無責任な言葉

死ぬまでにどれくらいの時間が残っているのだろうか。余命宣告をされていなければ、知る由もない。

もしかしたら大きな病気もせず健康体で100歳以上生きるかもしれないし、事故にあって明日死ぬかもしれない。それは誰にもわからないのである。

長く生きることを前提に「老後の備え」をすることもあれば、明日死ぬかもしれないから「好きなこと」をする。どっちが正しいか、と言われるとどっちも正しいし、正しくない。その時々によって都合のよい方を口にしている。人間ってそういうものだ。

でも、おそらくだけれども、バランスが大事なんだろう。

バランス──ひとことでなんでも片付いてしまう魔法の言葉だ。世の中の多くのことは極端でなく、いい塩梅でできている。たいがいなことは「バランスよく」で片付いてしまう。

ずるい言葉でもある。明言せずにバランスが大事と唱えることで、危険を回避する。そんなことだってできる。

バランスをとるのが大事なのは誰しもがわかっている。その配分をどうするのかで四苦八苦しているのだ。

バランスよく、ってちょっと無責任。