6月23日公演分立川文庫「大阪城冬之陣」のあらすじと見どころ


前回までのあらすじ

 圧倒的な力を持つ徳川家。その徳川家に今にも本拠・大阪城に攻め込まれそうな豊臣家
この豊臣家にも豪傑は幾人かおり、兵士もいるが、有能な軍師がいない。このままでは徳川家に負けてしまう。
 そこで真田幸村・後藤又兵衛・長曾我部盛親という当時名将と誉高い、しかしながら浪人をしているという3人をそれぞれ大阪城に招くことになる。真田幸村・後藤又兵衛は無事大阪に入城。
る長曾我部盛親は京都東山の双林寺という寺に隠居をしていた。

 盛親は豊臣家からの誘いをすぐに承諾。昔の家来を呼び集める。すると70人ほどが集まるが、この70人もいわば失業者。戦いの為の道具や鎧兜、そういったものを一切持っていない。また盛親自身もそういったものは持っていない。
これから大阪城に入って軍師として大軍を指揮するのに、こんなにみすぼらしい状態ではとても入城できない。
そこで盛親、70人の配下と自分の鎧兜を入手する計略を立てる。

 当時京都二条城に大軍でもって駐屯、来たるべく豊臣家との戦に備えている徳川家の武将・藤堂和泉守に盛親は接触を図る。
天下に名を知られた盛親なのでこの接触は上手くいく。
盛親はここで和泉守に「ぜひ配下に加えてください。もう浪人の身はつらい」と切々と訴える。さらに盛親「私の配下も70名くらいなら呼べます」と切り出す。
和泉守からしたら非常に嬉しい。絶対に合戦で活躍をするであろう盛親が自分の所に配下を連れてやってきてくれる。これはラッキー、戦力アップ。とこの申し出を受ける。

ここで盛親「ついては、70名の家来たちも長らく合戦の訓練調練をしておりませんから、調練をしたい。そしてその調練をぜひご覧いただきたい。しかし配下の者ども、鎧兜を持っていないので、ぜひとも藤堂家の鎧兜を貸していただきたい
と頼む。
和泉守は盛親が配下になってくれるのが嬉しいからこれを一も二もなく承諾。
楽しみに長曾我部盛親の調練を見物できるのを待っている。

 長曾我部盛親はそんな和泉守を見て満足そうに双林寺に戻っていく。


今回の見どころ

長曾我部盛親の計略が見どころ。玉山パートで仕掛けて、師匠パートで計略が成就するのでかなりすっきりまとまった回になりそうな予感。
だます側とだまされる側の心の揺れ動きにも注目。

個人的には藤堂和泉守の上機嫌さ、調子に乗ってしまう感そこから奈落の底に突き落とされる感はとても他人だとは思えない。

名作映画『ピラニア3D』では「濡れTシャツコンテスト」(女性がTシャツを着ていて、それにホースなどで水をかけると、おっぱいの形があらわになったりして、嬉しい)なるイベントなどではしゃぎまわっている大学生たちがその後ピラニアに食われることになる。
こちらとしては『ピラニア3Ⅾ』という映画だな、と思って観ているので、「濡れTシャツコンテスト」が行われている間も「この人たちは絶対にピラニアに襲われるのだ」という気持ちで見ているからなかなかスリリング
そして実際に「濡れTシャツコンテスト」に興じる彼らがピラニアにガンガン食われていく場面は爽快感すらある。
観ている映画が『濡れTシャツコンテスト物語』(監督・山田洋次)ならば急にピラニアが出てこられたってびっくりして不愉快だろう。山田洋次の作風ちょっと変わったな。ピラニアは辛いよ。と思うことだろう。
でもそうじゃない。僕が見始めたのは『ピラニア3Ⅾ』なのだ。

話がそれた。
今回も先に盛親の計略がある、ということは物語上明示されているので『ピラニア3』の「濡れTシャツコンテスト」ような効果が「はしゃぎうかれ藤堂和泉守」にはあると言っていいと思う。そういう“当然の帰結に至るスリリング”が今回の魅力だと思います。

玉山の今回の目当てと雑感

 今回は藤堂和泉守のうれしさ、だろう。「濡れTシャツコンテスト」くらい嬉しがりたい。
でも確実に手柄を立ててくれる武将が突然自分の家来になってくれるんだからその嬉しさはひとしおだと思う。特に藤堂和泉守はすごく出世欲の強い人だ。その嬉しさを全身で表現したい。長曾我部盛親も飄々と計略に入るけれど、途中でばれれば絶対に殺される立場だ。
命がけの飄々と言える。ただの飄々にならないように気を付けて。
 前回今回の一連のパートで「長曾我部盛親の入城」という一席にできるくらいの面白さだと思う。しっかりお稽古して、年季明けしたら一席ものに仕上げたい。

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