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宇宙怪獣到来したのって何曜日だっけ

何も事件が起きないのに面白い小説で競い合う風景画杯ってのが、面白そうだったので、応募するために書き出しました。

そしたら、、、

宇宙怪獣の襲来ってのに引っ張られすぎて、

事件しか起こり得ないような物語の序章が完成してしまった。(どうしてこうなった)

こうなったらウル○ラマンでも登場させるか。

何も起きない物語を目指して書き出したのに、何かが起こりそうでしかない物語の序章をどうぞご堪能くださいまし。


序章 始まりの曜日は何曜日か忘れた

2121年8月16日。この日を境に人類の歴史は大きく覆されてしまった。数百万人単位の人々が、その瞬間を目撃していた。彼らの証言は、ニュアンスの違いこそあるものの、本質は一致していた。

満点の星空が煌めく夜。夏の大三角形の一角を成す、わし座α星アルタイルが赤みを帯びた色合いでピカッと瞬いた。その瞬きは、覆面パトカーが違反車を発見し、パトランプを赤々と灯し出した瞬間の時ほどに、印象的で警戒心を抱くものであった。

ほとんどの人たちにとっては、その警戒心は杞憂に終わったが、一部地域では続きがあった。

モンゴルの首都ウランバートル地域の人々だ。

赤々とした瞬きが起こったわずか数十分後に、轟音と共に地面が大きく揺れた。ウランバートルの人々は、巨大地震と雷が同時に起こったのだと慄(おのの)いた。

そしてTV画面越しに映し出された映像をみて更に驚愕した。

ウランバートルを50km程南下した荒原地帯。手付かずの自然や野生動物、ウランバートルの街並みを一望できる山々を有するボグドハーン国立公園よりも更に南下した地帯。そこに、ハリウッド映画で見るような巨大な怪獣が映し出されていたのだ。察しの通り、先程の揺れは地震ではなく、この怪獣が地上に衝突した時の揺れだったのだ。

現地入りしたキャスターが緊迫感を持って、怪獣の特徴を説明している。大きさは東京タワーと同じくらい。およそ300メートル。巨大すぎるがゆえに動きが鈍く見えるが、移動速度はおよそ40km。人間がどれだけ全力で走っても逃げきれない速さだ。形状はゴリラの頭部を切り落とした胴体部分に似ている。筋肉隆々。高層ビルもひと殴りで薙ぎ倒してしまいそうだ。胸のあたりに大きな一つ目が存在している。常に右左、上下、右斜め、左斜めと忙(せわ)しなく黒目を動かしている。何か獲物を探しているのだろうか。その動作は気味悪い。その下に口避け女のような避けて鋭い口があり、隙間からは鮫も噛み殺してしまう程、鋭利な牙が覗いている。

まさに怪獣。宇宙から来た怪獣だから、宇宙怪獣か。

更に絶望感に拍車をかけたのは、この宇宙怪獣が単体では無く、10体同時に現れたことだ。しかも統率が取れており、同時進行で街方面に向かっている。

こんな宇宙怪獣が大挙して人々が暮らす街を襲い始めたなら、未曾有の災禍となることは明らかだ。

極めて絶望的な状況ではあるが、一縷(いちる)の希望もあった。なぜならこの地が、ウランバートルだからだ。太古から強大な軍事大国、ロシアと中華人民共和国の中継地点としての役割も果たしていた都市ウランバートルで起きた事件だったからだ。

ウランバートルの人々が期待した通り、ロシアと中国の両国から放たれた数百機の戦闘機が宇宙怪獣が街に到着する前に、やつらを取り囲んだのだ。司令官の号令と同時に一斉射撃で一網打尽だ。しかし未知の生物であるため、迂闊に攻撃も出来ず、睨み合いが続いた。

司令官が意を決して号令の為に大きく息を吸った。

この時、宇宙怪獣が唐突に奇妙な行動を取り始めた。

左手をアルファベットの「U」のような形にし、胸の前辺りに構えた。そして右手はピースの形を形成し、こちらを凝視してきた。

このピースのジェスチャーを目の当たりにした人々は、もしやこの怪獣たちは、平和を求めて地球に来たのではないかと想像した。安易な妄想だ。そのような楽観論は即座に打ち破られる。

宇宙怪獣は。ピースした右手を、「U」の形で構えていた左手に二度程叩きつけた。(後に日本人だけが、このジェスチャーは寿司を握っている姿では無いのかと訴えたが、宇宙怪獣が寿司など知っているはずがないだろうと、即座に世界中から論破された。)

突如として、何千本もの雷が降り注いだ。雷雲も無いのに。現代化学では証明できない。物理法則に当てはまらない事象。

そう、これは明らかに魔法だ。

筋肉隆々、ゴリラのような見た目。鮫のような鋭い牙を保持しているから、当然こいつらは、物理攻撃を仕掛けてくると誰もが思っていた。

そこにきて意表を突く、魔法攻撃。

この攻撃を受けて、その場のひとりが呟いた。

人は見た目によらないが、宇宙怪獣こそ見た目によらない。-チャン・チー-

宇宙怪獣の見た目で何をしてくるか判断してはいけない。全ての事象を想定して挑め。

この言葉は、これから長きに渡って続く宇宙怪獣との闘いにおける訓示となった。

そう、その日から30年経った2151年においても宇宙怪獣との闘いは続いている。

あの日の10体の宇宙怪獣を決死の想いで粉砕したロシア・中国軍であったが、翌日からも同じ場所に毎日10体の宇宙怪獣が到来したのだ。しかも毎月、到来する数が増えていき、今では一度に100体以上もの宇宙怪獣が襲来している。

はじめの頃はロシア・中国だけで抑えられていたが、徐々にニ国の力だけでは抑えきれなくなり、現在ではヨーロッパやアメリカ、日本など世界中の軍を総動員して、宇宙怪獣と闘っている。


この宇宙怪獣の出現は一般社会も少しずつ変貌させた。裏家業とされていた化学兵器製造や生物兵器製造が社会的に容認され、宇宙怪獣を倒す戦闘機のパイロットは、子どもや若者の憧れになった。ハリウッド映画もロシアや中東を黒幕とするのでは無く、宇宙怪獣を倒すものばかりが乱立した。

そんな宇宙怪獣との闘いが日常となった2151年におけるひとりの日本人が、この物語の真の主役である。

真鍋32歳、男。妻とふたり暮らし。同年代のやつらが宇宙怪獣を倒すためにパイロットを志している中で、真鍋もまた一つの闘いに臨もうとしていた。

続く


こんな感じで、ゴリゴリのモンスター系の物語になりそうな小説がスタートしました。どこに着地させようか。

脳内では日常系も諦めておりません。現在考えているストーリーはこんな感じ。実際に、賞に応募する際にどんな形になっているかお楽しみに。

■宇宙怪獣が基本的に中二日で襲来する世界

■真鍋登場←今ココ

■いつかの月曜日。VS雑草戦。筋肉痛になる真鍋。

■いつの火曜日。VS雑草戦2。時空がおかしい世界に入る真鍋。

■いつもの水曜日。猫と子が欲しい真鍋。買い物カゴがMVP

■いつもは木曜日。ゲームにハマるがすぐに消す。友達も消した真鍋

■いつでも金曜日。日々を演じる真鍋。服。配信ごっこ

■いまでは土曜日。低い柵がこわい。クジラがこわい。自分がこわい真鍋。

■いつから日曜日。旬のものが美味しい。と言いつつ鍋を食べる真鍋。


終わり



ここまで読んでいただきありがとうございます。