(ほら)応援(して)いる
もうすぐ追い風が吹く(未来)いいかい?

自信は地に堕ちた。でも、救われた。
だからもう一度、飛ばしたい。
そのための追い風が吹くよ。
ここまで悪いことが続いた。嫌なことが多すぎたから、
きっと、追い風が吹くよ。
このフレーズにも、ぶわっと泣いた。

久しぶりに大げさに、がっつり、SideMに人生を救われた。そう感じた。
四年前、私がSideMを始めた時にも人生を救われたと感じたが、四年経ってもう一度、感じることが出来た。
私にとってSideMは、単なるアイマスのブランドを、アイドルコンテンツを越えている。
大げさではなく、よくあるオタクの妄言や幻覚でも何でもない。
一人の人間として言う。
本当に本当に、救済、なのだ。

SideMの多くの楽曲やアイドル達の言葉、特に「救済」と呼ばれるものの多くは、今の傷を、今の自分をまず、癒して包み込んでくれる。肯定してくれる。
とても健全な(時には健全過ぎて眩し過ぎる)自己&他己肯定が、SideMの大きな魅力であり、コンテンツの柱になっていると、一人のPとして思う。

けれどSideMのこうした大きな優しさや他己肯定は、会社・社会のような組織や共同体には、なかなか備わっていない。というか皆無に等しい。
だからみんな、SideMの曲やアイドル達の言葉をお守りやお薬のように大切に胸にしまうのだ。
そうして理不尽で不可解なものの多い人生に立ち向かっていくのだ。
私もようやく、それを、もっと深い意味で実感することが出来た。

その日からスリーブレスが、私にとってのお守りになった。
――オフィスに戻る私の顔には少しだけ、生気が戻ってきていた。

4・さいごに

いい加減長くなってきたのでこの辺で終わろうと思う。
この記事がきっかけになってスリーブレスを、FRAMEを、ひいてはSideMの他のユニットの楽曲や、ストーリーを、アイドル達の活躍や彼らの背景を知ってみたいと言う方が増えてくれたら、P冥利に尽きるというものです。
私の担当であるF-LAGSとAltessimoとLegendersもよろしくお願いします。

試聴はこちら。一曲目なので動画開始からすぐに始まります。

iTunesストアを始め、各種配信サイトでも購入出来ます。
是非フルで聴いてみてください。

スリーブレスは、SideMの曲の中でも一番精神の救命に適していると言うか……例えるならAEDとか人工呼吸と言ったもの。本当にヤバい時に、死線をさまよっている時に聴くべき曲だと思います。
この後に聴くとおすすめなのが、あくまで個人的なチョイスになりますが、もふもふえんの「伝えたいのはこんなきもち」で、少し元気になってきた時の起爆剤として適しているのが、同じく「救済」と呼ばれている「ミュージアムジカ」だと思います。
(ミュージアムジカは正直陽の気が強すぎるので、瀕死の時には逆効果のおそれがあると感じます)

傷ついた心に寄り添い、励ましてくれる歌詞を綴ってくれた真崎エリカさん。大いなる息吹と躍動を感じさせる楽曲を提供してくれた金子雄紀さん。力強くも暖かく優しい歌声で歌い上げてくれた英雄さん、龍くん、信玄さん、その三人を演じるくまちゃん、はまー、まっさん。本当に本当にありがとう。
辛い時には立ち止まって、スリーブレスを聴いて、また歩いていこうと思います。

今回はこれにてお開き。

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