見出し画像

「三千円の使いかた」原田ひ香〜一生のテーマ:お金〜

 今、手元に三千円があったら何に使うのか。「一円を笑う者は一円に泣くんだよ」と小さい頃から親に言われていた私にとって、三千円は貴重な財源です。一人暮らし一週間分の食費に相当します。そのため、本当は浮いた三千円を貯金すべきだと思いつつ、直近で「使う」のであれば普段は気軽には買えない果物を買いたいなあ、と思います。最近は、いちごがたくさん並ぶ季節ですね。一パック八百円弱だとして、三千円で毎週一パックを一か月間楽しむことができます!これはとっても嬉しいご褒美です。(こんなことを書きながら、実際に三千円をもらえるわけではないので、余計にいちごへの想いが募りました……)

 この本では、登場人物たちがどのようにお金を手に入れて、何に使うのか。そして、なぜお金が必要なのかが日常的な近しい距離感で描かれています。まさに、三千円をどう使うか、日々の生活の仕方が人生をつくっていくのだなあと実感させられます。若手社会人の美帆に専業主婦の姉・真帆。二人の母である智子に彼女の義母である琴子。多様な世代の方に響く顔ぶれなのではないでしょうか。冒頭から、彼女たちの行動や心境を自分と照らし合わせながら読んでいました。読んでいて良いなあと思ったのは、彼女たちの目的がお金を貯めることそれ自体になっていないことです。ただ漠然とした不安で貯めるのでは目標が見えず、どこまで切り詰めれば良いのかも分からなくなってしまいます。私は一時期スクルージおじさんの様にただ貯金のためだけに貯金をしていたことがあったので、「なんのために、いくら必要なのか」を忘れずに生活していきたいなと思いました。
 お金の使いかたのみならず、ベランダが欲しくなる琴子さんの園芸レッスンや美帆のリアルなブログ運営など、日々を自分で彩る工夫が見えるのも楽しいです。そして、真帆お姉様のしっかり者具合にはひれ伏すしかありません。3人家族で食費一週間五千円とは……!!素晴らしい切り盛りの手腕でございます。そして、お母さんの智子さんが夫に抱くモヤモヤに、未婚なのにとっても共感……。どうか元気に長生きしてほしいです。
 各人が「これで良かったのかな」と振り返る場面がありながら、これからに向けた行動を取っていくのが前向きで安心できます。そして「しっかりした家系だなあ」と思わずにはいられません。お金の使いかた、すなわち生き方は、周りの環境から影響を受けることが多いと思います。私の生まれた家は、どちらかというと美帆の恋人の実家の雰囲気に近いので、初めてそこを訪れた美帆の反応が身に沁みました……。でも、やっぱり大人になったら自分と自分のお金をマネジメントするのは自分自身。彼女たちのように、前を見て歩いていきたいです。
 
 

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?