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WebMagazineタマガ

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多摩美術大学芸術学科フィールドワーク設計ゼミが発行しているウェブマガジンです。芸術関連のニュース、展覧会評、書評、美術館探訪記、美術家のインタビューなどアートにかかわる様々な記事…
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#現代美術

美術品の経済的価値を決めるものとは何か?〜山口桂(クリスティーズジャパン 代表取締役社長)

 2024年6月28日、多摩美術大学八王子キャンパスで行われた芸術学科の授業「21世紀文化論」に、クリスティーズジャパン社長の山口桂氏が特別講師として登壇した。テーマは「オークションの世界とその舞台裏​​」。はたしてオークション会社は、美術の世界でどう動き、どんな役割をはたしているのか。山口氏は切々と語り始めた。 世界初の美術品オークション会社としてスタート  クリスティーズは1766年にロンドンで創業した世界で初めての美術品オークション会社だ。公開された場で競り合って最

大雨で倒れた樹齢1300年の御神木から生まれた佐藤壮馬のアート作品@資生堂ギャラリー

東京・銀座の資生堂ギャラリーで開催中の第16回 shiseido art egg展で、佐藤壮馬のインスタレーション作品《おもかげのうつろひ》が展示されている。会場でこの作品を初めて見た人は、おそらく何をどう表現しているのかがまったくわからないのではないだろうか。 しかし、感じられる何かがあるはずだ。曲面を成した白い物体が、見えない何かを円柱状に囲んでいる。つまり、その円柱部分には、何かが存在していることをほのめかす。 それは、2020年7月11日に豪雨によって倒れた、岐阜

もっと身近に、お守りのように

INTERVIEW / 菅 風子(ガラス作家)  生活に身近な素材、ガラス。その透明性や美しい質感に魅せられた工芸作家の菅風子さんは、日常や旅先のこと、曖昧な記憶を形にする。菅さんはガラスで目に見えないものへ思いを馳せる。  「透明だけど、輪郭がある。確かにそこにあるんです」   ガラスを中心に扱う作家、菅風子さんはそう話す。一見、触れることもできないような透明な輪郭。「そこにある」という言葉にはっとする。  菅さんは多摩美術大学工芸学科のガラス専攻を卒業後、都内の展示に

奥行きを味わうーペンタブから絵の世界へ

INTERVIEW/NIERIKA(イラストレーター)  「直接的な表現より、示唆的な表現が好きです」こう話すNIERIKAさんの、独特な世界観を探る。  NIERIKAさんは、ホラー要素を含む味わい深い作品を制作している。イラストを描き始めたきっかけは、小学5年生のころにペンタブレットを親に買ってもらったことだった。インターネットでさまざまな作品や講座を見て勉強し、絵の世界に引き込まれていった。その情熱は成長するにつれて大きくなり、もっと美術について学びたいという思いか

カードゲーム『PLAY!たぐコレ』で 「現代アート」と遊んでみた

 「アート」の表現や解釈に正解はない。表現する側も、鑑賞して受け取る側も、さまざまな感情や感想を持つものだ。そこには当たりも外れもなく、自由な解釈が出来るのが面白いところである。だからこそ、作品を鑑賞して「よくわからない」と思ってしまうのはもったいない。そこで、今回は現代アートをもっと直観的に、感覚的に、遊ぶように鑑賞をすることができる『PLAY!たぐコレ』というカードゲームを紹介したい。まずは、実際に遊んでみることにした。  木々の葉の色が深まっていく11月中旬。多摩美術