突然、思い出すことがある

暑さが戻ってきた数日間だった。酷暑という感じではなく、風が少なくじめっとした蒸し暑さ。夜風が吹けば気持ちよさそうだがまったく吹かないのは、桶屋に儲けさせたくないからだろうか。などと考えてしまうほどに暑い。

こういったときに「暑いと言ってるから暑いんだ」ということを言ってる人がいたことを思いだした。20年くらい前にバイトしてた時の店長だ。

当時のぼくはパスタ屋さんで厨房を担当していた。店は渋谷のセンター街ということもあり、土日は殺人的な混み具合。平日もランチタイムは絶望的に忙しかった。オーダーが途切れることなく、数時間があっという間に過ぎ去っていく、そんなお店だったことをおぼえている。

そこの店長、正確にはシニアマネジャーなんだけれども、空調が効いているにも関わらず、暑さで倒れそうな厨房で働くバイトたちに「暑いと言ってるから暑いんだ、寒いと言ったら寒く感じるぞ」と言っていた。

その言葉の後にいつもぼくたちバイトは「寒い、寒い(店長が)」と笑いながら麺を麺機に落としていたのである。それくらいにはみんな仲が良かった。今はひとりしか連絡先を知らないのが不思議なくらいだ。SNSもなかったししょうがないのかもしれないけれども。

何らかの理由でバイトを辞め、今に至っているけど、そのお店はすでにない。この前、通りかかったときには別のお店(もしかしたら系列なのかもしれない)に変わっていた。

突然そんなことを思い出すなんて、ぼくも年をとったなぁ。


こちらサポートにコメントをつけられるようになっていたのですね。サポートを頂いた暁には歌集なりエッセイを購入しレビューさせて頂きます。