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#05 スタッフ全員が創作を追求する、新たなモノづくり。

2018.06.01

そのショールに代表されるように、tamaki niimeの作品は年齢や性別・体型に縛られずに身にまとえるという自由さを表現し、国内外の様々な人々に支持され続けている。

理想的なモノづくりの環境であるShop&Labに多彩なスタッフが集まる中で、そこにプラスして今、これまでとは異なったクリエーションの可能性が芽生えようとしている。スタッフ各々が自由なアイデアを持ち寄り、能力を相乗させながら進める創作の試み。

「色にしてもカタチにしても、私だけじゃなくて、スタッフみんなが追い求めていかなくちゃいけない。」こう玉木は想いを語る。
tamaki niimeによる、新たなモノづくりへの挑戦について聞いてみた。


玉木新雌
「今の課題として、以前なら私が自分で染めて・自分で色を並べて・自分で織ってたから、自分の中で完成品を想像しながら染めから出来たわけですが、思い描いたものをさらに進化させようと、色糸を並べ織られてゆくべきところが分業化して、染めなら染めばかり担当するスタッフってなっちゃうと、人同士の繋がりがしっかりと出来てきちんとバトンが渡っていかなければ、更に面白いモノづくりにはならないなと。」

― スタッフ間のイメージの共有とかディスカッションみたいな事は?

玉木
「そこを今、すごくやっていて。ここをこうしたい、ここの色はこういう風にしてほしいという事が明確に伝わるように密にやり取りして、より面白いモノづくりをしていきたい。カタチに関するデザインをどんどん創っていきたいというところと、色は色で今までにないバリエーションを創ってゆきたいっていうのがあるから。スタッフみんな個人個人が、“創作家”みたいになってゆく感じになれば。」

酒井義範
「ある意味、“実験”やな。」

玉木
「だから閃いたらやってみる、っていうのをスタッフにも定着させて、本当にどんどんとアイデアが湧き出てくる、というような組織というかチームになるように、今グニュッって変えていってるところです。まだまだスタッフ皆、クリエーションというよりも生産に追われて必死になっているというのが現実なので、今年そこをグッと変えると。」

― 今年の大きなテーマですね。

玉木
「今進めているのが、週に一度プレゼンじゃないけど、何でも良いからアイデアを一枚の紙に書いて出すことで。それは色であってもカタチであっても、デザインや柄であっても良いし、自分が“あったらいいな”と思うものを、販売員もパートさんも含めてスタッフみんなが何かしらひとつずつ書く。それをたたき台にしてデザインチームが、じゃあどれから試作品を創るかを考えて実際にカタチにしていく。そういうモノづくりをスタートしてます。シーズンが変わるから新作をドバッと創りますじゃなくて、産み出た発想からがスタートなので、着地点は出来上がった時が新作発表って事にして、時期も何も関係なく、一気に10点出来る時もあるかもしれないし、この1ヶ月間は1点だけってこともあるかも知れないけど、タイムリミットを決めてここまでに出せっていうやり方じゃなく、発想ありきでどんどんどんどんカタチにしていく。そんな仕組みを作ろうとしています。今までだったら生産ありきで、この時期までにしっかり作品を創り上げなきゃいけないっていうところばかりに執着してたから。例えば5月までに秋冬デザインを完成させるという様な行程のみだったのが、そう変えることで、常時新しいデザインが上がってくる。だからもう生産ラインはいつも100パーセント稼働にするんじゃなくて、20パーセントはサンプルを作るっていう配分にして。織機だったら常に1台はサンプル機として残しておいていつでも色糸を差し込める状態にしておく体制に変えて。新しいモノを生みだすっていう事と、従来の生産という処を、しっかり同時進行でやって行けるようにしようという事に決めました。」

― tamaki niimeスタッフ全体として、モノづくりの実験が可能な体制を作ったと。

玉木
「ショップはショップでありながら“実験場”なんですよ。例えば創ってみたものをまずは10点店頭に出してみる。それに対してお客様がどんな反応をされるか?どんな印象を持たれるか?っていうところをしっかりと観るのも検証のうちでしょ。駄目って言われるかもしれないしこれ無茶いい!って言われるかもしれないし。最初にアイデアが生まれ出た時から創作して売り場に並べフィードバックを得るまでの一連の流れが実験で。その結果を踏まえて、また改良するのか、さらに面白いものにしていくのか、それともすごく良いから点数増やしてくださいとなるのか。更により良いモノづくりを目指していくという意味では、それが色んなアイテムで動き出すからこそ、まずデザインを出す人・最初に紙にアイデアを書いた人が生みの親になり、そこからスタートして、実際に創ることはその人が出来ない場合もあるしで色んなスタッフの手を渡るけれども、最後までしっかりとバトンをリレーしてカタチにしてゆく。するとその連動したモノづくりの結果を活かして次のアイデアも閃いてくるだろうし。(酒井に)そんな風に“うごめき出し”たらすごく面白いねって言ってたんやな?」

(酒井頷く。)

― 玉木さん自身は総合ディレクターみたいなポジションで関わるんでしょうか?

玉木
「自分も紙に書かなきゃと思ってます。私もスタッフも同列やから。私やから別扱いで特注作れるかといったらそういうわけじゃないんですよ。私も自分の企画は紙に書いてこれ出したい、とデザイン会議に入れますよ。で、ボツにされたら悔しいけどもう一回描く(笑)。それはだから、老若男女・色んなお客様がショップにいらしてくださっているというのもあるし、10代から60代まで色んな年齢層のスタッフが増えてきたので。その世代ごとに求めるものって全部違うでしょ?本当に色んな世代の、自分がお金出して買いたいなと思うものを、各自がしっかりと分析して、それを“声”にするっていうことがすごく大事だなと思ったので。」

酒井
「大枠で、それこそみんなでこういうことがやりたいなっていうものを出し合って、みんなでアルゴリズムを考えて・みんなでプログラミングして・みんなでカタチにして。そうやってカタチにしたものに対してショップでどういう風なフィードバックがあるのかをみんなで検証して、次のクリエーションに活かすっていうサイクルを確立出来れば楽しいよな。今までは僕たち2人でやってた部分も含め、みんなでやる・みんなでやろう、ってなれば楽しいよな。」


玉木と酒井がこれまで二人三脚で構築しtamaki niimeを特徴付けてきた、身につける人を選ばず誰もに愛されるモノづくり。それに加えて、今回スタートしたのは、スタッフそれぞれの能力を引き出し各世代・各顧客ごとの嗜好に向き合ってゆくという、新しいクリエーション。tamaki niime全体で取り組んでゆくこの新たなモノづくりについて、スタッフの玉木睦美(人事など担当)と藤本尚子(ニットなど担当)からも話を聞いてみる。


藤本尚子
「まだスタートしたばかりなのですが、今までは万人に向けて大きな人から小さい人までワンサイズで誰もが着れるようなもの、同じデザインでありながら色んな人が着てもフィットする、というモノづくりをしてきた中で、今年はそこにはとらわれずに、大きい人なら大きい人向けのデザイン、小さい人なら小さい人向けのデザインをやってみようと。それぞれの的に向けると自ずとデザインも沢山出てくるので。」

― スタッフの年齢層が幅広くなった事も、新しいモノづくりの方向性に関係しているようですね。

藤本
「例えば20歳くらいのスタッフは私たちの世代にはない目線を持っているので、そこは層が広がったというか。」

玉木睦美
「自分と同世代の嗜好を想定してアイデアを考えるのも良いですし、全く自分とは違うからこそ、この人はこういうのを着るんじゃないかというような目線があっても良いし、もう縛りなく何にもとらわれずに。異なる目線を交えつつポイント・ポイントに絞った発想で、これまでとは違ったデザイン・作品を創っていこうというところです。」

藤本
「そうですね。そのように、適材適所に柔軟に、且つ、迅速に対応できるところもtamaki niimeならではの強みですね。」

― 新たな実験による作品が出来上がったら即ショップに並べてみて、お客様の反応をダイレクトに得るということも聞いています。

藤本
「だから本当にめまぐるしく臨機応変さが問われる感じになってきますけど、それが出来たら、本当に…“無敵”ですね。」

― Shop&Labならではというか、すぐにお客様からの反応が返ってくるので、またすぐにモノづくりに反映出来ますね。

藤本
「アイデアを出したスタッフも製作したスタッフも、気になってショップを観ますし。」

― みんなで手掛ける作品になってゆくというか。

玉木
「まだ立ち上げたばかりなので、試行錯誤の段階で時間はかかっているのが現状ですけど、慣れてくれば会議で出たアイデアを直ぐに実現する事も可能だと思います。少しずつ成果が上がっていき継続していく仕組みが作れればということで今取り組んでいます。あえて締め切りを設けずに、出来上がったその時々に出すと。場合によってはダメ出しが続きカタチになるまでに何ヵ月もかかるという事もあるかもしれませんが。」

藤本
「シーズン毎の、今だったら秋冬ものとかは従来通り先行してきちんと在庫を揃えていきつつ、新しいアイデアもカタチにし現代進行形のものを毎月出して、両方やってゆくという。なので二刀流というか(笑)。そんな感じです。」

スタッフの持てる力を融合させ Shop&Labが共存する環境を最大限に活かしながら、よりアクティブに進化してゆくモノづくりへ。常に時代の数歩先を見据えた、弛まない実験心を携えて、tamaki niimeは新たな進路へと舵を切っている。

書き人  越川誠司

https://www.niime.jp/

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