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記憶に残る漫画~海のオーロラ

「海のオーロラ」という漫画がある。里中満智子先生の作品だが、わたしが10歳くらいの時に読んで、その壮大な愛とロマンの世界に心をわしづかみにされた。

古代エジプト、ハトシェプスト政権下、テーベの都(今のルクソール)から物語ははじまる。母を亡くし父と2人暮らしのルツ(主人公)は手内職のショールを売っては塩や豆などに変えるなどして暮らしをつつましく立てている。母が亡くなってから酒びたりになった父を助けながら。

そんなルツが市場に買い物に出たある日、ふとしたことで横道に迷い込んでしまった。そこは学校のようだった。好奇心にかられ外から覗いていると、教師に見咎められる。
それを「僕の友人だから外で見学させてあげて欲しい」と庇ってくれたのがレイだった。授業が終わったあと、文字が読めないので、授業を見たかったと話すルツに1本のペンをあげて、いくつかの文字(象形文字)を教えてあげるレイ。「良かったら、明日も来たら教えてあげるよ」と言われて別れる。ところが、父の待つ我が家に帰ると思いもかけぬ運命が待っていた。
父の酒代の借金のかたに売られてゆくことになってしまったのだ。絶望のどん底で、奴隷市場に立つルツ。ひとりの男に買われるが、連れて行かれた先は、思いもよらぬことに高位の神官の邸宅であった。神官の一人娘ライラの侍女として連れてこられたのだ。ライラは聡明で美しく、侍女の仕事には厳しいが公平で自身も努力家な人。本質的に優しい女主人であり、その後ルツとは親友と言えるほどの強い絆で結ばれた関係になってゆく。

そして、図らずも同じ男性を好きになってしまう。それは、ルツに文字を教えてあげると言ってくれたレイだった。レイは隣国の高官の子息で留学生だったが、実は秘密を抱えていた。

ところで、ルツはある不思議な夢を繰り返し見ることがあった。
それは火山の噴火と大地震の中、何もかもが崩れて海の中に沈むところ。その時、空にはオーロラがゆらゆらと輝いている。そして、最愛のひとと手を取り合って逃げるのだが、逆巻く海の渦に引き裂かれて沈んでゆく。そのひとは、耳の後ろにハート型のあざのあるひと。生まれ変わって逢おう!と誓いの言葉を叫びあい、そのまま海に沈んでしまう。いつもそこで夢は終わってしまう。

ある時助けてあげた貧しい占星術師のおばあさんに相談すると、そのひとがルツの運命の人だという。

延々書いていくと終わらないのだが、この後ハトシェプスト政権転覆、王位奪還の陰謀、隣国への侵略戦争など大混乱に巻き込まれながら、ルツ、レイ、ライラ様、トトメス3世、それぞれ運命に翻弄されながらも懸命に生きる。

これ何が大河ドラマって、テーマが〝愛“ いろんな形の愛。愛するってどういうこと?ってテーマとして延々問い続けられている。それと輪廻転生。魂の永遠性。
古代エジプト編からはじまって、古代日本の邪馬台国編、ナチス時代のドイツ編。そして未来編で完了する。エジプト時代の前世としてムー大陸が登場するので、全部合わせたら、数百万年?になるのか?思いが遂げられない二人が生まれ変わって、何度も何度も巡り会って愛を貫こうという物語である。

小4くらいの頃に、こんな激しい大河ロマンを読んだので、衝撃度がすごかったし、わたしの人格形成に相当影響してると思う。多くの人が同様に、10代前半で夢中になったものの影響は一生受けるんじゃないだろうか。わたしは、このおかげで全く生まれ変わりに疑問を持たなくなったし、エジプト好きになり、働くようになったらお金をためて速攻でエジプトに行った(笑)朝焼けの中の大音量で響き渡るコーランの祈りは、完全に異世界にトリップできたいい思い出だ。

普通に学園ラブコメもあったはずなのに、古代のロマンスに夢中だった。
少女漫画のエジプトものと言えば、王家の紋章も有名だが、わたしはこっち派。エジプト編の衣装も好きだった。何より、苦難、時に嫉妬にさいなまれながらも誠実に真摯に生きようとするルツと、愛ゆえにエゴに負け自己嫌悪に苦しみながらも最後に捨て身でプライドよりも真実の愛に身をささげるライラ様は、子供ながらも、いや子供だからこそダイレクトに刺さって、心打ち震えた。

いま、考えるとそうとうおませな内容だったが、子供なりに愛って何?って思ってた。昔の少女漫画は大人向けだったものが多い。
もう色も褪せてボロボロだが、捨てないで置いている。

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