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6月29日 バカンス②~座間味の海~


 朝起きると同部屋の友人、玉木青が眠れなかったという。そしてその原因は僕のいびきであるという。僕のいびきはうるさいと評判である。四海を震わせる、という。起きている時よりもうるさい。眠りながら発声練習をしている。起きていると喉が枯れている。そんな感じのいびきである。それが原因で玉木青は眠れないという。非常に申し訳ないな、と思うがどうにもこうにも他人事、つまり自分の意識下でどうにかできることではない感じがして「結構繊細で」と主張する玉木青に「僕も繊細よ」などと訳の分からない反論をしたりする。
玉木青は相当呆れたようで、同じ民宿で部屋が空いていないか、空いていればそっちに映らせてもらえないか、という交渉を派手な髪の女将さんにし始める始末。不穏な朝となった。
ちなみに横山清正は眠ったという。彼は強いのだ。「道路工事を隣でされても俺は眠れる」とわけのわからない豪語をしていた。傭兵にでもなったら随分稼げるんじゃないか。

晴れていた

 島一番の巨大商店、105ストアで朝飯を購入する。朝からやっているレストランとかはないのだ。僕はゴーヤーチャンプルー弁当を購入する。玉木青は寝不足がたたったかスパムおにぎり1個。横山清正は弁当を二つ。おにぎりも買っていたか。大変な食欲である。
「朝昼兼用だから」などと言って己の異常性を隠すムーブをしていたが、やはりその異常性は隠せていなかった。飯を食っているうちに一同元気が出てきた。

 やはり座間味は海である。海に出かけて行こうじゃないか、という話になると皆のテンションが上がっていく。シュノーケルやフィン、パラソルの貸し出しを商っている比嘉さんの送迎サービスで海まで出かけて行く。
送迎サービスで宿まで迎えに来てもらった時に、比嘉さんと宿の主人村田さんに「白いね!変なことになるよ!!東京の紫外線25倍よ!!痛くなる、やけどだからね!全身!!」などと脅しつけられる。恐ろしい。

 古座間味ビーチと言うビーチに着く。比嘉さんがライフジャケットなどを着させてくれる。「俺は身長は?「俺は足のサイズは?」と比嘉さんが聞いてくる。二人称に「俺」を使用する人は初めて会った。いろいろな人がいるものである。妻とやってきたら女性に対する二人称に何を使うかを聴くことができるから妻とも来たいな、と思う。

 美しいビーチである。水中眼鏡をつけて海に潜ると魚がいる。結構大きな魚が浜の傍までやってきている。それをひたすら眺め続ける。南海のアジ類、グルクン、黄色い魚、青い小さな魚などが堂々遊泳。サンゴの山も海中にいくつも発見できる。ものすごい透明度で、ずいぶん遠くのサンゴの山に盤踞をするイソギンチャクにクマノミが住んでいるのが見えたりする。水族館が好きなのは別の世界を覗ける、という魅力があるからだけれど、別の世界に飛びこむというのがこの日の体験であった。

ビーチ。AIが書いたみたい

 海の中も美しいのだが、なんといっても外から見た海も美しい。水がキレイ、サンゴの砂の白さ。あまりにも強い日差し。すべてが合わさって「沖縄!」という感じのビーチを形成、非常にきれいだった。浜のほうに目を転じるとすぐに北野武の初期監督作品が始まりそうな雰囲気の林と砂のコントラスト。

逃げてきた大きな人と手引きした細い人
あまりにも遊び慣れていない
いくらでも泳げる人

 得難い経験をして比嘉さんに迎えに来てもらって宿へ戻っていく。日焼けには極力気を付けた。腕や足は難を逃れている感じがしたが、顔面がどうにもヒリヒリとしてたまらない。
海での遊泳にも疲れていて、正直硬軟取り揃えてヘトヘトだったが、比嘉さんは「ウミガメの居る海に行く?悔いのないように」などと元気である。我々も比嘉さんの勢いに押されそうになるが、そこは一旦宿に帰る方向に持って行き、帰宿。その後ウミガメの居る海に行こうか?ということも話し合われたが、宿に帰ってみると僕は本当に疲れ果てていたので、今日はこのまま休む方向へと世論を猛誘導する僕。成功。後は酒盛りとなっていく。

 また巨大商店105ストアに出向き、ビールや泡盛、それから島の総菜店で作られた天ぷら類を購入して宿に戻り、酒を飲む。大変に素晴らしい酒盛り。甘い芋のてんぷら、と題されたそれが大変美味しかった。ねっとりとした甘みの強い芋。前日に引き続きこの島の芋料理に夢中である。芋が好きなだけかもしれないが。

 それから昼寝だかなんだかわからないダラダラをした後、島の散策へ出かける。港の方に刺身を供する商店がある、というので行ってみるが「水揚げがあるときだけ」という。この日は無かった。この座間味島はカツオ漁が有名であるから何とか帰るまでに食べたいが、季節などもあるのだろう、難しいかもしれぬ。

ネコバスもいる。シーサーの役割?
沖縄の小径でなぜそんなに肩を落としているのか
港で魚影を探す


散策の途中何度も猫に出会う。横山清正は猫を追いかけまわしたり撫でまわしたりしていたが、道行く散歩犬にはあまり好かれていないようだった。

子猫、ダラダラを優先させて逃げない
白黒猫のつがい


途中、オープンテラスのバーにでも入ろうか、という話になったりもしたが、なんだかラッパーふうの店員がDJ卓に陣取り幅を利かせている様子、などから2眼鏡1デブの我々は怖気づいて入ることができる。気づけば結局巨大商店105ストアで追加の泡盛を買い、謎の缶詰を買うなど、冒険心の無い時間を過ごしたのだった。

18時半より洋風のカジキ料理を出す店へと繰り出す。この店も前日に引き続き玉木青予約済みである。これが非常に美味なる店であった。カジキのホキ?という料理が大変美味しい。前日の店よりも僕は好きであったし、また価格も決して高すぎなかった。良い店である。

 ご飯を食べ終わって「夕日が観られるのでは」という話になって歩いて夕日が見えそうなところまで歩いていく。気にはやる横山清正が先先と歩いていく。玉木青とそれをおいかけていく。結局「あの角を回れば夕日が」という角まで行ったのだが、あまり夕日は見えなかった。もっと向こうの岬の稜線の向こう側に夕日は落ちた後だった。水平線へ沈んだわけではない様子でまだあたりをほの明るく照らしている。
そんな海面を観ながらしばらくぼうっとしてから宿へと戻る。途中マリリンの像なる銅像がある。『マリリンに会いたい』という映画になった犬の像だそうだ。詳しいことはわからないが、とにかくこのマリリンというのは待っていたらしい。座間味のハチ、である。

 宿に帰ってまた酒盛りをして、また眠っていく。日焼けがじくじくと痛んでくる。首筋などが痛む。果たして明日は泳げるのだろうか、という不安を抱えながら、玉木青が先に眠ってくれるようにひたすら黙って日記を書き、重たくなる瞼に頑強なる抵抗をつづけながら玉木青が寝るのを待つが、確認することもできず、気づけば眠っていたのだった。


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