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特集:「水害ハザードマップ」と「内水氾濫」のあやうい関係(多摩川旬報220901号)

防災の日です。

1923年9月1日に関東大震災が起きたことから、1960年に防災の日として制定されたそうです。多摩川にとっては、1974年に堤防決壊を引き起こした狛江水害の日として記憶されています。

多摩川治水の歴史は、水害の歴史でもあります。
最近でも2019年に台風19号が上陸し、規模としては狛江水害以上の甚大な被害を流域に引き起こしました。
今回は、水害から身を守るために、極めて重要なハザードマップについて、少し掘り下げてみたいと思います。

ハザードマップとは?

自然災害が発生したときに、危険な場所や避難場所などを記載した地図をハザードマップと呼びます。
地震・水害・津波・土砂災害・噴火など、複数種類のハザードマップが作成されています。ただ、いくつも広げて見比べながら災害に備えるのは結構面倒。
「重ねるハザードマップ」という便利なものがあるので、ご紹介しておきます。
避難経路の確認や、住宅や土地購入時に参照などにも使えます。普通に面白いですし。

水害ハザードマップは誰が作ってるの?

水害ハザードマップの場合、国土交通省が号令をかけ、全国の市区町村自治体で担当課の職員さんが作っています。
「水害ハザードマップ作成の手引き」という自治体職員向けのものがありますので、やる気と好奇心と余暇時間あふれる方は一読してはいかがでしょうか?

その水害ハザードマップ、「内水氾濫」は想定されてる?

水害と一口に言っても、河川の流れが堤防を破壊したり乗り越えたりする「外水氾濫」(洪水)と、本川に流れなくなった支川の水や、河川に流れなくなった下水道が氾濫する「内水氾濫」があります。

この内水氾濫というのが曲者で、一口に「水害ハザードマップ」と言っても、河川の氾濫、つまり外水氾濫(洪水)のみで作成しているものもあれば、内水氾濫まで想定して作成しているものもあり、これは流域自治体によって対応がまちまちのようです。
以下は2020年7月時点の記事ですが、その時点ではまだ2割強が内水氾濫を想定したハザードマップを公表していない、という指摘がありましたので、一応貼っておきます。

あなどれない「内水氾濫」

2019年10月12日の台風19号による水害の際は、さまざまな形の水害が発生しましたが、例えば武蔵小杉のタワーマンションの地下・電気室を水没させたのは、「内水氾濫」でした。
エレベーターを動かす電源がやられた結果、高層階に住む人の日常生活に多大な影響を及ぼしたことは印象的でした。

むずかしい「内水氾濫」

この内水氾濫ですが、人為的に発生させることもできます。
気象庁によれば、内水氾濫は「人為的な水門閉鎖によるものも含みます」とあります。

2019年の台風19号による多摩川水害のなかでも、特に被害が大きかったのは平瀬川との合流点です。
平瀬川と多摩川の合流点においては、河川と雨水が流れ込む地点の水門を閉めなかったことにより、内水氾濫が発生せず、その代わりに平瀬川の水が多摩川に流れ込まずに氾濫しました。
他の自治体においては水門を閉めた結果、支川の大規模な氾濫が起きていないことが指摘されており、人為的な内水氾濫と引き換えに支川の氾濫を抑制する可能性は指摘できるのではないでしょうか。

内水ハザードマップの必要性

いずれにせよ、被害軽減の処置として水門を閉める可能性がある以上、人為的な内水氾濫が発生する可能性はあります。
そういったときに、内水氾濫がどのような影響を及ぼすのかについて詳しく知っておく必要があります。

現在、川崎市のように「内水ハザードマップ」というひとつのハザードマップを作って配布する自治体もあれば、福生市・府中市・多摩市ほか、作成したハザードマップにあらかじめ内水氾濫の想定を含めている自治体もあります。

お住まいの自治体が内水氾濫を想定したマップを作成しているかわからない場合は、役所の防災安全課等に問い合わせてみてはいかがでしょうか?

編集後記

「意外と知らない水害ハザードマップ」をテーマに、防災知識を一段深めたいと思って調べてみました。

昨今の台風や豪雨災害の激甚化などを受け、全国的にハザードマップをより精確なものへとアップデートしている真っ最中のようです。
内水氾濫のハザードマップ作成などは、まさにそんな更新トピックスのひとつでしょう。
当たり前の話ですが、防災というのも、状況に合わせて常にアップグレードしていくものなんだなあと、つくづく感じました。

水害ハザードマップについては、多摩川にもっと特化した情報を集めたいと思っています。取材先も探しておりますので、なにかこの辺りに知見のある方、アドバイスなどでも構いませんので、ご連絡いただけるとありがたいです。

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