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魚の骨が喉に刺さって病院に行った話

数ヶ月前、魚の骨が喉に刺さって病院に駆け込んだ。

そんなバカな。と思うだろう。
たかが魚の骨だろ。
私もそう思う。

しかし、その経験は今でも私のトラウマとなっているのである。

✳︎

その日のお昼は食堂。
いつも魚はあまり選ばない私だが、その日はなんとなく急に健康を気にして魚定食を選んだ。

カレイの煮付けとアジのフライ。
味が十分に染み渡り、身がほろほろに崩れるカレイに舌ずつみを打っている時、気づいた。骨問題に。
カレイの煮付けはまだ目で骨が確認できるので、十分に気をつければ骨が喉に引っかかる可能性は低い。
問題はアジのフライだ。
フライは厄介だ。魚自体が衣に包まれているため、骨の抜きようがない。
正直お手上げだ。衣に包まれたブラックボックスを為すがまま口に運ぶしかない。

昔だったら気をつけてたはずだ。フライなんて選ばなかった。
しかし、残すなんて選択肢はないし、そもそも喉に骨が刺さった記憶なんてあまりないし、大丈夫だろう。
そう自分を納得させ、フライを頬張った。骨が喉に刺さるかどうかは賭けだ。

フライをすべて口に入れたが特に異常はない。
そう思い、水で喉を潤した時、違和感に気づいた。

ゴクリと水を飲みこむと、喉に何かが引っかかるこの感じ。

やばい!骨が刺さった!

恐れていたことがまんまと起こったのである。

まぁ、だけどその内抜けるだろう。
その時は時間が解決することに期待した。

しかし、数時間たっても抜ける気配がない。
むしろ悪化している気がした。唾を飲み込む度に喉が痛むのである。

急いで、ネットで調べてでてきたのは「病院」の2文字。
まさか魚の骨ごときで病院に行くことなど夢にも思わなかったため驚いた。
しかし、調べれば調べるとほど不安に襲われる内容が目に飛び込む。
ご飯は丸呑みするのは余計に患部を傷つけるためよくないだとか、魚の骨で手術する結果となった等々。
完全にびびった私はその日のうちに病院に駆け込んだ。

耳鼻咽喉科がある病院に営業時間間近に滑り込んだ私は受け取った問診票に「魚の骨が喉に刺さりました」と正直に書いた。この段階では病院に行ったのだからささっと骨を抜いてくれるはず!と晴れやかな気持ちでいっぱいだった。

診察に呼ばれ「あぁ、魚の骨ね。何食べたの」と聞かれたときはちょっと恥ずかしくなったが、「カレイの煮付けとアジのフライです」と答えると早速喉を見てもらった。

そこからが大変だった。
喉を直接見ただけでは特に見当たらないと言われ、そんなバカな。と思っていると、急に喉に霧状のおそらく麻酔を吹きかけられた。
そして、長い管(おそらく電子スコープ)を鼻から入れられた。これがめちゃくちゃつらい。胃カメラなど体に管を通す系のものを経験したことのない私にとってこの初体験はしんどかった。
鼻から通った管は喉の奥で止まり、先生が管の先から目を細めて骨を探す。見えないな、どこだとあちこち管を動かすので辛い。

喉を開くために「あー」と言ってくださいと言われ、息を吸っても吐いても辛い中、鼻水と涙を流しつつ、「あー」と震える声で絞り出す。徐々に自分何やってんだろうという思考に陥るなか、やっと見つかった魚の骨。どうやらかなり喉の奥にあったらしい。

管の先はものを挟める構造になっているらしく、「これ取れるかなー」と言いながら先生がまた喉の中を探りはじめるのをじっと待ち続けた。先生が看護師さんに指示を出し、看護師さんが手元のボタンを押すと先が閉じるらしい構造はなかなかにまどろっこしい。「あ、惜しい。もうちょい右だなぁ」頭上から聞こえる呟きにライフゼロの私は早く終われと祈るしかない。

鼻から管を通されて7分程度たった頃、やっと解放された。
すっかり灰と化していたが、嬉しさで気分は晴れやかだった。
しかし聞かされた言葉は「なんか骨が見えなくなった。多分取れたと思う」とのこと。
そんなあほな。多分て!あれだけ耐えて結果見失ったから多分取れただろうとはなんぞや。驚きと釈然としない気持ちを抱え病院を後にした。

骨によって喉が結構ダメージをうけていたらしくそこから3日間は喉に違和感は存在し続けた。そのため、果たして骨が残ってることによる違和感なのか、抜けたけどダメージによる違和感なのか分からず、ずっともやもやとした気持ちのままだった。

結局、骨は抜けていたらしく5日間経つ頃にはすっかり喉はいつも通りになっていた。

しかし、それ以降魚に対しトラウマを抱き続けている。
刺身は骨がないから大丈夫だか、それ以外はダメだ。
いつ骨が喉に刺さるかひやひやする。

そんな中最近見つけたのはセブンイレブンの『さばの塩焼』。

驚くべきことに魚の骨が一本もないのだ。
焼き魚なのに骨を気にすることなくかぶりつける。最高だ。
今はまだこの骨なし魚でリハビリ中だ。

最後までありがとうございます。 また読んでくださるとうれしいです!