見出し画像

ランニングの左右方向を考察する(ランニング理論で遊ぼう)

さて、ランニングを座標軸に分けて考えるシリーズのPart 2.  次はY軸方向・左右方向を考えてみましょう。
(上下方向はまだ途中ではありますが、とりあえず先進めます。)
といっても、今回は数式でバリバリ計算するといったものではありません。ですが、最も学びの多い考察になると思います。

左右方向の理想的な動きは

さて、進行方向が前後方向で、上下方向はランニングが連続的なジャンプ運動なので、その考察が必要ですが、左右方向は進む方向でもないので、「理想的な動き」としては、当然「何も動かない事が理想的」になります。
左右に動きがある、という事は、真っ直ぐではなくジグザグに進んでいる事になるので、それは無駄でしかありません。なので、そういうのがなく真っ直ぐ進むのが理想、左右の動きはないようにしましょう、というのが結論になります。
で、「それで終わり」だったら話は簡単なのですが、そう簡単ではないのです。

人間の身体の構造

と見出しで大袈裟な事をかかげていますが、そんな大した話じゃないんです。
ランニングというのは、右足と左足を交互に着地して進むスポーツです。で、この右足、左足というのが、身体の側面に付いている、という問題があるのです。

足は骨盤の側面から下に伸びている

図にあるように、右足も左足も、骨盤の側面から下に伸びています。なので、真っ直ぐに下に下ろすと着地する場所が左右幅ができる事になるんです。
そうすると、右足が着地する時に右足の真上に身体の重心が乗り、左足が着地する時に左足の真上に身体の重心が乗ると、左右の着地のたびに重心が右に左に移動する事になります。その分だけ、前に進むためには不要な左右方向の無駄な動きをしてしまっている、という事なんです。
なので、課題としては、「いかに重心を左右に移動させずに中央に保ち続けるか」という事になります。

重心を左右に移動させないためにはどうすれば良いか

という事で、座標軸の左右方向の考察をする事で、ランニングの新たな課題が見つかりました。それは「左右の足を交互に着地し、左右にズレた位置で着地する条件の下で、いかに重心を左右に移動させずに走るか」です。
実際にランナーの中には、着地した足の真上に重心が移動する事で重心が左右に行ったり来たりさせながら走っている人もいます。そういうランナーは大きなロスをしながら走っているという訳です。それを小さくするにはどうすれば良いでしょうか。

重心を中央に保ち続ける方法

ざっと3つ、考えられます。1つ目は、上の図の中央のように、体幹の力で重心を中央に保ち続けられるようにトレーニングする事です。体幹を鍛えしっかり練習すれば不可能ではありません。2つ目は、上図右側のように、接地位置を身体の中心線の真下近くになるように練習します。これもトレーニング次第です。3つ目は動的安定性を利用する事です。

体幹の力で重心を中央に保ち続ける

片足を上げて片足だけで立つ時に、軸足の上に重心を移動させずに中央に保ち続けるように練習します。そんなに長時間保ち続ける必要ななく、1秒程度保つ事ができれば十分です。体幹を鍛えてやると、保つ事ができるようになります。
あと、腕振りを付けてあげると、重心を中央に保ちやすくなります(体幹の力は必要ですが)。上げる足と同じ側の腕を後ろに引き、軸足と同じ側の腕を前に振り上げて、それに合わせて足を上げると重心が動きにくくなります。腕振りの重要性がここでも分かると思います。

接地位置を身体の中心線の真下近くにする

接地位置が中央の真下に近くなれば、それだけ重心を中央に保ちやすいです。
走っている時に、足を左右に肩幅くらいに開いたまま、幅のある2本の線上を走るのは、それだけ重心が左右に移動しやすい走り方になってしまいます。
そうではなく、中央の1本の線上に、右足も左足も着いて走るのが、理想的なのです。
(本題とはズレますが、左右の足が中央に着地する走り方は、それだけ骨盤の回転が使えた走り方にもなるので良い走り方になります。)
いきなり1本の線上を走るのは難しいかもしれませんが、左右の足が着地する2本の線の間の幅を、少しずつ狭くなるように練習していくのはできると思います。

動的安定性

自転車って、止まっている時やゆっくり走っている時に左右に倒れないようにするのは大変ですが、ある程度以上のスピードを出して進んでいる時は左右に倒れにくくなっています。こういった現象の事を「動的安定性」と言うのですが、同じ現象がランニングでも起こっています。
実は、ある程度以上のスピードで走っている時は、ここまで書いてきた事を特にやっていなくても、重心は中央で保たれたまま前に進み続けています。それは恐らく自転車が左右に倒れないのと同じようなメカニズムが働いているのだろうと予想されます。

じゃあ、体幹で重心を中央に保つトレーニングとか、一本線上に左右の足を着地するトレーニングとか、いったい何をやってるのだ、と思うかもしれないですね。
でも、意味がない訳ではないのです。

というのは、動的安定性に頼ったランニングフォームは非常に不安定で、疲れてきたりちょっとした事で左右の動きが大きくなってしまうからです。なので、動的安定性に頼らずに重心を中央に保つトレーニングをしておく事で、左右の動きがしにくくなり、終盤になってもロスの少ない走りができるようになると思われます。

走りの男女差について

最後はこぼれ話的なものになります。ランニングは男女差が非常に大きいスポーツです。短距離でも男女では1秒くらい差がありますし、長距離でもトップレベルのタイムは男女で大きく異なっています。
その男女差の大きな要因となっているのが、今回指摘した要因だと思われます。
女性の方が骨盤が大きく、そのため接地位置の幅が広くなり、どうしても左右の重心のブレを制御するのが難しくなります。その分の差がどうしても出てしまうのが、現在のトップレベルの男女差なのだと思います。
そういう、骨格レベルでの差異が影響しているのだろう、という話でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?